ソチの噂と事実

ソチ五輪の安全対策にかける総費用は数千億円ほど=ロシア通信撮影

ソチ五輪の安全対策にかける総費用は数千億円ほど=ロシア通信撮影

ソチ冬季五輪開幕まで残すところ数日となった。最終調整が行われるなか、出場選手は選手村に、旅行者はホテルに続々と入ってきている。だがホテルは満室 にならない可能性がある。旅行者や観客を不安にさせているのは、西側のマスコミが流す、ソチ五輪についてのさまざまな噂だ。

噂その1 安全問題

 西側のマスコミは、ソチが「紛争地帯」すなわち情勢不安な北カフカスの共和国に近いことから、テロリストの標的になり得ると指摘している。昨年末に発生したヴォルゴグラードのテロは、そんな恐怖感をさらに強めるものとなった。イギリスの当局者はテロの可能性が高いと警告しているし、同国のオリンピック委 員会は旅行者に対し、服装などでイギリス人であることをアピールしないよう勧告している。

 しかしながら、この危険性が大げさに伝えられていることを証明する事実もある。まず、ソチは「紛争地帯」に近くない。ソチからダゲスタン共和国の首都マハチカラ(北カフカス最大の紛争地域)までは972キロメートル、カバルダ・バルカル共和国の首都ナリチク(五輪開催地にもっとも近い)までは653キロメートル。マハチカラまでの距離は、日本の東京と韓国の釜山、あるいは東京と広島の距離に匹敵する。

 次に、五輪では徹底した安全対策が講じられている。選手と旅行者を守るのは、内務省に所属する3万人の警察官と1万人の軍人、また地元のコサック、1000人の連邦保安庁職員。ロシアの他の地域からソチへの自動車乗り入れは禁じられており、郵便物には検査が行われる。

 安全対策にかける総費用は数千億円ほど。北カフカスのテロリストが、これほどの安全体制を突破できるような十分な資源を、もはや持ち合わせてはいないことを、これまでの経験が示している。

 

噂その2 雪がない

 ソチは温暖な保養地で気温は氷点下にならないから、雪が降らないと考える人がいる。確かにソチではあまり雪が降らないが、屋外競技が行われるのは市の中心部ではなく、近くの山岳部である。そして現在、その山岳部の競技施設には、雪がある。開幕までに雪がとけるようなことがあったとしても、何ら問題はない。前回のバンクーバー冬季五輪で雪が降らなかったことを教訓にして、対策を講じている。ソチ近郊では、昨年3月から雪の備蓄を増やしていた。山の斜面から保管場所に雪を集め、固めて、太陽光線を反射し、雪をとかさないようにする特別な断熱カバーで覆い、閉じている。このような雪の総面積は12万平方メートル、総費用は約6億円にのぼっている。

 

噂その3 ポチョムキン村

タス通信撮影

 一部マスコミは、大規模な汚職や横領によって五輪の予算が著しく膨らんでいるのに、競技施設は完成していないと伝えている。実際にはそうではない。予算膨張は汚職ではなく(確かに汚職もあったが)、新たな支出項目の出現によるもの。

 これは五輪ではよくあることだ。1976年モントリオール夏季五輪では、当初予算が1億2400万ドル(約124億円)だったが、最終予算は28億ドル (約2800億円)になった。2004年アテネ夏季五輪では、16億ドル(約1600億円)から160億ドル(約1兆6000億円)と10倍に膨らんだ。 

 2008年北京夏季五輪では16億ドル(約1600億円)から400億ドル(約4兆円)、2012年ロンドン夏季五輪では24億ポンド(約4000億円)から107億ポンド(約1兆8000億円)。

 競技施設はかなり前に完成しており、それはロシア政府も国際オリンピック委員会(IOC)も認めている。試験競技も順調に行われた。インフラの一部は未完成だが、開幕までの完成は約束されている。

 

噂その4 反同性愛

 外国人旅行者のうち、LGBT(女性同性愛者、男性同性愛者、両性愛者、性同一性障害)が逮捕や罰則の対象になると考える人がいる。ロシアの法律では確 かに、未成年者の前でゲイパレードを実施することが禁じられており、外国人に対して、罰金120~150ドル(約1万2000~1万5000円)、行政罰として勾留15日およびそれに続く国外追放が定められている。

 あくまでも未成年者の前で露骨な同性愛プロパガンダを行った場合のみ追及されるもので、LGBTの人がロシアで処罰されるわけではない。

 ドミトリー・コザク副首相はこう表明している。「自分のプライベートな生活の優位性と魅力を、大人社会の間で広めてもいい。大切なのは、子どもに触れな いこと」。ロシアの法律を信じない人のために、ウラジーミル・プーチン大統領は自ら保証した。ソチに来るLGBTは追及されないと。

 さらに、レズビアンを売りにして大人気となったロシアの女性デュオ「タトゥー」が、ソチ五輪の開会式に出席するという未確認情報もある。ロシアそして大 統領にとっていかにソチ五輪が重要であるかを考えれば、大統領がゲイやレズビアンに関連するスキャンダルで五輪を台無しにはしないことがわかる。

 五輪に参加する選手が、ロシアのLGBTへの支持の印として、挑発的な行為をする可能性も否めない(世界陸上モスクワ大会に出場したスウェーデンの女子 選手が、ネイルを虹色に塗ったように)。しかしながら、挑発行為に対しては、大統領よりもIOC委員の方がはるかに厳しい。五輪では政治パフォーマンスが 禁じられているため、選手は長期の出場停止処分を受ける可能性があるのだ。