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専門家はこのアプリによって、国民の医学の知識が高まることを期待する一方で、いかなるアプリも専門医の替わりにはなり得ないと警告する。
保健分野の新事業(スタートアップ)は、最近までロシアでそれほど注目されていなかった。市場が急成長したのは、健康の遠隔管理の需要が高まっていることが明らかになった昨年のことだ。
この流行はアメリカからロシアに伝わった。コンセプトは単純で、現代的な通信機器や新技術を、人間の健康に役立たせるというものだ。例えばスマートフォン向けのアプリなら、家庭の医学書をたくさん読んだり、インターネットで論文を読んだりすることなく、必要な情報が簡単にピンポイントで入手できる。
症状のチェックと応急措置から、病院、医師の口コミ情報まで
スタニスラーブ・コレスニチェンコ氏、 「メドクラブ」プロジェクト指導者 |
メドクラブは、デジタル健康分野の新事業に特化した、ロシアのビジネス・インキュベーター(創業孵化器)である「メドエックスポイント(Medxpoint)」の開発品だ。このプロジェクトの責任者であるスタニスラフ・コレスニチェンコ氏はこう説明する。
「ロシアでは、特に大都市で、人々が自分の健康に非常に気を使い始めている。医療関連キーワードの検索数は増えている。難しい医学用語の世界でユーザーの手助けをするため、ユーザーが素早く簡単に自分の問題を解決できるような、スマートフォン用のインタラクティブなアプリを開発した」。
このアプリの主な強みは、包括的なところだという。症状のチェック、病気の説明、緊急時に最初に行うべき推奨事項、医師のプロフィールが書かれた医療機関一覧、病院の連絡先などがある。そしてもう一つの強みは、病院や診断センターに行く前に、その機関や具体的な専門家についての口コミ情報を読むことができるところだ。
開発者はこのプロジェクトが成功していると言う。アプリストアでメドクラブが扱われるようになった1月22日から、2ヶ月間で1万6000回のダウンロードがあったという。「ロシアには類似のアプリがない。唯一似たソリューションは英語の「ウェブMD(WebMD)」だが、ロシアでローカライズされていないし、ロシアの病院のデータもない。メドクラブのユーザーからは続々と意見や感想が届いているが、ほとんどが肯定的なものだ」とコレスニチェンコ氏。
自己治療のリスクは?
こういったアプリを使うことで、ユーザーが自己治療をしてしまうリスクはないのか、という質問に対してはこう答えた。「医療相談や医療サービスは行っていない。このアプリはどんな医者にかかればいいのかを素早く知らせるのみで、厳密な診断は行っていない」。
モスクワ耳鼻咽喉研究・診療センターの上級研究員であるパーヴェル・スダレフ氏はこう考える。「メドクラブは事前診断をすることのできる非常に便利なアプリだ。病気や症状について質の高い説明がなされている。多くの病気の治療について、現代的に、わかりやすく書かれている」。国立や民間の医療機関の医師を検索できる点でも、開発者をほめたい」。
ただ、スダレフ氏によると、すべてのモスクワの専門家について、正しく書かれているわけではないという。また、このアプリの弱点として、ここで提供されるすべての情報が、あくまでも参考情報であるということを明確に通知していないところがあげられる。「いかなる医療アプリあるいはサイトも、本物の医師の診断に替わることはないということを、常に知らせる必要がある」とスダレフ氏。
あくまで一般向けの参考情報
モスクワ州立肺外結核治療センターの上級医師であるエヴゲニー・ペレツマナス氏は、メドクラブによって人々の医学の知識が根本的に高まる可能性があると考える。それでも、このようなインタラクティブなガイドの推奨事項が、具体的な行為の指南になってはいけないと考える。
「症状はたくさんの病気の可能性を秘めている。熱が上がったら、数十種類の病気の症状の可能性がある。そして一部の病気は、厳密な症状の精査によってのみ判明可能だ。これはすでに専門医の課題のレベルだ」。
またペレツマナス氏は、医師がこのようなアプリを診療に使ってしまう可能性にも懸念を示した。「メドクラブのようなアプリは、家庭の一次診断には向いているが、医師が使うようなことは絶対にあってはならない。医師に必要なのはまったく違うレベルのソリューションだ」。
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