スノーデン便乗ビジネスあれこれ

ロイター通信撮影

ロイター通信撮影

ロシアがエドワード・スノーデン氏に亡命を許可してから5ヶ月が経つ今、この情報化時代の反体制活動家の象徴的なイメージは、各種の美術、メディアや商品という形で展開され、大きな成功を収めている。ロシアNOWが、ロシアやその他の地域で出回っているスノーデン関連商品をご紹介する。

スノーデン関連商品が登場

 エドワード・スノーデンという名前が世界を駆けめぐるようになってから、わずか1年足らず。今では、NSA(アメリカ国家安全保障局)の機密を漏洩した、その元契約職員エドワード・スノーデン氏の話題に便乗して、我先に彼についての本を出版したり、映画を製作したり、関連商品を販売したりと、人々は大わらわだ。

 これらの商品の成功に輪をかけるスノーデン氏の名声は、彼がロシアから1年間の滞在許可証を発給されると、一層高まった。彼が漏洩した文書が公表されるや、米国当局はスノーデン氏のパスポートを無効にし、その後、ロシア政府は、彼に一時的亡命滞在許可を与えた。彼の影響は世界中におよぶが、彼に関する話題はロシアのものでもある。そして、彼のイメージを利用した商品やプロジェクトが、間もなくロシアと西側諸国の両方で登場するようになった。

 

名前の魔術的効果

『スノーデンが明かさなかったこと』、
アレクセイ・チェルノコフ著=Press Photo

 いくら下らなく思われようが、スノーデン氏の名前は、彼に関係のない商品に対してさえも販促効果がある。アレクセイ・チェルノコフ著の『スノーデンが明かさなかったこと』は、モスクワを拠点とするエスキモー社によって出版された。題名にスノーデン氏の名前が使用され、本のカバーには同氏の肖像が印刷されているにもかかわらず、この本は、NSA元契約職員とは全く関連 性がなく、単に注目度を高めるために彼の名を利用したにすぎなかった。

 この本の出版社による宣伝文句は、「スノーデンが明かしたことは、米国諜報機関による不法活動の氷山の一角にすぎない」と謳っている。「スノーデンが明かさなかったこととは、シークレットサービスによる不正行為のことであり、これらが現在、ロシアだけでなく、各地で政治や経済を支配するようになっている」というわけだ。

 

スノーデン土産 

 ロシアではスノーデン氏をネタにした土産品も購入できるが、需要はあまりなさそうだ。

 オンラインショップの「モモ・シャツ」は、バラク・オバマ米大統領の有名な赤と青のポスターに似せてデザインしたTシャツを、999ルーブル(約3,200円)で販売している。シャツには、スノーデン氏の肖像と、ロシア語の「モロデーツ(偉い!)」という単語がラテン文字で印刷されている。

 この店のスポークスマンはロシアNOWに対し、Tシャツの個別の売上高は公表していないと語った。同様に、スノーデン柄のTシャツを販売するアイデアは、おそらく同社の提携相手である数多くのデザイナーの一人から出てきたため、どういう経緯でそれが販売されることになったかは説明できないと回答した。

 

Tシャツにマグカップ 

 ヴィスポ社は、白黒のスノーデン氏の肖像がプリントされたコーヒーマグを販売している。しかし、190ルーブル(約610円)もするこのマグカップは、ヒット商品ではなさそうだ。

 社員のアレクサンドルさんによると、ちょうど半年少し前にスノーデンの名前が報道されるようになった頃、誰かが同氏の肖像がプリントされたオーダーメイドのマグカップを何個か注文したのだという。同社は、これは何らかの徴候であるに違いないと読んで、スノーデンのマグカップを販売カタログに加えた。

写真提供:Press Photo

 「でも、これまでに販売したスノーデン柄のマグカップは、せいぜい10~15個にとどまるでしょう」とアレクサンドルさんは語った。

 

中国でブランド名に 

 一方の西側諸国では、実際にスノーデン関連のプロジェクトがより大きなスケールで展開している。

 今年8月、北京に本社をおく電気自動車用技術会社のホンユアンランシャン社は、「スノーデン」の名称をブランドとして登録する計画であることを明かした。これは、新規の「機密対象技術」のためのブランドで、同社によれば、これはスノーデンがもたらした曝露と同様に革新的なものであるという。

 

映画スターとしてのエドワード・スノーデン 

 1ヶ月後、スノーデンはアメリカのアニメシリーズ『サウス・パーク』にパロディ役として初登場した。エリック・カートマンという名前のキャラクターは、明らかにスノーデンをモデルにしたものだ。ちなみに、「レッツゴー・レット・ガヴ」というこのエピソードは、過去2年間で最高となる視聴率をこのシリーズにもたらした。

 一方で、来年9月には、この前NSA契約社員のストーリーを扱った『極秘扱:エドワード・スノーデン・ストーリー』というドラマ化されたスリラーの公開が予定されている。役者のケヴィン・ゼガーズをスノーデン役の主演に採用したカナダ人製作チームは、この自主映画の資金調達にクラウドファンディングを選んだ。

 「スタジオでの監督による干渉を避けるために、クラウドファンディングを選びました」とプロデューサーのトラヴィス・ドーリング氏は語った。「映画スタ ジオの存在目的は利益を出すことであり、彼らは「ビジネス」なのです。したがって、他の営利事業体がそうであるように、彼らには独自の思惑があるのです。現時点で、私たちは必要予算の83%を確保しています」

 この映画はオンラインで無料ダウンロードとしてリリースすることを予定しているため、制作者たちは金銭的な利益は見込んでいないようだ。

 「この映画の主な目的は、一般市民に大衆監視プログラムの危険性を喚起することにあります」とドーリング氏は語った。「ニュースを読む人の数は限られていますが、ほとんどの人々は娯楽として映画を観るでしょう。これを無料で配布することで、世界中でより多くの人々に観てもらえます。

 

新たな暴露本 

 出版業界にとっても、スノーデン現象を見過ごすわけにはいかなかった。現在、スノーデンに関する本が3冊執筆中であると言われている。

 出版社のメトロポリタン・ブックスは、スノーデンが機密資料をリークした元の相手である英国日刊紙「ガーディアン」記者のグレン・グリーンワルドによる本 の出版を発表した。この出版社の発表は、「個人情報を扱う企業の間に存在する、驚くべき提携関係を明らかにする新たな曝露」を約束するものだ。

 20世紀フォックス、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントやケーブルTV会社のHBOは、このストーリーを映画化する権利をめぐってグリーンワルド氏に接触したが、まだ合意には至っていないとみられる。同時に、元ワシントン・ポスト紙記者のバートン・ゲルマン氏ともう一人のガーディアン紙記者のルーク・ハーディング氏も、スノーデン氏に関する本を書いているという。

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