極東の魚に目を光らせるロシア

=ロイター/ボストーク撮影

=ロイター/ボストーク撮影

ロシアは、250社ほどの日本企業からの魚の輸入禁止を維持しており、ロシアの漁業従事者ならびに地中海や中南米の輸出業者が、ほどなくそれらの企業に取って代わる可能性がある。

 9月半ば、ゲンナジー・オニシチェンコ・ロシア連邦消費者権利保護・福祉分野監督庁長官は、極東の魚に対する監理を強化すると発表した。極東海域における大規模な漁獲の開始、および、福島第一原子力発電所事故の処理の行方を見守る専門家らが確認している半減期の長い重い放射性同位元素の外部環境への放出の増大が、その理由として挙げられているが、オニシチェンコ氏は、外部環境へ放出された有害物質の量はこの一月半で1,5倍に増えたとしている。

 

原発事故以来、242社からの輸入を禁止 

 ロシアの主席衛生医が警鐘を鳴らすのは今回が初めてではなく、一年余り前、同氏は、放射能の含有が確認されはじめた日本の沿岸に棲息する数種類の魚の危険性を指摘した。ロシアは、1980年代に自らチャルノブィリ原発事故を経験しているだけに放射能の問題にはひじょうに敏感であり、当時、プリピャーチ川で獲れた汚染された魚については、長いこと怖ろしい噂が巷に流れていた。

 福島第一原発事故後の2011年4月、ロシアの農産物市場の調整を担当するロシア連邦動植物衛生監督庁は、日本の8県の企業242社からの魚および海産物の輸入を禁止する措置を導入した。2013年9月、同庁は、再三にわたる日本の管轄機関からの撤廃の要請にもかかわらずそうした制限を完全に維持するとし、「独自の状況のモニタリングならびに国際的および諸外国の機関の資料から判断し、ロシア連邦動植物衛生監督庁は、制限の撤廃を可能とみなさなかった」との声明を発表した。現在、放射能に汚染されていない水域の魚を加工している日本の水産加工企業524社が、魚および海産物をロシアへ輸入する権利を有している。

 

「カリフォルニア近辺でも高い放射能レベル」 

 とはいえ、ロシアの専門家らは、今のところ、ロシア国民の生命と健康に対するそうした脅威を控えめに評価している。汚染水が流れ込んでいる太平洋では世界の魚類の40%が獲られているものの、ロシアは、主に、ベーリング海やオホーツク海(世界自然保護基金(WWF)海洋プラグラムのコーディネーター、コンスタンチン・スグロフスキー氏の評価では、ロシアの漁獲量の半分以上)、および、クリル(千島)列島の水域で獲れるもので、十分に賄える。

 スグロフスキー氏は、その水域の魚が汚染されている確率をさほど高くは評価していない。それは、現時点で存在しているすべての海流は、放射能に汚染された水を福島から米国の方面へ運んでおり、魚の回游は、ロシアから日本の沿岸へ向かって行われており、その逆ではないためで、唯一の例外は、ロシアではさっぱり人気のないシロイトダラのみである。スグロフスキー氏は、こう語る。

 「福島は太平洋に臨んでいるため、海流は、放射能を大洋へ運び、アメリカ方面に大きな危険をおよぼすものとみられ、すでに、カリフォルニア近辺で高い放射能レベルが確認されているとの資料もあります」。

 

日本から直送されるマグロを警戒 

 ロシアは、現在、自国の漁業の発展にさかんに取り組んでおり、国民一人当たりの魚の年間消費量は、25キログラムにまで増大した(2009年は19キログラム)。ロシア連邦漁業庁の資料によれば、漁業の中心は極東水域で(年初からの漁獲高330万トンのうち230万トン)、主にスケソウダラやサケマス類が水揚げされている。ロシア北部の水域における年初からの漁獲量は、約46万トンで、ずっと少ない。

 ロシアへ輸入される日本の主な魚は、マグロである。値が高いのと家庭でそれを調理する習慣がないことから、ロシアでは今のところさほど人気がないが、ロシアの大都市でとても人気のある寿司バーやシーフードレストランやスーパーマーケットではステーキの形などですでにお目見えしている。スグロフスキー氏は、こう語る。

 

モスクワの寿司バーはノーコメント 

「日本からロシアへの魚の輸入はそう多くありませんが、寿司バーに納められる魚は日本から飛行機で直送されることもあり、この問題には目を光らせる必要があります」。

 このテーマは、日本レストランのオーナーにとってひじょうに頭の痛い問題であり、大手寿司バーチェーン「ヤキトリヤ」の代表は、オニシチェンコ氏の声明に対するコメントを控えた。

 魚市場生産流通企業協会のヴィタリー・コールネフ会長代行は、こう語る。「マグロは、放射能の面でとても危険な魚です。放射能を体内に蓄積させ、長く生き、小さな魚を食べるのですから」。コールネフ氏によれば、マグロのほか、節足動物(カニ)、コンブ、イカといった、太平洋で獲れ、長く生きる、あるいは、放射能が溜まりやすい海底付近に生息する、その他の海産物も、要注意だという。

 また、ロシアへは、日本の水産物が韓国や中国を経由して輸入されるという問題もあり、スグロフスキー氏は、こう語る。「ロシアのスーパーマーケットには、どこでだれが獲った魚かを示す特別のバーコードやチップといった、商品の由来に関する明確なマーキングがありません」。

 専門家らの評価によれば、ロシアの市場では日本のマグロを地中海や大西洋あるいは中南米付近の南洋のマグロで代替しうる。日本のものとは異なる代物かもしれないが、ロシアのバイヤーは、今のところ違いを指摘するほど口うるさくはない。