「ロスネフチ」のイーゴリ・セチン社長(左)はベネズエラへの出張の時 =ロシア通信撮影
「ロスネフチ」のイーゴリ・セチン社長によると、同社はベネズエラのオリノコ川流域石油鉱区「カラボボ2」に、160億(約1兆5000億円)ドルを投じている。さらに「ロスネフチ」、「ガスプロム・ネフチ」、「ルコイル」、「TNK-BP」、「スルグトネフチガス」の5社がベネズエラで設立した企業連合「国家石油共同体(National Petroleum Consortium)」が、ベネズエラの石油鉱区「フニン6」に200億ドル(約1兆9000億円)を投じている。
露の内輪もめ
5~10年後の採掘を見込んで、外国企業が鉱床の調査、試掘のためだけに11億ドル(約1000億円)も支払うのは、世界の石油契約史でもまれなケースだ。だが「ロスネフチ」はこれを実行した。これ以外にも「ベネズエラ石油公団」に15億ドル(約1400億円)を返済期限5年で融資し、その見返りとして「カラボボ2」の開発権40%を受け取ることとなっている。
ロシアの石油会社がベネズエラに進出したのは2009年のことだ。最近までベネズエラ政権との主な交渉役になっていたのは、「ガスプロム・ネフチ」だったが、「ロスネフチ」が”反乱”を起こした。同社は「国家石油共同体」の「スルグトネフチガス」の権益比率20%を、60億ルーブル(約180億円)で獲得し、さらに「TNK-BP」と「ベネズエラ国営石油会社」の合弁会社「ペトロモナガス(Petromonagas)」の、「TNK-BP」の出資比率16.7%の獲得も進めている。このような動きにより、企業連合「国家石油共同体」で「ロスネフチ」が主導権を握った。
中国の場合
ところで、他にベネズエラの石油鉱区に積極投資を行っている二大国がある。”内輪もめ”で忙しいロシアを隅に追いやるのは、この二大国にとってさほど難しいことではない。
中国は2008年から、ベネズエラの経済に200億ドル(約1兆9000億円)を投資しており、すでに活発に石油採掘を行っている。中国の国営石油・天然ガス会社「中国石油天然気集団公司(CNPC)」と「ベネズエラ国営石油会社」の合弁会社「シノベンサ(Sinovensa)」は昨年末、共同プロジェクトで1日12万バレルを採掘していた。これは「フニン6」の採掘量の6倍だ。
米国の場合
アメリカがベネズエラ最大のパートナーであることはよく知られている。アメリカは昨年、「ベネズエラ石油公団」から1日98万4000バレルを調達し、ベネズエラを対米石油輸出国第5位に押し上げた。ベネズエラのラファエル・ラミレス石油相によると、同国がアメリカとの提携関係を維持するために、政府が市場価格より3~4ドル安くアメリカに石油を販売しているという。
ウゴ・チャベス大統領の5日の死去が、いかなる影響を国に及ぼすのかについては、現時点で予測するのが困難だ。政治の大混乱、軍事クーデター、内戦の発生は、ベネズエラに進出する石油会社にとって脅威に他ならない。政権が野党に渡る可能性もある。
不透明な今後
昨年行われた大統領選挙で、野党統一候補のエンリケ・カプリレス氏の得票率は44%だった。同氏は選挙運動の際、大統領選で勝利しても、ロシアとの石油契約は見直さないことを公表していた。だからといって、カプリレス氏が他の主要な国と関係改善を行わないというわけではない。その結果、ロシアの石油会社が後回しになる可能性だって度外視できないのだ。
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