ロンドン五輪の後:エフゲニア・カナエワさん(右)、イリナ・ヴィネルさん(左)とメドベージェフ首相(中) =タス通信撮影
-新体操は主観的評価の種目ですよね。
どの種目についても主観的評価と言えるのではないでしょうか。ある選手にこれといった特徴がなくても、その選手が熱意や努力で不足しているところを補っているため、コーチが演技を気に入っているということもあります。でも一番重視されるのは視覚的評価でしょうか。新体操では特にその傾向があります。そのため、コーチは選手を選び、演技を決めるのが大変です。私と一緒に才能ある女子選手がたくさん練習していました。私よりもずっと能力がある選手です。データも、体型も、顔の表現力も私よりずっと上で、総合的に見て優れた新体操の選手です。それでも可能性の話になってしまうのです。結果的にどうなるかということは誰にもわかりません。
-コーチの仕事についてお話になりましたが・・・
自分にぴったりのコーチと出会うことはとても重要ですが、それが決定的というわけではありません。選手になる運命にある人は、魂を完全に打ち込めば、何らかの形で見いだしてもらえ、代表に招かれます。ロシアの新体操には、国内で上位に立てるような、数十人の優れた選手団が常にいて、コーチング・スタッフは上位50位ぐらいからでも選手を選定します。
-新体操のコーチは独裁者だという意見がありますが、衝突したことはありますか。
そんなことを考えたこともありません(笑)。私たちのやることは決まっています。練習基地で多くの時間を過ごしますが、塀で閉ざされているわけではありません。練習は日課です。練習場所に行って、具体的な練習内容の説明を受けます。選手として熟してくると、自分から提案する権利を得られます。
-アイスクリームを持って練習に行くことはできますか。
ダメです。アイスを持ってなんてとんでもないです。太るだけじゃなくて、それはコーチに対する無礼だと考えられています。
-こっそり食べるのはありですか。
みんなこっそり食べていますし、それは秘密でもありません。私もチョコレートを食べました。こっそりというより、コーチのいる場所で食べなかったということです。力が足りなかった時は、コーチ自身が私に甘いものをくれたこともありました。どのアスリートも自分が何を目指しているのか、そのために何をするつもりなのか、そして自分の体型をどれだけコントロールできるのかということを理解しなければなりません。
-さて、主観的評価の話ですが、他の種目であればゴール、点数、時間などの客観的評価が可能です。しかしながら新体操では、主観的評価のみです。審査基準というものがあるのでしょうけど、それを理解している人は少ないです。
基準はあります。新体操の評価は雲をつかむようなものかもしれませんが。例えば片足を前に出して回転させるとします。1回転とカードに書いておきながら、実際には2回転させたとします。そうすると回転不足という評価になりません。常にこのような感じです。ジャンプして股割りまで足をのばさないのはもったいないので、股割りを意識するとか。あとは表現力や魂が非常に重要です。最近はこういったところにより重きが置かれています。重要なのは“やり過ぎない”ことだと思っています。やり過ぎないためには、自分に正直でなければなりません。一般に、世界には正直さが足りません。優しさも。スポーツも同じなんです。
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-どうやって心からの笑顔を習得したのですか。
何もしていません。習得するものではないからです。正しく生きて、人々を愛し、評価し、悪口を言わず、妬まないことです。スポーツの効果とは、普段の人間性によって決まるのです。
-常にそんなに正しくいられないものではないでしょうか。
完璧は不可能ですが、自分をポジティブにする努力は必要です。私もいつでも前向きでいられるわけではありません。ストレスを感じたり、泣いたり、暗く考えてしまったり。
-でもカナエワさんがマットの上に立つと、まるで楽しむために出てきたような印象を受けます。これもやっぱり習得は無理なのでしょうか。
新体操では、小さい頃からマットの上で感情表現をすることを教えられます。世界の大会まで行くと、それがとても大切だったことがわかるのです。
-新体操の選手には献身的なファンがいますね。
スペインにたくさんいます。スペインの人は新体操が大好きで、その熱さたるやすごいものです。イタリアとフランスでもとても応援してくれます。当然ロシアにもファンがいますし、子供が応援してくれます。モスクワで世界大会があった時、あまりにもたくさんの人が来て、開始の合図が聞こえなかったほどです。あと、台湾にすごい女性ファンがいます。私を応援するためにわざわざフランスのモンペリエまで来てくれて、私の小さな写真を数千枚使って大きなコラージュをつくってくれたんです。私が演技している間、そのコラージュをかかげていてくれました。そのファンは私の母と知り合いになって、ロンドン五輪にも来てくれました。
-近い将来の計画はどのようなものですか。
それについてお話するのは難しいですね。今は健康を維持するようにしていて、それが自分にとって一番重要です。スポーツも大切ですが、お母さんになりたいです。女性にとってこれはかけがえのないことではないでしょうか。私はそう思っています。
*元記事
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