韓国のインスタントラーメン「ドシラク」

写真提供: jonno101101 /flickr.com

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韓国のインスタントラーメン「ドシラク」は、すでに四半世紀ロシア市場に出回っている。貧しい人々の食べ物というイメージはあるものの、ホワイトカラーを含む、さまざまな人々に人気が高いのが実情だ。

「神様、インスタントラーメンをつくってくれてありがとう」と歓喜の声をあげたのは、お腹をすかせたリアリティ・ショーの参加者だ。数年前にロシアのテレビで放送され、大きな成功を収めたこの人気番組では、無人島でサバイバル生活を送るというシナリオにしたがって、複数のタレントが、長期間米や魚、島の珍しい動植物を食べて過ごした。

ロシアの栄養士はインスタントラーメンに否定的な見方をするのが決まりだが、旅行者、ダーチャ(別荘)滞在者、学生、建設労働者、事務員などが、これを毎日のメニューのひとつにのしあげた。

ロシアで群を抜く知名度 

ロシアの食品市場のインスタントラーメン部門で、古参のひとつに数えられるのが、韓国ヤクルト株式会社の「ドシラク」ラーメンだ。今年はロシアでの販売25周年にあたる。ロシア市場でこのような知名度を誇るのは、他にペプシ・コーラやマーズ(チョコレート・バー)ぐらいだろう。

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ロシアで一番人気のインスタントラーメンの味

最初に「ドシラク」をロシアに持ち込んだのは、アジアに日用消費財を調達しに行っていた、いわゆる「担ぎ屋」だ。いかなる事業活動も禁止され、違反すれば懲役刑に処されたソ連時代を生きたロシア人は、ソ連崩壊後の「担ぎ屋」ビジネスの繁栄期に、積極的に”ビジネスマン”になり、アジアの大量消費財を国内各都市の闇市の露店に運んで資金を増やそうとしていた。

90年代に地位を確立 

「ドシラク」がロシア市場で定着した1990年代半ばは、経済が完全に混乱していた時代だ。社会主義から脱却したロシアは、急激にインフレが進む状態に陥り、国民の大半があらゆる手段で生き延びようとしていた。格安商品の需要は高く、それでいてそこそこ質が高ければ、瞬時にロシアの消費者の心を鷲づかみにしたものだ。その上、当時は輸入品なら何でも贅沢品と考えられていて、安いインスタントラーメンまでもがごちそうとされていた時代まであった。

多くの貧しいロシア人にとって、このラーメンは救世主だったのだ。

「ドシラク」は他のインスタントラーメンよりも若干値段が高いが(10~20%)、質の良さや使いやすいパッケージで勝利した。市場は数年間、年70%の伸びを示していた。

住宅ローンを払いつつドシラク 

2012年初めに行われた世論調査で、モスクワっ子全員が一度でもインスタント食品を食べたことがあり、うち大人の40%が定期的に食べていると回答したことを、レシピサイト「ケデム」が伝えている。インスタント食品を食べる理由として、おいしさが32%、食べやすさと安い価格がそれぞれ25%だった。またホワイトカラーの多くが、時間がないことやコースランチにかけるお金がないことを理由に、職場で昼食を取るようになっていることも判明した。高い給与を受け取っていても、住宅ローンの支払いに多くを吸い取られていることがある。ロシアでは住宅ローンの金利が年10%以上であるため、ホワイトカラーは給与のほとんどをローンにまわさなければならず、残ったお金で昼食のことを考えなければいけない。

ロシア国内に複数の生産拠点 

インスタントラーメンを買う人の42%は職場で食べ、男性が女性よりもひんぱんに食べ、買う人の41%は家でも食べていることが、RBC.reserachの調査で示されている。約9%は、料理をするのが嫌いだから、インスタントラーメンを食べると答えている。もっとも人気のある風味が「チキン」で、全体の67%がこれを選び、「ビーフ」、「キノコ」、「ベーコン」は3分の1ほどの人が好きだと答えている。

「ドシラク」のロシア市場での成功は、ロシアの複数の地域に生産拠点を建設したことで、確固たるものになったという側面もある。この会社は、2004年からロシア国内の生産に1800万ドル(約16億円)を投じていたが、需要が非常に高かったため、2007年にシベリアの科学技術都市であるノボシビルスク市に新たな工場を建設し、2008年にはモスクワから約200キロの場所に土地を購入し、有限責任会社「ドシラク・リャザン」を創設して、1日1万食を出荷するほどになった。この新たな投資額は2500万ドル(約13億円)だった。

インスタントラーメンは不滅です 

現在ロシアのインスタントラーメン市場は安定したと言える。2011年の成長率はわずか3.5%だった。より人気のあるブランドは、韓国ヤクルトとロシアのマレヴェン・フード・セントラル(Mareven Food Central)のグループ会社DHV-Sのラーメンだ。ロシアのインスタント食品は、主に中・低価格帯で販売されている。その価格の低さから、インスタントラーメンは質が悪くて環境に悪い食品というイメージができあがってしまっていたが、近年メーカーは中身だけでなく、ビニール包装からリサイクル可能なプラスチックや紙の箱に変えるなど、パッケージの改良にも力を入れている。

とはいえ、ロシアの食品市場は徐々に変化してきている。ここ5年で「ドシラク」や類似品には、伝統的なロシア料理である、肉やカッテージチーズの入ったクレープやチェブレク(羊肉入り大型ピロシキ)などの、調理冷凍食品という新たなライバルが現れ、その勢いを増している。この冷凍技術は、栄養も保存することができる。調理冷凍食品の主な購入者は、調理時間を短くしたい女性だ。

食品小売チェーンで働いているイワン・スミルノフ氏は、このような新しい食品の具体的な影響は限定的だと話す。調理冷凍食品は、少なくとも旅行者や貧しい人々にとって、ラーメンに取って代わるものではない。