サハリン州知事、アレクサンドル・ホロシャビン氏の発表 =吉村慎司撮影
安倍・プーチン会談を目前に控えた4月28日。訪日中のサハリン州知事、アレクサンドル・ホロシャビン氏は東京都心のホテルで午前中から200人近く集まった日本人を前にマイクに向かった。「今日は特別な日です。サハリン州が40年以上にわたる日本との交流史の中で、初めて日本の首都でイベントを開くからです」。
この日の投資説明会「サハリン 経済・投資ポテンシャル ビジネスフォーラム」はロシアの地方都市のプレゼンテーションとして異例の盛況を見せた。
午前が全体会合、午後は四つの分科会という2部構成。全体会合の会場ホールに入ると、正面中央に今回のフォーラム向けにデザインされた演台がつくられ、その背面の壁には大スクリーンが左右に一つずつ見える。
11時の会合開始直前には軽快な音楽とともに、サハリンの産業を紹介するプロモーション映像が映し出された。
プログラムはアファナシエフ駐日ロシア大使のあいさつでスタート。岸田文雄外相からのメッセージが代読された後、午前のメーンとしてホロシャビン知事が登壇した。
知事は水産、医療など多くの分野に言及したが、持ち時間の半分をエネルギー関連の話題に割き、中でも、ロシアから日本への送電システム「エネルギー・ブリッジ」を架ける構想を強調した。
午後の分科会は、「エネルギーと輸送インフラ」「水産加工・林業」「観光」「地域間交流」に分かれて同時進行した。
特に人気の高かったエネルギー分科会では、送電プロジェクトの当事者であるRAO東電力システム社のトルストグゾフ会長が計画を説明した。
また、サハリンの石炭産業や風力発電の現状、またサハリンと大陸を鉄道で結ぶ計画など、日本では情報が少ない分野のプレゼンが続き、100人を超える日本人参加者が耳を傾けた。
エネルギー分科会に参加していた関東の輸送会社役員は「間宮海峡を結ぶ鉄道敷設構想について具体的な話が聞けて大変参考になった」と感想を話した。
また、水産分科会に参加した商社勤務の桜井直哉さんは「サケ・マスのふ化施設を拡充する計画が具体的なデータをもとに説明されたのが印象的だった。地域発展にかけるサハリン州の本気度の高さを感じた」と述べた。
実はサハリン州は3年半前にも東京での投資説明会開催を計画していたものの、北方領土問題が原因となり、直前に中止になった経緯がある。その意味でも今回は満を持しての開催だったが、この間に起きた東日本大震災と原発事故は結果的に、エネルギー供給地としてのサハリンの存在感を高めることになった。
日本側でフォーラムを後援したロシアNIS貿易会によると、今回参加登録した日本人は280人強。これに訪日団を中心とするロシア人が100人以上加わった。
同貿易会業務部の原真澄次長は「ロシアの地方によるプレゼンがこれだけ多くの参加者を集めるのは珍しい。いまサハリンが注目されていることの表れでは」と指摘する。
ロシアで最も日本に近いサハリン州は、ビジネスでもより近しい存在になるか、目が離せない。
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