キリル・チェルカノフのプレゼンテーション =Greenfield project提供
投資家のためのツイッター
ヒップフローは投資家と新興企業が簡単に出会えるプラットフォームだ。このサイトでは新興企業が自社のページを作成し、企業イベント、パートナーとの商談、必要な投資、提携先探しなどに関する情報を掲載する。チェルカノフ君自身もこのサービスを投資家のためのツイッターと呼ぶが、ツイッターの場合はひんぱんに観察しなければならないところ、ヒップフローは読みやすい時系列表示にしながら、1ページの範囲内にまとめているため、手間がかからないのだという。
1.製品名:ヒップフロー(Hippflow)
2.サイト:Hippflow.com/startups/hippflow
3.製品紹介:新興企業が投資家に対し、プロジェクトの状態や達成事項などについて情報発信できるサービス。
4.セールスポイント :新興企業の投稿内容を、投資家が簡単に読んだり分析したりできるように、時系列に表示している。ヒップフローの参加者に数日間無料で作業場を提供し、モニタリングする用意がある。
5.会社設立:2012年11月
6.問い合わせ先: CEO Kirill Chekanov hello@hippflow.com
サイト作成の初期投資には、約1万ドル(約94万円)かかった。半年以上前から作成を始め、昨年11月にユーザー向けにオープンした。だが登録は全員ができたわけではない。「プロジェクトはベータ・テスト段階にあるため、多くの新興企業には待ったをかけている状態だ。試験的に利用したユーザーの声を反映して、次の段階に進みたい。現在はインキュベーターやコワーキングの人々と提携プログラムを作成することに集中している」。チェルカノフ君はロシアだけでなく、世界中の投資家と仕事をすることを目標としているため、サイトは現在完全に英語で運営されており、すでにアメリカ、カナダ、ポーランド、中国、シンガポールのパートナーがいるのだという。
超隙間情報
このアイデアは新しいものではない。投資家が新興企業を観察することのできるツールとして、「エンジェルリスト(Angellis)」というウェブサイトがすでに存在している。このサイトでは投資活動を観察したり、投資に魅力的な新しい会社の登場について知ったりすることができる。「スコルコボ(Skolkovo)」基金IT部門の教育・調査副責任者であるエカチェリーナ・ガイカ氏はこう考える。「実際に狭い”隙間”となっている。そして競争もすでに激しい。ロシアの『スタートアップ・アフィシャ(StartupAfisha)』、フィンランドの『スタートアップ・サウナ(StartupSauna)』、アメリカの『テック・クランチ(TechCrunch)』、ドイツの『ザ・ネクスト・ウェブ(The Next Web)』など、たくさんのウェブサイトがすでにあるし、このようなサービスはツイッター(Twitter)、フェイスブック(Facebook)、その他マスコミなどとも競争している」。
チェルカノフ君はこれに対し、ヒップフローは単なるニュース発信のサイトではなく、実際に投資家と新しい形で対話できることが他と違うと説明する。
それでもこの点について、ロシアの投資会社「ファスト・レーン・ベンチャーズ(Fast Lane Ventures)」の投資アナリストであるアンドレイ・クリコフ氏は、懐疑的だ。「ヒップフローは、それなりに保守的でパーソナライズされている、投資家向け広報活動(IR)に革新をもたらそうとしている。通常は企業が、内部書類、決算書、予算書、戦略書、主要業績管理指標書などを投資家に送っている」。このサイトは内部書類をコピーしているだけのため、必要性については疑問を感じるとクリコフ氏は話す。
個人投資家でビジネスマンのアレクセイ・ポズドニャコフ氏はこう説明する。「他人のアイデアに自分の資金を投じる人々にとって必要なのは、極めて詳細な情報だ。事業計画、おおよその回収期間、税負担、活動許可などだ。つまり、事業と具体的分野の市場の全体像だ。したがってこのサイトは可もなく不可もなく、現在は未熟で、情報があまりにも少なすぎる。それでも、投資家として、ヒップフローのような会社と仕事をすることには関心がある」。
将来の計画
チェルカノフ君によると、このサイトからはまだ利益を得られないという。サービスの現金化については、投資家と相談を始めたばかりだ。現在はヒップフローのパートナーとユーザーの数を増やす作業に集中することで、合意を得たという。チェルカノフ君は同時に、新たな投資を募ろうとしている。「現段階では約20万ドル(約1900万円)を集めているが、次の段階は発展段階であるため、それ以上必要となる。投資家を説得する必要はなく、ツールの必要性は理解していただいている。現在はロシアとヨーロッパの二つの財団と交渉中だ」。
このプロジェクトにはまだユーザー基盤も具体的なビジネス・モデルもないため、クリコフ氏によれば、ヒップフローの投資価値を評価するのは時期尚早だという。
それでもチェルカノフ君は、今年末までには事業を大きく拡大し、自身のサイトに100社以上の新興企業を集めようと考えている。また、大学受験に向けて準備する時間が足りないため、通信教育を受けることになると考えている。
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