=写真提供:suneyesenergy.com/
取り付け簡単なビニール製気球
プロジェクトの発案者であるピョートル・エフロフ氏が、太陽光エネルギーに興味を持ったのは学生時代。僻地に電力を供給したり、旅行者に環境に優しい発 電手段を提供したりしたいと思っていた。目指したのは、スマートフォンの充電だけでなく、大規模発電も可能になるような技術開発。
エフロフ氏は仲間とともに新しい装置をつくり始め、昨夏に最初の試作品を仕上げた。その後改善を重ねながら5種類製作し、ようやくサンアイズを完成させ た。現在は直径1.3メートル、重量約5キログラムの、ポリ塩化ビニル製の気球。内部には一般的な太陽電池よりも効率の高い、光電変換装置が装備されてい る。場所や時間を問わずに太陽の位置を定めることのできる、特別なソフトウェアも開発した。
装置の使い方は簡単。内蔵されたチューブに空気を送ってふくらませ、特別な伸張具を使って日のあたる場所(ピクニック用の広い場所や別荘の屋根など)に固定し、充電の必要な機器をUSB経由でつなげるだけ。
電力は200ワット、お値段は約9万円
エフロフ氏はエネルギー効率を30%、電力を200ワットと計算している。1台の気球から、同時に20台のタブレット型端末を充電したり、1日冷蔵庫を 動かしたりするのに十分であるという。これ以上の電力が必要な場合には、複数のサンアイズをつなげて、ミニ発電所をつくることも可能。
サンアイズ1台の小売価格は3万ルーブル(約9万円)弱。可動性があって使い方が簡単な装置の方が、現在人気のある2万~4万ルーブル(約6~12万 円)のフレキシブル太陽電池パネルよりも多く購入されると、エフロフ氏は考える。「普通の非晶質シリコン製や、フレキシブル、耐衝撃性の太陽光電池のエネ ルギー効率は5%以下。我々の気球と同じぐらいの面積を占める太陽光パネルは、2分の1か3分の1のエネルギーしか供給できない」。さらに耐風性があり、 コストのかかる輸送や組み立てを必要としない。
現在はウェブサイトで予約を受け付けており、来夏に20~100台を販売する予定(最初の購入者には20%割り引きがある)。エフロフ氏はロシア南部では3年半で回収可能と予測。気球の寿命は20年。この時までに正味現在価値が250%まで上昇する。
シンガポールのベンチャー基金が名乗り
サンアイズのチームは、プロジェクトの費用に自己資金を投入している。総投資額は約50万ルーブル(約150万円)。昨夏にモスクワ大学のビジネス・イ ンキュベーター(創業孵化器)の居住者となり、今夏は中小企業協力基金の大会「スタルト」で優勝した。優勝したことで、来年夏の終わりまでに100万ルー ブル(約300万円)を受け取る。
だが、プロジェクトには追加的な資金が必要だ。来夏は民間のベンチャー基金から、300~500万ルーブル(約900~1500万円)を募ることを計画している。エフロフ氏によると、すでにシンガポールのベンチャー基金が名乗りをあげているという。
装置の試作品の最終仕上げだけでなく、販売のために投資を必要としている。アウトドアや旅行関連のチェーン店、別荘関連用品の小売業者などと商談するこ とを計画している。また、ウェブサイトでも販売を行う。この発電機は、野外の音楽フェスティバルやその他の祭典で使用される電気を一部確保できるため、企 業の顧客も探す予定だ。10~20万人の観客が集まるイベントには、50~100台の気球発電機が必要になる。
市場での成否は
「ロシア・ベンチャー企業」基金のミハイル・ハルジン氏はこう話す。「サンアイズは使い方が簡単だから、B2C(企業対消費者取引)市場で人気が出る可能 性は高い。だが企業への販売の機会も逃してはいけない。フェスティバルの企画や運営だけでなく、農産業や道路サービスでも役に立つ可能性がある」
ロシア太陽光エネルギー企業連合のアントン・ウサチョフ理事はこう話す。「再生可能エネルギーの一つである太陽光エネルギーは、ロシアで大きく発展する 可能性がある。サンアイズは家事や僻地のエネルギー供給にも使えるし、正しい市場を目指していると思う。ただし、ここ10年で太陽光エネルギーの生産価格 は8分の1まで下がった。つまり、気球発電機の原価を最大限に抑えることのできる手段を見つけ、発電力を維持できた場合にしか、市場のシェアを獲得できな いということになる」
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。