「追いつけから追い越せへ」

=セルゲイ・ミヘエフ/ロッシスカヤ・ガゼタ紙撮影

=セルゲイ・ミヘエフ/ロッシスカヤ・ガゼタ紙撮影

昨年、ロシア政府は、東方シフトという国の発展の新たなベクトルを提示した。ウラジオストクでアジア太平洋経済協力(APEC)サミットが開催され、極東開発省が創設され、再編計画が起草された。極東開発担当大臣兼極東連邦管区大統領全権代表ヴィクトル・イシャーエフ氏は、ロシアNOWへのインタビューで、実現されたプロジェクト、現代化のプラン、投資家にとっての可能性などについて語った。

―極東には特別の配慮が必要であると常々仰っていますが、それはすでに達成されたのでしょうか? 

そう言えますね。まず第一に予算の増加にそれが感じられます。2000年代初頭には13の連邦構成主体に3500万ドル(約32億円)が支出されていたにすぎませんが、昨年は国家プログラムに基づいて23億ドル(約2130億円)が当地方に割り当てられました。

半年前に極東開発省が創設され、目下、追いつくメカニズムから追い越すメカニズムへと、地域を変えるための新たな国家プログラムや法案を作成する作業が進められています。現在、極東の経済活動は国内の平均を上回り、2011年の地域内総生産は国内の平均が13700ドル(約127万円)だったのに対して当地方のそれは17500ドル(約162万円)でした。危機の際にも当地方ではさほど低迷が見られませんでした。

他方、極東は原料に依存しており、輸出の90%は化石燃料です。こうした現状は変えなくてはならず、たとえば、サハリンのように液化天然ガス工場を建設して製品を日本や韓国へ輸出することが必要です。

―外国のパートナーの関心のほどは? 

部門や国によりますね。たとえば、日本はガスを必要としており、会社Sodeco(サハリン石油ガス開発)は、サハリンの液化天然ガス工場に投資して30%の株式を所有しています。ロスネフチやインドとアメリカの会社も株主になり、2009年には同企業への投資の総額は26億ドル(約2400億円)となりました。現在、日本は、ヤクーチア(サハ共和国)やイルクーツクの産地に関心を示しています。ウラジオストクにもう一つ工場が建設されることになれば、参加を検討するものと思います。

中国のほうがもっと厳しい姿勢ですね。何としても極東の生物資源を手に入れるという明確な課題があり、まだ捕獲されていない魚を一定の価格で買い占めています。そして、魚は自国で加工して雇用を創出しています。中国は、東北部を急速に発展する地域に変えるためのプログラムを実現しているのです。最近の胡錦濤氏との会談でプーチン氏は生産をロシアへ移す問題を提起しましたが、今のところ中国は自国の路線を堅持しています。

 今後、韓国へ至るガスパイプラインの建設が始まります。それは北朝鮮を経由するもので、北朝鮮はトランジット料としておよそ1億ドル(約93億円)を受け取ります。ただ、これは三者協定ではありません。韓国はボリショイ・カーメニの造船所『ズヴェズダ』の現代化に参加し、そこにはガスタンカーやプラットフォームといった新しいクラスの船舶を組み立てる乾ドックが建造されます。とはいえ、外国投資は今のところ微々たる額で、稀な例外を除いて原料部門に限られています。

―原料や造船のほかに極東ではどういった部門を発展させる計画ですか? 

まず第一に、輸送インフラを創出してコンテナ輸送を発展させなくてはなりません。そのためにはシベリア横断鉄道の現代化や第二バム鉄道の建設が必要で、その路線だけで貨物輸送量は年間1億8000万トンに達します。

第二に、日本や中国といった巨大な市場が近くにありますから、食糧クラスターを主な柱の一つにすることができます。極東は魚ばかりでなく土地も豊富で、極東連邦管区はロシアの国土の36,1%を占めています。ただ土地を外国人にレンタルするのではなく、自ら開発して包装企業を開設しなくてはなりません。木材を上質のパルプにまで加工する工場の建設も必要です。

昨年、マツダはロシアに最初の組み立て工場を開設しましたが、これが地域の自動車クラスター化につながるとは思えません。物流の経費がかさむため、車の生産はサンクトペテルブルグより当地方の方が割高です。

―地域に投資を誘致して企業の建設を開始するためにどんなことが行われていますか? 

さまざまな国の経験から、私たちは、何よりもまずビジネスを立ち上げるまでの時間を最適化する必要があることを学びました。今のところ工場用地の割り当てに2~3年を要していますが、すべての手続きを半年以内に完了させるべきです。こうしたことや私たちが作成した法案で見込まれている税の優遇のほか、包括的な提案を準備しています。しかも、個々の具体的プロジェクトごとに個別の対話が行われることになります。

日本はエリガ炭田に関心があり、私たちも異論はありませんが、たとえば道路の建設といったインフラ整備と抱き合わせという条件つきです。私たちは互恵的な協力を期待しているのです。ちなみに、まさに共同作業と関係強化について話し合う建設的対話継続のために私は、日露フォーラムに参加します(*今年2月28日東京で、ロッシースカヤ・ガゼータ(ロシア新聞)と毎日新聞の主催で「日本・ロシアフォーラム」が開催される――編集部)。

協力していくうえで肝心なのは何よりも信頼です。信頼できないプロジェクトや地域あるいは国に投資しようという人はいません。フォーラムにおける私たちの課題は極東をオープンにしてその可能性を紹介することです。日本はロシアに投資する用意があります。私たちはそうした投資は可能であり有利であることをパートナーに確信していただきたいと思っています。

―地域への外国および国内の投資のバランスは最適でしょうか? 

現在、およそ33億ドル(約3055億円)を国家が支出し、その5倍を投資家が投資しています。そのうち外国の投資家は10%にすぎず、残りはロシアあるいはオフショアで登録されているロシアの投資家です。極東発展プログラムにはその2倍の額が必要となります。

―ロシアの投資環境のイメージは、潜在的パートナーの起業意欲に水を差しませんか? 

ロシアが直面する問題は周知の事実で、この国には汚職が蔓延し、極東も例外ではありません。ですから、それを取り締まり克服しなくてはなりません。こうした現状を説明することも日露フォーラムの課題です。

―「中国脅威論」を信じていますか? 

世界銀行、国際通貨基金(IMF)、アメリカ中央情報局(CIA)の評価によれば、2025年までに、中国の人口は15億、インドの人口は16億になりますが、世界が「インドの脅威」を口にしはじめると思いますか?

―インドには極東におけるプロジェクトはありますか?

今のところ石油ガス部門のみです。たとえば、インドの会社ONGC Videsh Ltd.の「サハリン-1」における出資率は20%です。ほかのプロジェクトもあります。将来は医薬品の供給の面でも協力したいですね。

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