WTO問題の対策機関開設へ

経済発展省貿易交渉部のマクシム・メドヴェトコフ部長=タス通信撮影

経済発展省貿易交渉部のマクシム・メドヴェトコフ部長=タス通信撮影

世界貿易機関(WTO)の枠組みの中で、国の利益をより効果的に守れるような法的基盤が、ロシアで整えられる。貿易係争について助言を行う専門センターが国内に2ヶ所設立され、「サウス・ストリーム」や乳製品をめぐる問題ですぐにでも始動する可能性がある。

 ロシアと欧州連合(EU)には、乳製品という新たな係争の芽がある。アルカディ・ドヴォルコヴィッチ副首相は6日、EU諸国産の乳製品に対する反ダンピング調査を行うべきだとの考えを示した。EU諸国では乳業者に多額の補助金が支給されており、それがロシアの乳製品市場にすでに負の影響を及ぼしている。全国乳業者組合によると、EU諸国の乳製品の原価は国の補助金によって、20~30%も安くなっているという。ロシア市場におけるこのような輸入乳製品の価格は原価より5~10%安いため、販売業者が扱う乳製品の40%が輸入品になっている。

 

正しく保護

 ロシアはWTOの貿易係争のための法的基盤づくりに積極的に取り組んできた。これまで提訴の準備を行ったり、自国の生産者の利益を保護したりする専門機関はなかったが、2ヶ所開設されることになった。

 1ヶ所目は経済開発貿易省付属WTO問題専門センターで、ロシア人専門家だけでなく、外国人専門家も活動を行う。2ヶ所目は産業貿易省付属情報・分析センター。両センターの活動分野は明確にわけられている。経済開発貿易省のセンターが国際的な貿易係争でロシアの利益を保護する一方で、産業貿易省のセンターは「ロシアの輸出者支援」に取り組む。

 国立経済高等学院・貿易政策講座のアレクセイ・ポルタンスキー教授はこう説明する。「WTO加盟国としての活動に専門家の随行は不可欠。大切なのはWTO貿易政策・係争問題について、連邦機関に正しい助言を行うこと」

 

取り組む問題

 ロシアに対しては現在、製品販売の障害となる100項目以上の規制措置があり、うち40項目は反ダンピング措置。より多くの措置を適用しているのが、ヨーロッパ、アメリカ、インド。有効な反ダンピング措置の半数以上が、ロシア製の鉄鋼材とその製品の輸入に対するもので、次に多いのが無機質肥料。具体的に例をあげると、管材、硝酸アンモニウム、鋼線ロープなど。

 新しいセンターに諮問する問題としては、ロシアからEUへのガス輸出を困難にするEUの第3次エネルギー包括案と、同じくEUの「エネルギー調整」の2つの不一致がある。

エネルギー調整

 「エネルギー調整」とは、製品価格がロシアのエネルギー価格ではなく、ヨーロッパの価格で計算されるもの。EUはロシアの国内市場のガス、石油、電気の価格がヨーロッパよりも安いため、ロシアの製造会社が低価格で製品を販売している、すなわちダンピングをしていると考えている。ロシアはこれに同意していない。専門家によると、ロシアの現在のエネルギー価格は1000立法メートルあたり100ドル(約1万円)水準で、アメリカと同じだという。だが、EUはアメリカ製品に対して、このような保護措置は適用していない。

 「エネルギー調整」については、ロシアが昨年末にWTOに提訴した。専門家は勝訴の可能性が高いと考えている。

 「エネルギー調整」はロシアの鉄鋼製品と化学製品に対して行われており、これによって硝酸アンモニウムの関税が22%まであげられた。ロシア化学工業連合会の情報によると、ロシアの化学会社の他の製品についても、今年中に関税を上げることを、EUがすでに発表しているという。ロシア製管材に対する関税は24~28.7%。「この関税適用のメカニズムはWTOの規定に違反していると考える」と、経済発展省貿易交渉部のマクシム・メドヴェトコフ部長は話している。

 EU市場の貿易障壁によるロシア企業の損失額は、概算で5億ドル(約500億円)になる。

 第3次エネルギー包括案については、ロシアが今年第1四半期中には提訴することを計画している。EUと協議する間に、この問題の技術的調整の対策も講じられる。第3次エネルギー包括案では、エネルギー企業の業種別(採掘、輸送、販売)垂直統合を解体することが定められている。この要件はガスプロムが「サウス・ストリーム」プロジェクトを実現する際の障害となる。ロシアはこのプロジェクトの当事国と政府間協定を締結した際、その書類がEUのすべての規定に適合していたと主張している。