中国を北極評議会に迎えたワケ

昨年は平均気温が危機的温度を超え、取り戻せない氷解が現実に起こった。=Lori Legion Media撮影

昨年は平均気温が危機的温度を超え、取り戻せない氷解が現実に起こった。=Lori Legion Media撮影

スウェーデン・キルナ市で行われた直近の北極評議会(5月14~15日)で、中国、インド、日本、また韓国、シンガポール、イタリアが常任オブザーバー(議決権を有しない会議参加国)として認められたことにより、参加枠が拡大した。

 北極圏よりもむしろ赤道に近いこれらの国が、この地域の公認の国になってしまった。北極評議会の沿北極国であるロシア、アメリカ、カナダ、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイスランドは、手に負えない敵国を抱えるよりも、仲間に引き入れて把握できるようにした方がいいとい う理屈にもとづいて承認したのだ。

 北極評議会は、北極の問題を協議、解決する、唯一かつ重要な政府間協議で、2年に1度外務大臣レベルで話し合いを行っている。評議会には、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、ポーランドという常任オブザーバーがいる。

 

 新メンバーの関心は

 新たに加わった常任オブザーバーは、環境変化著しい北極地域に対して重大な関心を持っている。「2100年までに北極の氷山や氷冠は最大30%の質量を失い、世界の大洋の海水レベルは0.9~1.6メートル上昇する。今後30~40年以内で、夏季の北極海には氷がほとんどなくなる」という評価が、 2011年の北極評議会向けに用意された報告書に記されていた。

 予測は予測に終わるかもしれないが、昨年は平均気温が危機的温度を超え、取り戻せない氷解が現実に起こった。これは近い将来、北極海航路がロシアとカナダのエキゾチックな観光ルートではなくなり、世界の立派な輸送ルートになることを意味している。

 そして中国にとってこれは、ベーリング海峡とバレンツ海を通る上海-ハンブルグの航路が南回りの航路よりも6400キロメートル短くなり、海上輸送コス トが1200億ドル(約12億円)減ることを意味すると、ロシア連邦商工会議所自然管理・環境保護委員会委員で、北極研究者のミハイル・ジューコフ氏は話す。

 

 「北のシルクロード」

 中国はこの道を自国の”隊商”用のルートにしたいと考えている。中国の北極戦略の根底には、大連海洋大学の李振富氏が中国国務院への報告書に記した、「北のシルクロード」のコンセプトがある。「北極航路を制する者は、新たな世界貿易の路を制することになる」。

 中国が将来的に北極海航路を公海にするよう要求する可能性は排除できないと、ジューコフ氏は考えているが、ただそうなると、同様の要求が海南島付近の海峡に対して行われる可能性もある。

 なぜ北極圏の国、特に北極海航路を独占的に管理しようと考えるロシアに、このような野望に満ちたオブザーバーが必要なのだろうか。

 

 スウェーデン・キルナ市で行われた直近の北極評議会(5月14~15日)AP通信撮影

 承認は最善の策だが

 ロシアの外交関係筋は、「アジアの虎たち」を北極評議会に受け入れることが、このような野望に対するコントロールを失わないための最善の策だったと話 す。中国の常任オブザーバー申請を無視していたら対立の火種となりかねないし、その気になれば中国は別のプラットフォームで自国の利益を守り抜くことだっ てできる。

 というのも、アイスランドが4月15日、新たな国際機関「北極圏」を創設すると発表したのだ。アイスランドの裏で中国が糸を引いていることは明らかだ。 この新しい機構はどの地域の国でもメンバーとして受け入れ、国連総会を通じて沿北極国の特権を非難し始める可能性がある。

 これは北極圏大陸棚を自国の領域として認めるよう、来年国連に申請を提出しようと計画しているロシアなどの国を困難に陥れる。ロシアを筆頭とするこの地域の大国は、6ヶ国を新たな常任”オブザーバー”として北極評議会に迎えながら、安全を確保したというわけだ。

 

 オブザーブにとどまるのか 

 5月に行われた会議で採決された要約文書には、オブザーバーの主な課題を文字通りオブザーブする(観察する)ことだと記している。さらにオブザーバーは 4年間に一度、その地位への関心を確認しなければならず(つまり、オブザーバーであり続けたいか否かを示す)、評議会はその行動に評価を与える。また、より重要な規則の一つとして、オブザーバーが沿北極国の主権および北極に対する主権を尊重すること、という項目もある。

 とはいえ、やがて中国の北極に対する主権も認めなければならなくなる可能性もある。中国の国営企業がノルウェーの民間企業を通じて、ノルウェー領土のス ヴァールバル諸島の土地を購入することに関心を持っているという情報を、ロシアの民間エネルギー調査会社「ロスエナジー(RusEnergy)」のパート ナー兼アナリスト、ミハイル・クルチヒン氏が明かした。

 ロシアはこの状況下で、野望にあふれる新しいオブザーバーの国々を資源プロジェクトで引きつけることしかできないだろうが、それは自国の計画にも絡んでくるのである。