リプニツカヤはスランプ?

アレクサンドル・ビルフ撮影/ロシア通信

アレクサンドル・ビルフ撮影/ロシア通信

ジュニアたちの見事なデビュー、ユリア・リプニツカヤの不振、目が離せないペアなど、今年のグランプリシリーズを振り返ってみた。

 五輪後のグランプリシリーズは、今後の世界のフィギュアスケート界を占う意味で、注目度がとりわけ高い。名を馳せたチャンピオンたちの多くは、大舞台を去り、優勝に憧れる若手たちが、スケートアメリカ、スケートカナダ、NHK杯、その他のグランプリシリーズの大会にエントリーする。今季のグランプリシリーズも、例外ではなかった。新星の登場やサプライズといった話題には事欠かず、バルセロナでのグランプリファイナル閉幕後にはあれこれの展望が語られた。

 

若い芽

 専門家らは、ジュニアの女子シングルのロシア勢に注目している。14歳のセラフィーマ・サハノヴィチと15歳のエヴゲニヤ・メドヴェジェワは、バルセロナで天晴れな演技を見せて、会場を沸かせ観客を唸らせた。

 どちらも、大人顔負けのエレメントと堂々たるスケーティングで際立っている。セカンドジャンプのトリプルトゥーループを含めたコンビネーションをFSのおしまい(力が尽きかけているとき)にもってくるかと想えば、華やかなジャンプのテクニックに豊かな音楽性や表現力を絡めてくる。なんでも、二人とも、幼少期からスケートのエレメントと同じくらい舞踊に取り組んできたという。

 ファイナルに出場した四人のロシア勢、すなわち、15歳のエレーナ・ラジオノワ、16歳のアンナ・ポゴリラヤとユリア・リプニツカヤ、そして、12月17日で18歳になるリーザ・トゥクタムィシェワ(来るロシア選手権は通算8度目となるので彼女をヴェテランと見る向きも多い)についても、同じことが言える。

 

どうした、リプニツカヤ 

 バルセロナで、ユリア・リプニツカヤは、ミスを重ねて、最下位は免れたものの五位に沈んだ。1月には難なくこなせていた技が、今は大きな壁となっている。

 これまで4人のオリンピック・チャンピオン(アントン・シハルリゼ、マクシム・トラニコフ、クセニア・ストルボワ、フョードル・クリモフ)を育ててきたロシアのコーチ、ニコライ・ヴェリコフ氏は、性急に評価を下すべきではないとして、こう語る。

 「第一に、ユリアは、移行期に入っています。第二に、このところいろんなことが重なっていました。まだ子供なんですから、温かく見守ってあげなくては。私はユリアのことがとても心配です…。人生の『振り子の原則』が働きはじめたのは確かですね。オリンピックシーズンにはすべてがよい方へ振れていたのが、今は逆になっています。ユリアが苦しいのはもっともなこと。今は耐えなくてはなりません。みんなが。ファンも、コーチも、ユリアにメダルを期待している幹部たちも。プレッシャーをかけずに手を差し伸べることです」

 そんな移行期にはどう対処すべきかの手本をバルセロナで示したのが、エリザヴェータ・トゥクタムィシェワだった。彼女は、昨シーズン、同じようなスランプに泣いて、引退すら囁かれたが、12月になると、グランプリファイナルの表彰台の最上段に立っていた。

 長年リーザを指導してきたアレクセイ・ミーシン・コーチは、こう語る。 

 「2014年の初めには、徒労に終わるだけだから彼女の指導などやめてしまえ、と私に言わない人はいませんでしたが、私には、教え子を途中で見捨てることなどできません…。べつにヒロイズムでも何でもないんですが…。事実上すべての世界最強の女子選手に勝ってきたフィギュアスケーターにできないはずはありません」

 1996年のペアの世界チャンピオンであるアンドレイ・ブシコフ氏は、トゥクタムィシェワの演技をコメントして、こう語る。「あの子が優勝できてミーシン・コーチも感無量でしょう。二人ともよくやりました。気を取り直し、テクニックをキープし、衣装は不要な部分をみんな隠し、プログラムも最高、まさに脱帽です!」 

 

目が離せないペア 

 ペアでは、ともに29歳でそろそろ引退してもおかしくないカナダのメーガン・デュアメル&エリック・ラドフォード組が、大方の予想に反して優勝した。このペアは、世界選手権の銅メダルが最高の成績でそれを上回ることはできないと見られていたが、バルセロナで大輪の花を咲かせた。二人は、ロシアのオリンピック・チャンピオンであるクセニア・ストルボワ&フョードル・クリモフ組(こちらのほうがずっと若い)をエレメントの評価で上回った。ちなみに、彼らがFSで成功させた完璧な四回転スローサルコウは、クセニア・ストルボワ&フョードル・クリモフ組もまだマスターしていない。

 二度のオリンピック・チャンピオンであるタチヤナ・ヴォロソジャル&マクシム・トラニコフ組がまもなくリンクに戻ってくれば、ペア同士の争いはますます白熱することが予想される。なお、ジュニアのグランプリファイナルでは、カナダのペアがロシアのペアに大差をつけて優勝しており、2018年のオリンピックの団体戦の行方は、まさに混沌としてきた。