「スケートは基本に忠実に」

ロシア・フィギュア・スケート連盟のワレンチン・ピセエフ会長=タス通信撮影

ロシア・フィギュア・スケート連盟のワレンチン・ピセエフ会長=タス通信撮影

アメリカのシアトルで10月19日(現地時間)、フィギュア・スケートのグランプリ・シリーズが開幕した。ロシア・フィギュア・スケート連盟のワレンチン・ピセエフ会長は、コメルサント紙のインタビューに応じ、ロシアの今シーズンの目標はソチ五輪への出場権を最大限獲得することだと述べた。また、エフゲニー・プルシェンコが3種類の4回転ジャンプを習得した理由や、他の選手の評価などについても語った。

-フィギュア・スケートに対するシーズン前の空前の関心を、どのようにご説明されますか。

このグランプリ・シリーズを含めた、今後のすべての大会における、選手の責任の重さイコール関心の高さです。特に世界フィギュア・スケート選手権は、その結果でソチ五輪の参加選手数が決まりますから。ペアとダンスに3組ずつ、女子に3人、男子に2人が理想的です。フランスのニースで開催されたフィギュア・スケート世界選手権2012で、男子の成績が悪かったため、カナダの2013年世界選手権には1人しか参加できないのです。ソチ五輪にプルシェンコしか参加できなくなるなら、ひとりで個人と団体の2種目で上位を目指さねばならないことになり、難しいですね。

-秋の大会では、太腿にケガをしたヴェーラ・バザロワとユーリー・ラリオノフ組み以外は、順調でしたね。

世界選手権で銀メダルを獲得したタチアーナ・ヴォロソジャルとマキシム・トランコフ組、オバーシュトドルフとソチの大会で勝利した元チャンピオンの川口悠子とアレクサンドル・スミルノフ組などのプログラムはおもしろいです。ロシアはペア・スケートが強く、トップのペアは入賞をめざすことが義務です。中国のホウ清とトウ健組、世界選手権で銅メダルを獲得している日本の高橋成美とマーヴィン・トランは相変わらず強いです。

2010年世界選手権で銅メダル、2011年欧州選手権で銀メダルを獲得し、前シーズンの最後は調子の悪かったアルトゥール・ガチンスキーは、復活したのでしょうか。

ガチンスキーには今の時点でより安定してほしいです。コーチのアレクセイ・ミシンは、これからの重要な大会には本領を発揮すると確信しています。ところで、男子スケートでメダルを狙う用意があるのは、すでに十数人いますし、4回転ジャンプ1回だけという選手はもういませんよ。日本の17歳の羽生結弦は良い選手です。あとはチェコのミハイル・ブジェジナ、カナダのパトリック・チャンですね。

-でも日本で最近行われた大会では、2回の優勝経験があるパトリック・チャンは6位に終わりましたね。なぜでしょうか。

チャンはそれまでのコーチだったクリスティ・クラールとの提携関係を終えました。超一流のスケートのマスターであるチャンは、転ぶことさえ許されなかったぐらいですから、日本では以前のスケートをやっていなかったということでしょう。チャンの強みは、滑りと、長く助走しなくてもジャンプできることです。

-ロシアのコーチはそのような方法をマスターしていないのでしょうか。

フィギュア・スケートは、何よりも子供時代から学ばなければならないスケーティングです。ロシアのスケーターは、ジャンプや回転で親を喜ばせ、スケーティングを二の次にしていたことが判明したのです。そのため、われわれは、スケートのテストの認証プログラムに基本の滑りを加えたのです。現在は、そのテストに合格しないと大会には出れません。

-しかるべき時にスケートを習わなかった大人は、選手になっていないということでしょうか。

子供時代にマスターしていないのなら、大人になってから人一倍の努力をしなければなりません。例えば、プルシェンコはスケーティングを他の選手よりもしっかりマスターしています。パフォーマンスよりも審査員は他の部分を見ているわけですから。世界選手権で銅メダルを取った羽生選手の滑りと言ったら、もう最高ですよ。

-プルシェンコはチャンのように、日本の大会ではあまり良い成績を残せませんでした。4番目は本当にプルシェンコのレベルなんでしょうか。

1大会では何とも言えません。ロシア選手権、ましてや欧州選手権もこうなるということではないのです。この2大会で、違った姿を見せると信じています。プルシェンコはやせましたし、とても努力しています。11月3日には30歳になりますね。

-ロシアの専門家で、復活した五輪金メダリストのエヴァン・ライサチェクを見た人はいますか。

プルシェンコのマネージャーによると、ライサチェクは調子が良く、4回転やカスケードなどを飛んでいるということです。4大陸選手権に参加し、国内大会からカナダにも行くと思います。

-それを見ると、ソチ五輪前にプルシェンコは動揺しそうですね・・・

シェフィールドの欧州選手権で、プルシェンコの優れたライバル全員が、プルシェンコが登場するや否や落ち着きを失ったことを思い出して下さい。プルシェンコの存在感は非常に大きいため、そのような反応はソチでも見られるに違いありません。地の利もありますしね。健康な状態さえ維持すれば大丈夫です。ソチ五輪のどのメダルも、プルシェンコにとって栄誉となるでしょう。

-プルシェンコは以前、4回転トゥループしか飛んでいませんでしたが、今はサルコーを体得しました。さらに、マネージャーによると、ルッツも始めようとしていることをもらしました。ソチ五輪で3種類の4回転ジャンプをまとめて見れるということなんでしょうか。

そうではありません。サルコーのような難しいジャンプを学ぶと、トゥループを飛ぶことが選手にとって簡単になります。そしてルッツを学ぶと、サルコーを飛びやすくなります。プルシェンコのやり方は正しいです。4回転の中で一番難しいのはルッツなので、それを練習すると、気軽にサルコーをできることがわかります。

-女子はどのような状況でしょうか。

日本の18歳の村上佳菜子と、ジュニアから上がりたてのアメリカのグレイシー・ゴールドにより見込みがあると思います。でも、女子は予測が難しいです。成功するかもしれないし、失敗するかもしれません。ロシア人を含めた誰でも上位に入る可能性があります。

-確かに、今までジュニアだったアデリーナ・ソトニコワや、エリザヴェータ・トゥクタムィシュエワもシニアの世界選手権や欧州選手権に出場できるようになりましたからね。

ソトニコワはすでにジュニアからほぼ抜けきった状態で、とてもおもしろいプログラムをつくりました。プログラムには、スピード、ステップ、回転、芸術、ジャンプなどがすべて含まれているので、うまく滑りきれば、間違いなく高い評価を受けるでしょう。春夏で成長したトゥクタムィシュエワもシニアらしくなってきました。エリック・ボンパール杯でも金メダルを獲得しましたしね。

*記事の完全版(ロシア語)

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