ロシア政府はアントン・シルアノフ財務大臣もびっくりの10兆ルーブル(約30兆円)をかけて、極東発展プログラムを実現している。写真提供:Flickr/xJason.Rogersx
極東は、様々な面でロシア最大の地域の一つとなる可能性を秘めているが、問題も抱えており、多くの専門家や政府関係者がハイレベルで話し合いを行っている。極東は資源が豊富なのに、ゆっくりと、しかしながら確実に、人口が流出しており、さらに外国からの投資もほとんどないため、問題視されているのだ。
現状を打開しようと、ロシア政府はアントン・シルアノフ財務大臣もびっくりの10兆ルーブル(約30兆円)をかけて、極東発展プログラムを実現している。極東を付加価値の高いハイテク製造地域 に変え、人口流出を防ぐのがこのプログラムの主な目的だ。対外経済活動発展銀行(VEB)のウラジーミル・ドミトリエフ総裁は、この金額の約6分の1が交通インフラの改善に、そして5000億ルーブル(約1兆5000億円)がエネルギー・インフラに当てられると話している。
「バラマキ以外に何かが必要」
しかしながら、予算配分だけでは、質の高い経済向上を目指すことは無理であるし、ビジネスはこれを理解している。「財政資金だけですべてをこなすのは無理で、ロシアや外国の民間経済家が必要になってくる。そのためには正しい投資環境が必要だ。ロシア全体で利率を下げることが無理なら、一地域だけでそれをやってみるのも悪くはない。または長期的投資を刺激する何かをつくるとか。このような広大な地域を短期間で発展させることは無理だ」と、ロシアのエネルギー関連資産運用会社「EN+」のアルチョム・ヴォルィネツ社長がフォーラムで話した。
政府は投資家をすでに優遇しているが、この問題ではさらに行動を起こす意向だ。「極東については、すでに投資家に対する利益税免税が決定されており、また地元政府による資産への税優遇措置やその他の一連の優遇措置もある」とドミトリエフ総裁。外国人はロシアへの投資の可能性を肯定的に評価している。 「10年前とは異なり、ロシアの投資環境は良い方向に大きく変化した」とロシア・中国投資基金の胡冰(フー・ビン)総裁は考える。
地元の取り組み
地元政府も連邦予算ばかりに頼らず、自力で何とかしようとしている。沿海地方のウラジーミル・ミクルシェフスキー知事はこう話す。
「今のところ統計はそれほど悲観的ではなく、人口流出は0.15%だ。とはいえ、転出者がいるなら転入者を入れればいいというわけではないから、考えさせられる。我々は大統領令から地元 の措置まで、この問題に応えるべく尽力している。例えば、35歳以下の若い家族や多産家族には、住居建設用の土地を無料で与えている。これは国防省の土地が沿海地方に譲渡されたから可能となった。これは長期的に有効かもしれない。人間は土地に家を立てると、そこに根付くものだ」。
ミクルシェフスキー知事は、極東の経済を国内向けから国外向けに変える必要があると考えている。極東地域には650万人しかいないが、ウラジオストクから1時間ほどの場所には、約4億人の潜在的な中国人顧客がいる。
法律の不備、人材難、いまや米国より高いガス料金・・・
ビジネスマンは有望なプロジェクトへの投資を拒む気はないが、不完全な法律が不安を感じさせてしまう。極東バイカル地域発展基金のパーヴェル・グラチョフ理事長はこう話す。「極東には非常に多くのインフラ・プロジェクトと、それに投じてもいいと考える投資家の資金がある。問題は投資そのものへの準備作業がないことにある。国と民間投資家は互いにこの問題をなすりつけ合っている」。
規範的・法的基盤の整備作業以外にも、特別な産業分野に従事できる人材確保など、政府が取り組むべき問題は他にもある。
ビジネスを支援するための可能な対策すべてを講ずるなら、今がその時だ。税優遇措置やその他の優遇措置は、上昇するエネルギー価格や税金などの負の要因の影響を、わずかでも低減させ得る。「シベリアのガス料金は、(アメリカ)ミネソタ州の料金を上回っている。つまり、ロシアは従来の強みを大きく失いつつあるため、対策を講じなければならない」とヴォルィネツ社長は話す。
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