ロシア初のスマートシティ建設へ

日建設計の中村光男会長は「現在のモスクワは1970年代の東京をほうふつとさせる。すべてが過密でほこりっぽく、汚れているが、以前は日本もこうだった」と語る。=Alamy/Legion Media撮影

日建設計の中村光男会長は「現在のモスクワは1970年代の東京をほうふつとさせる。すべてが過密でほこりっぽく、汚れているが、以前は日本もこうだった」と語る。=Alamy/Legion Media撮影

ロシアの大都市の生活はどんどん悪化している。道路には車があふれかえってアスファルトが足りないし、市当局が打てる手もいよいよ限られてきている。また渋滞はラッシュアワーだけでなく、ほぼ24時間続いている。だが、これは絶望的な状態ではなく、賢くなれば街は大きく変わるのだ。

 サンクトペテルブルク市郊外のセストレツク市はその昔、ロシア革命の労働者階級の揺籃の地とされていた。ロシア帝国最大の武器工場がここにあり、 1917年には工場の労働者たちが収奪を行うためにしばしばサンクトペテルブルクに来ていた。あれから100年が経過し、セストレツク市は新たな革命の揺 籃の地になろうとしている。日本の合弁会社「スマート・シティ企画」と建設事務所「日建設計」は、ロシアの不動産会社「北西インベスト」とともに、ロシア 初のスマート・シティ「新海岸」を更地から築こうとしている。

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日本主導で街づくり

 安倍首相の公式訪問の枠内で

 日建設計の中村光男会長は先週、安倍晋三首相の大経済使節団の一人としてモスクワを訪れた。

 「両国はよく似ている。日本人の多くはロシア文化の影響を受け、学校で学んだし、ロシアの音楽、またトルストイやドストエフスキーなどのロシア文学は日 本でとても愛されている。ロシアは憧れだ。ただ文化以外にも、ロシアには天然資源やエネルギーといった大きな魅力がある。我々は日本の最新技術をロシアに 紹介したい。現在ロシアにある多くの問題は日本が乗り越えてきたものであり、日本のソリューションと開発を共有する用意がある」。

 サンクトペテルブルク市郊外は日本と同様、土地が限られているため、「新海岸」プロジェクトでは日本の経験が重要になってくる。スマート・シティは人工 島に建設されるのだ。「新海岸」は日本的な原則をすみずみまで取り入れ、都市環境の要件に準拠した、ロシア初の“ミニ・ポリス”になる。

 

 日露共同プロジェクトでミニ・ポリス建設 

 「現在のモスクワは1970年代の東京をほうふつとさせる。すべてが過密でほこりっぽく、汚れているが、以前は日本もこうだった」と中村会長。大都市の 東京では問題を一度で解決することはできないと誰もが理解していたが、行政が工業施設のある小さな地区をつくりかえることを提案した。スマート・シティの コンセプトが認められた後の1988年、中心から郊外への都市機能の移転を定める多極分散型国土形成促進法が制定された。東京の地区は次々と変わっていった。

 「ロシアの街を『スマート・ミニ・ポリス』に変えれば、多くの都市問題が解決される。特に情報システムを創設することで、エコシステムのような街の地区 の統一が実現でき、具体的な建物の間でより良い公共サービスを割り当てることが可能となる」と中村会長。街の住人がエネルギーや水の消費、また他の公共 サービスの利用を管理し、平均値と比較し、日常の無駄使いを減らすことができるのだ。

 

 最大の問題は渋滞 

 ロシアにとってもっとも重要なのは、やはり交通の問題だ。モスクワや百万人都市だけでなく、普通の街でもキロ単位の渋滞が起こっている。一部の街では自動車が走りやすくなるようにと、地元政府が路面電車やトロリーバスを廃止したが、より多くの市民が車に乗るようになったために状況は悪化した。世界の経験 は、既存の道路網を改良し、連絡問題を電子的インテリジェント・システムに置き換え、交通量を自動管理するという解決方法を示している。

 モスクワ市政府にスマートなモスクワをつくる気がないとは言えない。むしろここ2年は交通問題の解決に対し、国内中規模都市の全予算に匹敵する予算が配分されている。セルゲイ・ソビャーニン・モスクワ市長は、幹線道路に交通機関専用道路をつくり、自動交通管理システム「スタート」と第3環状道路自動交通量 管理システムを導入した。また違反行為を記録するために、750個のフォト・カメラとビデオ・カメラも設置された。ヨーロッパやアジアの大都市ですでに採 用されている、インテリジェント交通量管理システムも近々導入される。モスクワ市政府は全地球的航法衛星システム「GLONASS(グロナス)」にも期待 を寄せており、8000台のバスとトロリーバスにセンサーを取りつけ、モスクワの公共交通機関に関する全情報を集めた統一管制センターをつくる考えだ。

 

 「自動管理システムだけではダメ 

 中村会長は、このイノベーションについてさほどの驚きを見せない。「日本の経験から言えることは、いかなる自動管理システムも東京の問題を解決できな かったということだ。電気機器だけでなく、多水準立体交差システムや幅広幹線道路がつくられ、多くの行政機関や会社が郊外に移転したことで解決できた。ただし新しい道路の建設計画を実現するには非常に長い期間が必要となり、東京ではそれに20年以上かかった」。

 

 *記事全文(ロシア語)

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