まずは決勝トーナメント進出を

タス通信

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ロシア代表がW杯の予選を突破し本大会に出場するのは実に12年ぶりだ。優勝候補でこそないが、良い成績は十分期待できる。ファンも関係者も一番頼りにしているのは、選手たちではなく、チームを率いる名将ファビオ・カペッロだ。

さまよえるオランダ人とイタリアの“独裁者” 

 ロシア人の意識では、普通イタリア人からは時間厳守とか規律とかはあまり連想されないが、ファビオ・カペッロはロシアにやって来るや、その先入観を粉砕した。前任者のフース・ヒディンク(オランダ)は“大らか”で、任期の終わりには選手をすっかりだらけさせてしまったし、その前のとっつき難いディック・アドフォカート(やはりオランダ人)にいたっては、トレーニングはそっちのけで、銀行預金の額にしか関心がないことを隠しさえしなかった。そんな彼らをみると、カペッロはほとんど独裁者のようだ。

 しかも、2人のオランダ人はときどきロシアに出張してくるだけだったが、カペッロは、予選の各段階で3~4試合は見ていた。そしてその間に少しずつ選手を入れ替えていき、結局、約半数の顔ぶれが変わった。

 アドフォカート監督のもとでは不動のメンバーだったアルシャビン、パブリュチェンコ、ポグレブニャクが代表から外され、代わって新人のディフェンダー、コズロフとエシチェンコが見出され、ファイズリンとコムバロフが今や主力となった。2~3ヶ月前には代表入りなど思ってもみなかった選手がブラジルに行けることになった。

 こういう選手起用により、カペッロは、選手たちに絶えず努力を強い、どのメンバーの座も安泰ではないことを示している。 

 カペッロは、自分の主なポリシーとして、しばしば「respect」という言葉を口にする。彼の規律は厳格そのものだ。選手たちは、スケジュールを分刻みで厳守せねばならず、5つ星ホテルの従業員さながらに、規律を徹底的に叩き込まれる。ところで、ホテルと言えば、報道関係者は、チームが宿泊しているホテルには、特別のイベントや記者会見を除いては立ち入り禁止だ。

 

ゴールを決めるは誰か 

 今のロシア代表チームの主な特徴は組織力だ。なるほど、ブラジルでファンが行列をつくってサインをねだるような スター選手はおらず、ほとんどの選手はロシア国外では無名で、知っているのは関係者だけだろう。その代わり、どの選手もフィールドでの自分の仕事をきっちり心得ている。ここから良いプレッシングとボールのコントロール、そして、守備での連携が生まれる。

 「チームがより一体に、一枚岩になった」と評するのは元ロシア代表監督のワレリー・ガザエフ。やはりかつてロシア代表を指導したユーリー・ショーミンも同じ意見だ。「カペッロは、チームに統一をもたらしたし、守備も上手くなった。もっとも、ディフェンダーのうちの何人かは、齢のせいで相手の動きについていけないこともあるが」

 このスピードに関する不満は、とくにセンターバックに当てはまる。セルゲイ・イグナシェヴィチはもうすぐ35歳だし、ワシリー・ベレズツコイも6月20日に32歳になる。だが、彼らの代わりは、カペッロの手持ちの選手の中にはいない。

 その代わり、サイドバックとミッドフィルダーには豊富な持ち駒があり、各ポジションに2~3人の候補がいる。ロシア代表チームの試合運びは優れたミッドフィルダーに負っている。

 だが、攻撃力となると話は別だ。ブラジルでゴールを狙うのは、ロシアでは最良のフォワード、アレクサンドル・ケルジャコフということになる。なにしろ、W杯に出た経験をもつのは彼しかいないのだ。2002年の日韓W杯では、彼はまだ青二才だったが、今やベテランの域に達し、所属チームのゼニト・サンクトペテルブルクでは、ベンチに座っていることが多い。 

 もう一人の候補は、ディナモ・モスクワのアレクサンドル・ココリンで、疑いなく才能はあるが経験は乏しく、安定性に欠ける。以上のことから、攻撃力がロシアの最大の弱点になるだろう。

 

決勝トーナメント進出を目指し 

 

「ウィリアムヒル」のオッズ

有名なブックメーカー「ウィリアムヒル」のオッズでは、ロシアは優勝候補ではなく、14位にすぎない。優勝のオッズは81倍。一方、決勝トーナメント進出は固いという数字で、1・44倍となっている。

ロシアは優勝候補とはお世辞にも言えないが、決勝トーナメント進出は可能だと、ファンも関係者も確信している。しかも、ロシアがグループHで戦うのは韓国、ベルギー、アルジェリアで、最も恐い相手ではない。

 

 「決勝トーナメント進出は当然で、予想外ではなかった、ということになるかもしれない。進出できると確信している」。こう述べるのは、ロシアサッカー連合のビャチェスラフ・コロスコフ名誉会長。

 有名なテレビ解説者のウラジーミル・ストグニエンコ氏も、これに賛成だ(彼はブラジルでのロシア代表の試合を解説する)。「決勝トーナメントに進出し、ベスト16入りできると我々は確信している。もし、そこでドイツと当たらなければ、もっと勝ち進めると思う。もっとも、決勝トーナメント進出だけでも、我々には大きな成果だ。1986年以来、進出してないのだから。私の楽観主義は何よりも監督の力量にもとづいている。カペッロは理想ではないが、ロシアの最大の強みだ」

 ドン・ファビオ自身の発言は慎重だ。「ロシアがW杯に出るのは久しぶりだし、今回の大会は他のどれともまったく違う。まず、グループステージが我々を待っている。決勝トーナメントに進みベスト16入りすれば、ドイツかポルトガルと対戦する公算が大だ。だが、それについて考えるのは後にしよう。急がず一歩一歩進んで行こうではないか」

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