料理好きな経済学者の楽々セット

特定の料理用の材料セット =Press photo撮影

特定の料理用の材料セット =Press photo撮影

スタートアップ「料理の喜び(Radost' Prigotovleniya)」の創設者であるイリーナ・ナザロワ氏は、趣味の料理をプロジェクトに成長させた。

 半調理品ではなく、調理の準備が済んでいる生鮮品を販売する構想は、偶然生まれた。ベトナムから帰国した姉妹から、カット済みの野菜と肉が入った炒め物用セットが人気で、どこのスーパーでも売っているという話を聞いたのだ。ナザロワ氏は料理が好きだったが、モスクワの忙しい生活ではいつもそれができるわけではない。限られた時間で何をつくるかを考え、それに合わせて必要な食材を探さなければならない。しかも特定の料理のために材料をそろえると余ってしまい、冷蔵庫にしばらく置かれた後でゴミ箱行きになってしまう。料理が好きなのになかなかつくれない人、また特定の料理用の材料セットを買いたいと考える人のために、何ができるかを真剣に考えた。

Nazarova thinks about people who love and want to cook
ナザロワ氏『ただ食べるだけではもうつまらない』=Press photo撮影

 ナザロワ氏の以前の職業は、食べ物とはまったく関係なかった。モスクワ大学、ロシア経済学院で学び、アメリカ系の金融機関「J.P.モルガン」で株式市場のアナリストを1年ほど務めていたところだった。プライベートな時間では料理を趣味としていたが、材料を切ったりすりおろしたりする時間が足りなかったため、冷蔵庫は空っぽなことが多かった。人数分の食材が入ったセットは、大都会の忙しい生活の悩みごとを解決してくれる。手間のかかる退屈な材料のカットせずに、すぐに料理の創造的な部分に飛びこめるのだ。

 「この構想は数ヶ月後には、料理で伝え、表現できる、より深い愛と美のコンセプトに仕上がった。このプロジェクトの哲学は、『ただ食べるだけではもうつまらない』。何かをつくってそれを喜ぶ方が楽しい。料理をすることで簡単に創作を楽しむことができるの」。

 同様のプロジェクトは、世界のいくつかの大都市ですでに成功している。ドイツのベルリンには、自社の店舗を通じたオフラインの販売を主としている、Kochhaus があるし、香港には Secretingridient がある。アメリカの HelloFresh は、1000万ドル(約10億円)の投資をすでに呼び込んでいる。

 外国の成功例は、ナザロワ氏の背中を押した。プロジェクトの開始資金には、自身の貯金をあてた。前職を退職することに決めたのは2012年6月で、以降、プロジェクトの発展に集中。ウェブサイトは無料のエンジンから始め、数百人ずつのユーザーを獲得していったが、ユーザーの30%は定期的に「料理の喜び」サービスを利用している。平均注文金額は約2000ルーブル(約6000円)。

 さらなる発展のために、より多くの投資が必要になったが、フォーラムでプロジェクトを紹介したり、投資家を集めるために奔走したりする必要はなかった。複数のエンジェル投資家が、自ら総額8万ドル(約800万円)を投資してきたのだ。このようにして最初の投資ラウンドは終了し、ナザロワ氏はさらに4万ドル(約400万円)の自身の貯金を設備投資、事務所賃借、イベントの企画などにあてた。

 この段階では、自分だけでウェブサイトを管理し、財務分析を行い、成長予測を作成し、ウェブサイト用の写真撮影をしていた。しばらくの間は一人でうまく全業務をこなしていたが、やがて助手が必要であることが明らかになってきた。現在は5人でプロジェクトを運営している。ナザロワ氏は今年末までに、投資回収が可能だと考えている。

 「ビジネス・モデルがいかにおもしろくても、顧客への正しい対応、すなわち正しい位置づけやコミュニケーション・チャネルを見いださねばならないため、理論的な投資回収までには時間がかかってしまう。商品は新しくてあまり知られていないため、さまざまなアイデアを試して方法を模索している」とナザロワ氏。

 「料理の喜び」は現在、アジア料理、ヨーロッパ料理、南米料理の食材セットを提案し、照り焼き用の七面鳥、さまざまな種類のステーキ、サラダ、スープ、デザートなどを用意している。ウェブサイトにはレシピもあり、そのうちの一部はナザロワ氏自身が改善、追加をしている。

魚用ソース

 ロシアNOWだけに教えるナザロワ氏の夏のおすすめレシピ

  1. バジルの小枝をすり鉢ですりつぶすか、またはミキサーにかける。
  2. 濃いココナツミルク(またはココナツクリーム)、レモンジュース、塩、コショウを適宜加える。

 香り豊かで軽く、おいしいソースのできあがり。