日本とロシアの有識者が多岐の分野での協力の可能性をさぐる「日本・ロシアフォーラム」がロシア新聞社と毎日新聞社の共催で2月28日、東京で開かれた。=ヴィクトル・ワセニン撮影(ロシア新聞)
イシャエフ極東発展相(兼極東連邦管区大統領全権代表)は「ロシア・日本関係の将来展望」と題して講演した。
イシャエフ氏は、米国や欧州が経済危機にあえぐ中で、アジア太平洋地域が「世界経済の新しいセンターになりつつある」と指摘。ロシアにとってもこれまで「西向き」だったベクトルを「東向き」に変えていくことが重要になっていると述べた。
昨年9月にアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の舞台となったウラジオストクを筆頭に、ロシア極東を「アジア太平洋へのゲートウエー」「ロシア経済とアジア太平洋諸国とのコンタクトゾーン」にしていきたいというロシアの戦略を説明した。
このためロシアが極東地域に投資する企業に税制面などの優遇措置供与を検討しており、シベリア鉄道の近代化や北極海航路の開発など、アジアと欧州を結ぶ輸送路の整備に力を入れていることを報告した。
そのうえでロシアに対する貿易高や投資額で日本は中国や韓国に比べてまだ存在感が小さいと指摘し、さまざまなプロジェクトへの日本企業の積極的参加に期待を表明し、「次の日露首脳会談でこうしたことも議論されると思う。私たちはそれに向けてさまざまな情報をインプットしていきたい」と語った。
続いて森喜朗・元首相は「ロシアへの期待」と題し、2月21日に首相特使としてロシアを訪問、プーチン大統領と会談したことを中心に講演した。
森氏は「日露首脳の訪問が10年間ないのは許せないと思っていた。昨年3月、プーチン首相(当時)がマスコミとの会見で、私が(01年に)イルクーツクでプーチン氏と会談し、署名した声明が日露の交渉のスタートだと言われ、目が覚めた。安倍晋三首相訪露の地ならしをするのが私の役目と思った」と語った。
森氏がプーチン氏と会談するのは約10年間で16回目。プーチン氏について「一見冷たそうに見える方だが、話していると日本人によく似た心根を持っているのがよくわかる。私の方がほれこんでいるかもしれない」と明かした。続けて「(プーチン氏の方が)格ははるかに上でしょうが、弟のようにみえてきて『けがをしたとか病気をしたとかいうニュースが流れているが、大丈夫ですか』と背中をなでてやった。彼は『もうこんなに元気だ』と言っており、背中の感触はとてもやわらかく、若々しかった」と話した。
森氏は2月の会談の意義について「一番大事なことはプーチン氏に安倍首相をよく知ってもらうことだ」と語り、首相の父、晋太郎氏(故人)が外相当時、北方領土問題の解決に尽力していたことをプーチン氏に説明。「安倍首相は日露の問題をなんとしても自分で手がけ、解決したいという思いだ」と力説したことを明らかにした。
さらに、プーチン氏が語った領土問題の「引き分け」「勝ち負けなしの解決法」に関連して、首脳会談の前に両国の外務省で、双方が受け入れ可能な方法があるかどうかを議論するよう提案したことも明らかにした。
次いで、ワレリー・ソローキン・ロシア外務省アジア太平洋局副局長が「APECの成果と課題」について講演した。ソローキン氏は、昨年9月のAPEC首脳会議について「この地域でのロシアの存在感が高まった。今後、経済面での地域統合を推進していくことが大事だ」と期待感を示した。
この後、分科会に移行して討議を行った。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。