目が不自由な人のためのナビ

写真提供:Oriense

写真提供:Oriense

スタートアップ「オリエンス(Oriense)」の創設者が、目の不自由な人のための「ナビゲーター」を開発した。これは音声ガイドで建物や通りを認識できるものだ。超音波杖やその他のロケータ(位置指示器)の代わりにもなる。開発者はこの革新的商品を、国内市場だけでなく、西ヨーロッパやアメリカにも投入したいと考えている。

 オリエンスの創業者であるヴィタリー・キタエフ氏はこう説明する。「人間の胸部に装置を取り付ける。この装置は周囲の状況を”見て”、障害物などについて音声で知らせる」。 オリエンスのプラットフォームは、人間の動きを読むマイクロソフト社のゲーム・アクセサリー「キネクト(Kinect)」。道路上 の障害物の外形を認識する。

 

障害物を認識し音声で知らせる 

 オリエンスのチームは昨年5月、革新技術事業(BIT)コンテストにこの装置を出品し、2位に入賞した。この大会では、スタートアップ・アクセラレータ(創業加速器)「アイディール・マシン(iDeal Machine)」の関係者と知り合うこともできた。

 オリエンスはその後装置を完成させ、アメリカ系ベンチャー基金「RSVベンチャー・パートナーズ」から2万ドル(約200万円)を受け取った。この資金で完全装備の試作品(ここで軽量化、小型化を実現)を製作し、サンクトペテルブルクの視覚障がい者医療・社会センターで試験を行った。「装置はそれでもかなり大きく、目の不自由な人の胸部全体を隠してしまうほどだったが、良く機能した。装置をつけた人たちは、イヤホンから聞こえる指示に従って、部屋中を動き回っていた」とセンターの指導員であるアレクサンドル・サチコフ氏は話す。

 改良品ではキネクトを、イスラエルの企業「プライム・センス(PrimeSense)」のより小型のセンサーに変えた。今の装置は、サイドカメラ、マイクロコンピューター、人の前にある障害物を認識する3Dカメラから構成されており、最適な障害物の迂回方法を分析し、それを言葉にしてワイヤレス・イヤホンに伝える。人が動く時に自由を感じるには、この機能で十分だとキタエフ氏は考える。

 

ロシア新興企業格付けでAAA

 オリエンスは8月、ロシア新興企業格付けで、最高の投資価値(AAA)と評価された。現在は民間投資家やベンチャー基金と交渉を行っており、総額400万ルーブル(約1200万円)を受け取れる可能性がある。この金額は、信号機の色を判別し、スーパーで商品の値札を識別可能な装置の開発に十分である。

 この装置の希望小売価格は800ドル(約8万円)。販売は医療リハビリ機器に特化した既存の流通業者と、視覚障がい者用の製品のインターネット・ストアを通じて行う予定。さらに将来的には、目の不自由な人に仕事をあっせんする国営企業や、仕入れを保証できる慈善団体、社会団体などを経由するなど、B2Gセグメントで販売を行う予定。またヨーロッパやアメリカの市場に参入する計画もある。来年夏に最初の試験ロットを製造するため、2015年初め以降にヨー ロッパ市場への拡大を図る。

 

国家の支援を引き出せるか否かが普及のカギ 

 ロシアのバイオテクノロジー投資家は、このスタートアップが必ずしも国際的に成功できるとは思っていない。ロシアの運用会社「バイオプロセス・キャピタル・パートナーズ」のエレーナ・カシモワ戦略・投資責任者は、ロシアのベンチャー投資家の多くが、医療機器への投資を慎重に行っていると考えている。この分野では、技術リスクだけでなく、販売リスクも高いからだ。オリエンスは政府調達を通じて、装置を普及させなければならなくなる可能性が高い。

 「スコルコボ」の専門家であるゲレナ・リフシツ氏も、国家の支援なしに装置を大量に流通させることは不可能だと考える。だが支援を得るためには、まず装置の効果を示さなければならない。