自国開催のW杯でも輝けないのか

ロシアのサッカー応援者=

ロシアのサッカー応援者=

ウラジーミル・ペスニャ撮影/ロシア通信
 サッカー・ロシア代表は先月フランスで開催された欧州選手権「EURO2016」で面目丸つぶれになってしまった。2年後には自国開催のワールドカップであるが、変化は期待できない。そこには客観的な理由がある。

安易な解決策は人を魅するが・・・

 EUROでの代表チームの無残な敗退ぶりに世間は嵐のようなブーイングを浴びせたが、にも関わらず、事態改善を目指した組織的取り組みは何らなされなかった。敗因について、ムトコ・スポーツ相は「総じて選手のレベルが低いため」と語り、解任されたスルツキー監督は「戦術的な誤算と、有力選手の故障のため」と話す。

 しかし世間の注目を集めたのはサッカーそれ自体をめぐる議論ではなく、アレクサンドル・ココリン及びパヴェル・ママエフ両選手の「不適切な」行動であった。両選手は大会後、モンテ・カルロのとあるクラブで、25万ユーロのシャンパン・パーティを開いた。「サッカー長者」の私生活を垣間見させるスキャンダラスなビデオがネット上に出回り、「犯人」を見つけて「単純にして明快な処置を施」せ、との世論を掻き立てた。

パヴェル・ママエフ=ヴィターリイ・ベロウソフ撮影/ロシア通信パヴェル・ママエフ=ヴィターリイ・ベロウソフ撮影/ロシア通信

 そうした「単純な処置」の一例となったのが、ロシア代表チームの解散を求めるオンライン署名運動だ。これには100万筆に迫る署名が集まった。しかし、この「魂の叫び」は、基本的に、現実的な効果を持つものではなかった。大きな大会の後には代表チームは解散され、のち新たな監督のもとで新たに招集されるのが常である。

 また別の「単純」な、そしてやはり現実性のない方策が、今度はお役人から提案された。ロシアサッカー連盟のアナトーリー・ヴォロビヨフ事務総長がぶち上げたその構想とは、代表選手全員をロシアのひとつのクラブに集め、そこで2年間プレイさせてレベルの向上を図る、というものである。

 

「外人部隊」の人数制限

 制限措置によって一朝一夕に結果を上げようとする。これがロシアのお役人のいつものやり方だ。ロシアの国内リーグでは2006年以降、クラブに在籍できる外国人選手の数に上限が課せられている。役人の胸算用では、これでロシア人選手が自らの才能を開花させ、国内のトップクラブへのレギュラー定着が進むはずだった。

 しかし、10年にわたる制限措置で、レベルの高いロシア人選手の数が増えることはなかった。かわりに、抑制された競争の中で「商品が不足」し、ロシア国籍をもつプレイヤーの年棒が急増することになった。

 

少年サッカー・地域サッカーの破綻

 しかし、制限措置によってスポイルされたひと握りの金持ち選手の無気力・無関心よりも深いところにある、ロシアにおける「サッカー・クライシス」の真の原因は、プロとアマのレベルがかけ離れていることにある。

ロシア代表チームのゴールキーパー、イゴリ・アキンフェエフ=ヴィターリイ・ベロウソフ撮影/ロシア通信ロシア代表チームのゴールキーパー、イゴリ・アキンフェエフ=ヴィターリイ・ベロウソフ撮影/ロシア通信

 FIFAの根本原則のひとつである「サッカーのピラミッド」が、ロシアではほとんど崩壊しているのである。ロシア・プレミアリーグを構成する16チームは国営企業や地方政府をスポンサーに持ち、リーグ全体として資金はかなり潤沢なのだが、これに続くものが何もない。2016-17のシーズン、ロシアで行なわれる3つのディヴィジョンで、プロチームの試合は史上最も少ない94試合しか行なわれない。シベリア・極東に至っては、わずか12試合だ。観客動員数も惨憺たるもので、トップディヴィジョンであるプレミアリーグでさえ、2016-17シーズンは1試合あたり平均1万1046人。参考までに、ドイツのブンデスリーガは4万3300人、イングランドのプレミアリーグは3万6452人である。

 ロシアのプロサッカーはいよいよエリート主義的になってきており、地方出身の才能が入り込む余地がなくなってきている。大クラブの養成所(若い選手がプロとしてのキャリアをたどるチャンスはほとんどそこでしか得られない)に入ることができるのは富裕な家庭の子供のみ。地方のクラブにはもうほとんど少年部門が残っていない。監督・コーチも同様だ。薄給をいとわない好事家しかいないのが実状である。

 

2018年のW杯、ロシア代表に残された僅かな希望とは?

 

監督

 新たな代表監督として最有力なのは、元ロシア代表ゴールキーパー、スタニスラフ・チェルチェソフ氏だ。同氏は選手を厳しく鍛えることで知られる。ロシアでは多くの人がこれを肯定的に評価している。ロシア人選手は(アメと鞭のうち)鞭でしつけないと分からない、というのが世間の声だ。元GKはその肩に、欧州における成功に満ちた監督経験をも積んでいる。昨シーズンはレギア・ワルシャワをポーランド杯優勝に導いた。来るW杯では、節くれだった手と監督としての才能を併せ持つ、このチェルチェソフ氏こそが、短期的な、しかしサポーターを満足させる成果を生むかもしれない。

新たな代表監督として最有力なのは、元ロシア代表ゴールキーパー、スタニスラフ・チェルチェソフ氏=アレクセイ・ヴィトヴィツキイ/ロシア通信新たな代表監督として最有力なのは、元ロシア代表ゴールキーパー、スタニスラフ・チェルチェソフ氏=アレクセイ・ヴィトヴィツキイ/ロシア通信

 

偶然

 たとえロシアのサッカー界に地殻変動が起きなかったとしても、幸運な偶然が重なるという、ただそれだけのことで、ロシア代表が悪くない結果を残すということはあり得る。平均して1試合に1-2点しか入らないサッカーという競技は、あまりにも多くのことが偶然に依存する。加えて、ホームの観客席からの声援は、時に奇跡を呼ぶものだ。

 しかも、ロシアチームは非常に有利な条件で大会をスタートする。開催国特権で予選が免除されており、抽選では1番の位置につけられ、グループリーグは相対的に弱いチームと当たることになる。

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