「インフレに轡をはめる」

ロイター通信撮影

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経済成長が鈍化するなか、約3ヶ月前にロシア中央銀行の総裁に就任したエリヴィラ・ナビウリナ氏は、投資を呼びこんで経済を刺激し、インフレ抑制に重点的に取組むという野心的な目標を掲げているが・・・。

露米で女性がトップに 

 米国では、オバマ大統領が、連邦準備制度(FRB)の次期議長に、ジャネット・イエレン氏(67)を指名しており、今年末までに上院の承認を受けることになる。承認されれば、100年以上のFRBの歴史上、女性初の議長誕生となる。

 ロシアでも、6月末から中銀総裁は女性が務めている。経済発展相、経済問題担当大統領補佐官を歴任したエリヴィラ・ナビウリナ氏(49)だ。彼女は、2002年以来、法で認められる最大任期の3期を務めたセルゲイ・イグナチエフ前総裁を引き継いだ。

 

「新たな質の成長が必要」 

 多くの専門家は、ナビウリナ氏の理論家としての能力と豊富な経験を評価しているものの、ロシア経済の非常に難しい時期に、中銀総裁としての舵取りを強いられることになる。世界銀行の予測では、ロシアの経済成長は、昨年度の3・4%から今年は1・8%まで落ち込む。

 「政府も中銀も、新たな質の成長が必要であることを理解している」と、ナビウリナ氏は、テレビ局「ロシア24」への最近のインタビューで述べた。

 「成長は、経済効率、生産性の向上と経済の多様化に基づかねばならない。中銀の通貨政策と融資も、これを目指して行っていく」とナビウリナ氏。

 専門家らの指摘によると、新旧総裁の戦略の主な違いは、通貨政策の手法だ。

 「イグナチエフ氏の主な“道具”は通貨で、ルーブルと外貨の通貨供給量を増やしたり減らしたりすることだった」。

 こう指摘するのは、市場分析に携わる「インヴェスト・カフェ」社のダニイル・マルケロフ氏だ。「新総裁の方は、融資借り換えの金利を主なテコにしようとしている」。

 

インフレとの戦い 

 ナビウリナ氏の優先課題の1つは、インフレとの戦いだ。ロシア連邦統計局(ロススタート)のデータによると、昨年のインフレは6・6%だった。

 「今年は6%になると予想している。1年後にはさらに1%下げられる可能性が十分あると思う」。10月初めに、投資フォーラム「ロシアは招く」で、同様の目標をプーチン大統領が提示した後、ナビウリナ氏はこのように語った。中銀は、インフレ抑制に重点的に取組んでいく意向だと言う。

 「中銀には、金利の設定で、インフレが下がるように誘導できる可能性がある」。ナビウリナ氏はこう述べた。

 

数あるインフレ要因 

 だが、インフレを抑制していく上で、中銀の政策は、数ある要因の一つにすぎない。

 「ロシアのインフレは、通貨政策以外の要因に非常に強く左右されている。例えば、経済発展省の管轄外にある、ガス、電気などの公共料金の設定や、生産性の伸びを超えて上がっていく賃金などだ」。ロシア国立経済高等学院のワレリー・ミローノフ発展センター副所長は、こう説明する。「通貨政策は、比重としてはおよそ半分にすぎないだろう」。

 もっとも中銀は、インフレ抑制以外に、経済成長を刺激することができるはずだ。ナビウリナ氏によると、長期プロジェクトへのスパンの長い投資は、生産性ひいては競争力を高め、成長の牽引車になるはずだという。

 ところが、昨年は、直接投資の額は550億ドル(約5兆5千億円)から510億ドル(約5兆1千億円)に落ち込んでいた。

 専門家らの指摘によれば、投資環境の改善は、何よりも制度の改革、政府機関への信頼、および法と“ゲームのルール”の透明度の向上による。

 「この点では、ロシアは、多くの国の後塵を拝している。マクロ経済の指標では29位だが、仮にナビウリナ氏の努力で22位に上がったとしても、警察への信頼度が148か国中122位のままだったら、やはり投資環境は良くならない」。

 

銀行の問題児を矯正 

 ナビウリナ氏が打ち出しているもう一つ重要な方針は、ロシアの銀行全般への信頼度の向上だ。マルケロフ氏は、金融市場における国立銀行の比率を高めたイグナチエフ前総裁と違って、新総裁は、融資の質と民間銀行の状態を改善する、と期待している。

 ナビウリナ氏自身、中銀は現在、問題のある銀行を2タイプに大別し、その改善に力を注いでいると述べている。

 問題ある銀行とは、まず第一に、怪しげな換金を行い、海外に持ち出している銀行であり、第二に、不安定な銀行で、個人および法人の預金をリスクの高いプロジェクトに投資しているようなタイプだ。

 中銀は、前者については、ライセンスを取り消す予定にしており、後者については、営業の健全化の実施を提案する。その期間は半年で、改善が難しい場合には1年間に延ばす。

 

「オフショアより魅力的にできるのか」 

 9月からロシアの中銀は、金融の“大目付”となった。プーチン大統領の発案で、これまでの銀行の監督機能に加え、金融市場の監督の権限を移譲されたのだ。これは従来は、連邦金融監督庁の管轄だった。

 「ナビウリナ氏の仕事の成果は、金融市場をどれだけうまく調整できるか、そして、ロシア企業にとっての国内市場の条件をオフショアと比べてどれだけ魅力的にできるかで、評価すべきだろう。つまり、金融関連の法律、規則、ルールをどれだけ現代化できるかだ。ロシアに国際金融センターを創設するという計画があるが、その観点から見て、現代化できるかどうか。その一つの要件は、オフショアの比重を減らすことにある」。こうミローノフ氏は結んだ。