「ガスプロム」と「ロスネフチ」のつば競り合い

ロシアの大手ガス輸出企業「ガスプロム」は、ロシア最大の石油会社「ロスネフチ」に対し、サハリンに液化天然ガス(LNG)工場を建設しないよう釘を刺している=ルスラン・クリヴォボク撮影/ロシア通信

ロシアの大手ガス輸出企業「ガスプロム」は、ロシア最大の石油会社「ロスネフチ」に対し、サハリンに液化天然ガス(LNG)工場を建設しないよう釘を刺している=ルスラン・クリヴォボク撮影/ロシア通信

ロシアの大手ガス輸出企業「ガスプロム」は、ロシア最大の石油会社「ロスネフチ」に対し、サハリンに液化天然ガス(LNG)工場を建設しないよう釘を刺している。

 その代りに、「ガスプロム」は、「ロスネフチ」に対し、同プロジェクト用のガスを「ガスプロム」のLNG工場へ差し向けるよう促している。

 これに対し、「ロスネフチ」は、ライバルの指図は受けないと突っぱねた。

 専門家らは、「ロスネフチ」のイーゴリ・セーチン会長は、自社の効率が「ガスプロム」に勝ることをウラジーミル・プーチン大統領に示そうとしているとみなし、「セーチン氏は、極めて挑戦的に振舞っている」と述べている。

 

なぜサハリンにLNG工場をもう一つ? 

 「ガスプロム」は、「ロスネフチ」がサハリンで実現しつつあるLNG工場建設プロジェクトは合理的ではないとしている。

 「ガスプロム」のヴィクトル・チモシーロフ東方プロジェクト調整局長は、25日、現有のサハリン産ガスは同企業がフル稼働できる量に満たない点を指摘し、次のように述べた。

 「仮に新たなインフラがプロジェクト(「サハリン-1」プロジェクトのこと。推進主体の出資比率は、エクソンモービルが30%、「ロスネフチ」とインド石油ガス公社(ONGC)がそれぞれ20%、日本のサハリン石油ガス開発(SODECO)が30%)の支出項目に含まれるとしたら、国家がそれらの出費を穴埋めすることになり、これは理に適っているとはいえません。むしろ、「サハリン-1」で採取される80億~100億立方メートルのガスを、「ガスプロム」が51%、ロイヤルダッチシェルが27,5%、日本の三井が12,5%、三菱が10%を出資する「サハリン-2」プロジェクトの枠内で稼働するLNG工場へ送るほうが、より合理的です」。

 ロシア石油ガス産業家同盟の主任専門家であるルスタム・タンカーエフ氏は、状況をこうコメントする。「「ガスプロム」はつねに他社のガスに対して強い警戒心を抱いています。同社の戦略的課題は、ありとあらゆる手段によって自社のガスの備蓄を増大させることなのです」。

 

「ロスネフチ」の反応

 「ガスプロム」のチモシーロフ氏の声明に対し、「ロスネフチ」の代表は、やや嘲笑的にこう述べた。「わが社は、パートナーやライバルにいたく感謝しています。というのも、それらの会社は、「ロスネフチ」がいかに大がかりで自社の立場を強めるプロジェクトを実現しているかを市場に知らしめてくれるからです。これは、わが社が、正しい方向へ歩んでおり、ライバルを利するようにではなく市場を潜在的に変えうるプロジェクトを実現していることの証しであり、ライバルとしては、気が気ではないわけです」。

 「ロスネフチ」は、アメリカのエクソンモービルとタッグを組んでLNG工場を建設する計画である。

 先に、同社のイーゴリ・セーチン会長は、工場の第一工期分は年間500万トンのLNGを生産できる、と述べた。

 同企業の生産力は1000万トン、投資額は150億ドルと評価されており、セーチン氏によれば、LNGの出荷は晩くとも2018年に開始される。

 セーチン氏は、こう述べる。「うちには資源のベースがあり、「ロスネフチ」は、6000億立方メートルのガスを確保しているほか、エクソンとの交渉も進んでおり、さらに5000億立方メートルのガスの提供が受けられましょう」。

 初期の段階では、LNG工場用の原料は、まさに「サハリン-1」プロジェクトから提供され、その先は、「ロスネフチ」が参加する「サハリン-3」および「サハリン-5」という同じサハリン大陸棚のプロジェクトが、原料の調達に加わる。

 「ロスネフチ」にとっての販売市場となるのは、日本や中国をはじめとするアジア太平洋地域諸国である。

 

ロジックはどこに? 

 国家エネルギー安全保障基金のコンスタンチン・シーモノフ会長は、ロシアでは経済的合理性という考え方が、競合する国営企業の利益の犠牲にされてしまうことがよくある点を指摘し、こう述べた。

 「問題は「ロスネフチ」には資源が足りないかもしれないということではありません。たしかに、工場の稼働を保障するために必要なレベルのサハリンにおけるガスの採取をパートナーがどれだけ長く維持できるかについては、大いに疑問の余地がありますが…。経済的論理からすると、ゼロから新しい工場を建てるよりも、今ある「ガスプロム」の工場の生産力をアップさせるほうが、はるかに手っ取り早いです」。

 さらに、シーモノフ氏は、「ガスプロム」の工場はサハリンで唯一の不凍港であるコルサコフへ通じているためLNGの出荷が容易であり、「ロスネフチ」にはそうしたアクセスがない点を指摘し、さらにこう述べた。

 「それから、「ガスプロム」のパートナーであるシェルは、最先端技術を用いたLNG部門における世界のリーダーですが、「ロスネフチ」がどのようなテクノロジーを用いるかは、今のところ不明です」。

 シーモノフ氏は、「ロスネフチ」にとってLNG工場の問題は経済的というよりも政治的な意味合いを帯びている点を指摘し、こう述べた。

 「イーゴリ・セーチン氏は、自分の会社が「ガスプロム」よりはるかに効率的かつ速やかにプロジェクトを推進していることを、ウラジーミル・プーチン大統領に見せたいのです。今、セーチン氏は、極めて挑戦的に振舞っており、これが、反セーチン陣営の癇に障っているのです」。

 

元記事(露語)