露医薬品市場で日本企業のシェアが拡大

昨年9月に工場が竣工、12月に製造許可を得て、現在、生産開始に向けての最後の手続きが進んでいる。=コメルサント紙撮影

昨年9月に工場が竣工、12月に製造許可を得て、現在、生産開始に向けての最後の手続きが進んでいる。=コメルサント紙撮影

2012年度にロシアの医薬品市場は14%成長した。現在のところ日本の製薬会社のシェアは2~3%だが、今後さらに拡大していく可能性がある。

 今年夏から、武田薬品のヤロスラブリ工場が稼動する。工場の着工は2010年で、当時の事業主はスイスの製薬大手ナイコメッド社だったが、2011年に武田が同社を買収していた。昨年9月に工場が竣工、12月に製造許可を得て、現在、生産開始に向けての最後の手続きが進んでいる。

 武田のロシア現地法人のグリゴリー・ソウスチン渉外部長によると、ヤロスラブリ工場は、固形製剤やアンプル製剤などの製造が可能で、2013年夏より、アンプル製剤の製造を始め、2014年の初めから本格生産に入る。

 生産品目は、武田の公式サイトによると、ロシアにおいてニーズが高い主力製品(Actovegin(脳・末梢循環障害改善剤)、Cardiomagnyl(心血管疾患予防剤)、Calcium tablets(骨粗鬆症治療剤))となる。

 生産能力は、アンプル製剤9,000万本、固形製剤20億錠以上(年間)だが、ソウスチン氏によると、必要が生じた場合、さらに生産量を増やせるという。

 

 ヤロスラブリの製薬クラスター 

 ヤロスラブリ工場建設の経緯について、ソウスチン氏はこう説明する。

 「最初は、ロシアのいくつかの地域が候補地にあがっていて、ヤロスラブリはそれらを絞り込んだショートリストに残りました。決め手になったのは、長期にわたって働ける優秀な労働力です。インフラと工場も、武田の要求に適うものでした。さらにヤロスラブリ州政府の協力も大きかったです」。ソウスチン氏によると、同州政府は最初から、投資呼び込みのために武田に支援を惜しまなかったという。

 実際、2009年以来同州では「製薬クラスター」が急速に形成されており、特別な地位を与えられている。すでに2つの製薬工場が建設済みで、さらに4つの建設が計画されている。

 昨年5月には、日本の製薬大手のMeiji Seikaファルマ社が、ヤロスラブリ州の「R-ファルム」社と協定を結んだ。R-ファルムはその2年前には、日本の「興和」、およびロシアの「タイシ・トレーディング」とパテントに関する協定に調印。これにより、ロシアはヤロスラブリの自社工場で、カリメート散粉剤(Kalimate)を製造することができる。また、今年4月には、R-ファルムは名古屋大学と協定を結ぶ意向だと報じられた。目的は、研究開発分野における両者の協力関係を拡大し、ヤロスラブリで生産される医薬品の種類を増やすことだという。

 

 「露医薬品市場は外国企業に有利」 

 外国の製薬会社のロシアビジネスは前途有望だ。昨年度の医薬品(完成品)の市場は、4051億ルーブル(約1兆3000億円)に達し、13,6%の伸びを示した。

 もっとも、国際金融ホールディングFIBO グループのアナリストであるアナトーリ・ボローニン氏は、露医薬品市場に問題があることを認める。市場には、まともな競争原理が働いておらず、近年値上がりが著しく、比較的安価な国産の優良な医薬品と粗悪品、ニセモノが混在し、消費者には見分けがつかない。

 「市場は、効果がはっきり証明されていない薬や何の効き目もないものが溢れ返っていますから、外国の製薬会社にはとても有利な状況です」。こうボローニン氏は指摘する。

 また全般的な値上がりもあって、ロシアの医薬品市場の構成には近年大きな変化が見られる。

 昨年12月の時点で、安い価格帯の医薬品(一箱50ルーブル=約160円以下)は、全体の8,3%まで下がり、“エコノミークラス“(一箱50~150ルーブル=約160~480円)も23,6%まで低下したが、その一方で、150~500ルーブル(約480~1600円)の価格帯は2,1%から46,4%にまで伸びた。500ルーブル(約1600円)以上の高価な薬も今や21,8%を占めるにいたった。

 ボローニン氏は、日本企業はこうした状況を考慮すべきだと言う。「“隙間”にうまく入り込むことが肝要です。明らかに購買者は、まともな品質と成分のためにはもっと金を払ってもいいと思っていますから」。

 

 世界の製薬大手が相次いで進出 

 この3~4年で、ロシアのバイオテクノロジーの分野への投資は、10億ユーロ(約1280億円)を超え、ロシアには世界の製薬大手が進出している。

 ドイツのバイエル社はカルーガ州に生産工場を建設済みで、スイスのノバルティス社はサンクトペテルブルクに工場を建設中、イスラエルのテヴァ製薬産業(TEVA)は、ヤロスラブリでプロジェクトを展開している。2020年までに、ロシアのバイオテクノロジー製品は、現在の33倍にまで増える予定だ。

 ソウスチン氏は、ロシアの医薬品市場は、世界で最も有望なものの一つだと言う。「これは、世界の製薬業界が、主な会議やフォーラムで、ロシアの、とりわけその政府の発言に大いに注目していることでも分かります。露製薬業界の発展のための戦略が数年前に採択されて、現在実行されています。とくに業界全体がGMP基準に移行し、ロシア製医薬品の品質を決めるようになることは重要です。そうやって露市場が一貫した方針に基づき調整、整理されていることは喜ばしいですね」。

 ソウスチン氏の見通しでは、今後数年、市場の調整者としての国家の役割と影響力が強まっていくとのこと。国は、大量の医薬品を買い上げるので、主な発注元の一つとなっている。

 「市場の“国家部門”が大いに透明になり、はっきりしたルールが確立されることは、我々、武田のロシア現地法人にとっても極めて大事です。我々は、もう事実上ロシアの生産者ですから」とソウスチン氏は強調した。