舞踏会のあとで

エレーナ・ベレズナヤ / アントン・シハルリドゼ組 // ユーリー・ベリンスキー/タス通信

エレーナ・ベレズナヤ / アントン・シハルリドゼ組 // ユーリー・ベリンスキー/タス通信

チャンピオンの次の行き先はどこだろうか。多くの競技において、行き先を決めるのは簡単ではない。フィギュアスケーターはこの点で恵まれている。世界にはさまざまなアイス・ショーがあるし、習うことを希望する人もたくさんいる。

 ロシアでフィギュアスケートは国民的なスポーツだ。多くの親が毎年秋になると、自分の子供を連れてフィギュア学校の登録に行く。つまり、コーチの仕事も人気がある。一流フィギュアスケーターにとって一般的なのは、数年間ショーに出演して、その後ずっとコーチ生活を続けること。ただ、五輪の金メダリストの頭の中をある法則がよぎることがある。それは偉大な選手は偉大なトレーナーにはなれないということ。 


氷上から政界へ

下院議員のロドニナ氏 // 

ウラジーミル・フェドレンコ/ロシア通信

 フィギュアスケート・ペアで3度五輪金メダリストになっているイリーナ・ロドニナは、長期間コーチングを試してみたが、大きな成果をだせなかった。結局政治家に転身し、現在は「統一ロシア」党の下院(国家会議)議員を務めている。同じくペアで、2002年五輪で金メダルを獲得しているアントン・シハルリドゼは、向いていないコーチの仕事を選ばなかった。氷上でキャリアを終え、そのまま政界に進んだ。ロドニナと同様、統一ロシア党の党員として、2012年まで下院議員を務めていた。

 シハルリドゼとパートナーを組んでいたエレーナ・ベレズナヤは「公正ロシア」党を選び、現在はスタヴロポリ地方の議会議員になっている。ベレズナヤはその傍ら、自らが昔学んだタマーラ・モスクヴィナ・コーチのアシスタントとしてコーチもしており、サンクトペテルブルクの児童氷劇場の指揮をとっている。

 公正ロシア党には、五輪フィギュアスケート男子シングル金メダリストのエフゲニー・プルシェンコも入党したことがある。プルシェンコは2007年、サンクトペテルブルク市の市議会議員選挙に出馬して当選。しかしながら政治には合わず、2011年に党から離脱した。 


新しいチャンピオンを育てる

 コーチの仕事はそれでも、多くの元スケーターを惹きつけている。長野五輪の金メダリストであるペアのオクサーナ・カザコワアルトゥール・ドミトリエフもそうだ。ただしカザコワは、まだ大活躍にはいたっていない。モスクヴィナ・コーチおよびアレクセイ・ウルマノフ・コーチのアシスタントを長く務めたものの、自立したコーチにはなっていない。ドミトリエフの方はすでに、有望な若いペアを複数教えている。

 伝説的なペア、セルゲイ・グリニコフとエカチェリーナ・ゴルデエワも、コーチになっている。ゴルデエワは最近まで、アメリカの「スターズ・オン・アイス」ショーに出演していたが、2年前に夫で長野五輪チャンピオンのイリヤ・クリクと、カリフォルニア州レイク・フォレストで「クリクス・スケーティング」学校を開校した。

ウルマノフ・コーチ //

マクシム・ボゴドビド/ロシア通信

 男子シングルの元選手で、リレハンメル五輪の金メダリストであるアレクセイ・ウルマノフは、この世代でもっとも成功しているコーチだろう。最初にアイスショーを主催していたものの、試験プロジェクトがうまくいかなかったため、コーチに転身。才能豊かな男子シングルの選手、セルゲイ・ヴォロノフ(2014年ヨーロッパ選手権銀メダリスト)を育てた。ヴォロノフはジュニアで引退を考えていたが、ウルマノフのもとで成長した。

 ただヴォロノフは2010年の世界選手権の結果が思わしくなかったことから、その後コーチを変えている。その後もウルマノフの元を去る選手が何人か出てきた。ウルマノフは今年、タチヤナ・ボロソジャル、マクシム・トラニコフとともに、ソチにスケート学校を開校。新しい道を進む決心をしたようだ。 


テレビのスター

プーチン大統領役を演じているヤグディン氏 // ピョートル・チェルノフ/ロシア通信

 最近まで現役だった一流選手の中には、アイスショーと他の創作プロジェクトを掛け持ちしている選手もいる。ソルトレイクシティ五輪の金メダリスト、アレクセイ・ヤグディン2008年、モスクワ風刺劇場で上演された演劇「大統領の休暇」に出演。俳優としてウラジーミル・プーチン大統領の役を演じた。これがうまくいったため、その後も舞台への出演を続けている。ヤグディンはまた、フィギュアスケートに関する人気テレビ・ドラマ「熱い氷」や、映画、ドラマにも出演した。現在は、テレビ・アイスショー「氷河期」にも出演。このショーでは、元スケーターが、フィギュアとは無関係な映画、テレビ、スポーツのスターとペアでフィギュアスケートをしている。

 「熱い氷」には、アレクセイ・チホノフ(マリヤ・ペトロワとペアで世界選手権、欧州選手権で優勝)も出演している。チホノフも映画や演劇に出演しており、自身が役を演じた演劇「普通じゃない」には、「氷河期」のパートナーを務めた、女優で司会者のエカチェリーナ・ストリジェノワを招待した。

「氷河期」で出演しているスルツカヤ氏とヤグディン氏 // PhotoXPress 撮影

 女子の世界チャンピオンであるイリーナ・スルツカヤも、映画、演劇に出演し、また「氷河期」やスポーツ番組の司会を務めている。2011年には全ロシア・スポーツ・ジャーナリズム大会「勝利のエネルギー」で、「新職業好スタート」賞を受賞した。  


氷上の振付師 

イリヤ・アベルブフとユリヤ・リプニツカヤ //

パヴェル・スメルチン/タス通信

 「氷河期」について話す時に忘れてはいけない人物がいる。それは2002年ソルトレイクシティ冬季五輪アイスダンスの銀メダリスト、イリヤ・アベルブフ。このプロジェクトのプロデューサーだ。アベルブフはこれ以外にも、「氷上のウィンクス」、「街の灯」、「モロスコ」、「少年とカールソン」、「宝島の秘密」、「ママ」、「4人のハート」などの氷上演劇をロシア全土で上演している。出演者は一流スポーツ選手ばかり。オクサーナ・ドムニナとマクシム・シャバリン、マリヤ・ペトロワとアレクセイ・チホノフ、オリンピック金メダリストのロマン・コストマロフ、タチヤナ・トチミャニナとマクシム・マリニンなど。

 アベルブフは現役選手とも仕事をしている。女子シングルのユリヤ・リプニツカヤ向けに、五輪プログラムも作成した。物議をかもした「シンドラーのリスト」は、リプニツカヤの代表的なプログラムになった。アベルブフはこれからも、世間を驚かせていくだろう。 


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