数千キロメートルも離れたアジア太平洋地域の国々までもが、北極に関心を示し、北極圏プロジェクトに参加しようとしている =ロシア通信撮影
中国の竜驤虎視
虎視眈々と狙っているのは中国だ。中国は地理的に北極圏から遠く離れているし、特に探査・採掘活動を北極圏で展開しているわけでもないが、北極評議会で常任オブザーバー(議決権を有しない会議参加国)への昇格を、もう何年も強く求めている。
北極評議会とは、北極圏に関連する政治的決定を行うための特別な会議だ。前身の北極圏環境保護戦略(AEPS)は1989年に設立され、当初は北極圏の環境保護対策を協議する場となっていた。だが時間の経過とともに活動範囲は広がり、現在は科学的調査、持続可能な開発の研究、緊急事態発生時の対応なども活動項目に加えられている。
現時点でこの評議会の加盟国となっているのは、北極圏に接しているアメリカ、カナダ、ノルウェー、スウェーデン、ロシア、デンマーク、フィンランド、アイスランドのみだ。他の国はオブザーバーとしての参加にとどまっており、アジア諸国は非常任オブザーバーにしかなっていない。中国も非常任オブザーバーだが、常任オブザーバーになりたがっている。ノルウェーはこれに反対していたが、評議会内の意見対立も最近は収まりつつあり、ノルウェーのエスペン・バット・エイデ外相は、中国の常任オブザーバーへの昇格を支持すると最近表明した。
中国以外に韓国、シンガポール、インドも北極評議会に常任オブザーバー昇格申請を行っており、非公式な情報によれば、日本も希望しているという。これらの国の申請が受理されるかどうかは、2013年5月の大臣会議で決まる。
なぜ北極なのか
アジア諸国が何よりも気にしているのは資源問題であると、専門家は考える。そのため、北極関連の企画ならどこでも参加する意向だ。
ロシアのFX投資会社「AForex」のアナリスト、ナレク・アヴァキャン氏は、資源を比較的低価格で販売する供給者がいないことが、このような状況の原因になっていると考える。
例えば日本は現在、石油輸出国機構(OPEC)から1000立法メートルあたり600ドル(約5万6000円)で、ガスを購入している。中国は今後5~6年で、石油・ガス使用量世界一(1日あたり1500万バレル)になると予測されているため、それをまかなう必要がある。
FX投資会社「アリパリ」分析部の主任アナリスト、ミハイル・クルィロフ氏は、今後10年以内に北極海の融氷によって、北海航路が生まれる可能性があると考える。これは遠回りなスエズ運河経由の南航路の代替航路になる。アジア地域の関心の要因はまずこれだ。
取り組むべき今後の課題
北極は”所有者”が決まっていない、地球でも数少ない場所のひとつだ。融氷の影響は、環境の変化やビジネスの活発化だけでなく、犯罪の増加ももたらすと複数の国が考えている。
ロシア連邦安全保障会議の副書記、エフゲニー・ルキヤノフ氏は最近、地球規模の気候変動により、北極の交通機関のアクセスがここ10年で向上したことを公式に発表した。それと同時に、船舶航行の増加により、禁輸品の輸出入、麻薬の運搬、不法移民、テロリストの移動、組織的犯罪グループの活動という新たな問題が生まれる可能性があるとルキヤノフ氏は指摘した。
一方で西側諸国は、他の問題について考えている。北極評議会の2013年議長国となるのはカナダだが、同国のレオナ・アグルカック北方経済開発庁大臣は、今後数年間の優先課題として、北方住人のための発展に集中することが必要だと述べた。責任ある資源採掘、船舶の安全航行、そして北極圏の住民共同体の保護が、優先課題としてあげられている。2013年5月の大臣会議で、総意によって最終的な優先課題が決まる。
*元原稿(露語)
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