ロシアンウオッチ

ロシア製「パリョート」腕時計 =タス通信撮影

ロシア製「パリョート」腕時計 =タス通信撮影

日本の腕時計ファンの間で、ロシアブランドが静かに浸透を続けている。仕掛けているのは、ロシア専門商社のアンドロス(東京都世田谷区)だ。2007年に本格的な輸入を始めてから取扱小売店をじわじわと開拓し、現在は東急ハンズなど有名店を含む全国約40店に納入している。

 同社が輸入するブランドは5つ。空軍のアクロバットチームにも採用されている「アビアートル」や、ユーリー・ガガーリンが1961年の宇宙飛行時に装着していたことで注目を浴びた「シュトゥルマンスキー」、現在EU圏にも販路を広げる「ボストーク・ヨーロッパ」のほか、「ブーラン」「デニソフ」だ。

 ロシアンウオッチは日本ではなじみが薄いが、その歴史は帝政時代にさかのぼる。

 アンドロスの安藤治哉社長(35)によれば、製造体制が整ったのはソ連誕生後、スターリンの5カ年計画でモスクワに大規模な時計工業が整備されてからという。前述の5ブランドも、当時の第1工場、第2工場からの流れをくむものだ。

 その後1990年代に入ってソ連が消滅。工場が民営化される過程で一時的に粗悪品が出回り、国際的にイメージを落とした時もあった。今は「日本産と比べても遜色ない品質。当社は輸入すると全品を点検するが、ここ数年は不良品はほぼゼロです」(安藤氏)。

 アンドロスが輸入を始めた当初、日本の時計マーケットにロシアブランドはほとんど流通しておらず、小売店にアピールしても、なかなか取り合ってもらえなかったという。だがロシア独特のデザイン、雰囲気が時計ファンに響き始め、取扱店は1店、また1店と少しずつ増えていった。

 腕時計1本の中心価格帯は5万~10万円。主に30代以上の男性が固定ファンとなり、コレクターになる人も増えてきた。

 安藤氏は、都内の高校を卒業後、ロシアの大学に進学し、20代半ばまでモスクワで暮らした経歴を持つ。

 今のビジネス展開に至るきっかけは、高校時代、研修旅行先だったウラジオストクで見かけた腕時計だったという。ベルトに宇宙飛行士ガガーリンが描かれており、文字盤には戦車のデザイン。日本では想像できないセンスに衝撃を受けた。

 10年近く過ぎて日本で会社を起こした安藤氏は、モスクワの時計メーカーの社長を訪ね「日本総代理店になりたい」と直談判した。

 その後5年がかりで輸入を実現。販売が始まってからは日本の消費者事情を伝えたり、品質向上のためのさまざまな提案をしたりして、各社と信頼関係を結んでいる。

 日本の時計ファン向けに自社運営のインターネット通信販売も手がけるが、値段の張る商品だけに、店舗での販売が中心だ。当面は、卸先の小売店を100店に広げることを目標に掲げている

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