ズヴャギンツェフ作にカンヌ審査員賞

アンドレイ・ズヴャギンツェフ監督=

アンドレイ・ズヴャギンツェフ監督=

ロイター通信
 子供の両親が自分たちの生活で忙しかったらどうなるのだろう。映画「父、帰る」などで知られるアンドレイ・ズヴャギンツェフ監督の新作映画「ラブレス(無愛)」(ロシア公開2017年6月1日)は、今後海外でも上映される。

1.     カンヌで審査員賞受賞

 ズヴャギンツェフ監督の「ラブレス(無愛)」が、第70回「カンヌ国際映画祭」のコンペティション部門で審査員賞を受賞した。最高賞パルムドールを予想する映画評論家もいたが、ペドロ・アルモドバル審査員長率いる審査員団に独自に高く評価された形だ。

 ズヴャギンツェフ監督のどの映画も、映画界の大きなできごとになる。前回の作品「裁かれるは善人のみ」は、第67回「カンヌ国際映画祭」で脚本賞を受賞し、第86回「アカデミー賞」で外国語映画賞にノミネートされ、第72回「ゴールデングローブ賞」で外国語映画賞を受賞した。初の長編映画「父、帰る」は、第60回「ヴェネツィア国際映画祭」で金獅子賞を受賞している。

 新作の公開については、ヨーロッパ諸国との契約がすでに完了しており、プロデューサーのアレクサンドル・ロドニャンスキー氏によれば、アジアの会社との交渉も最終段階に入っているという。ヨーロッパで公開されるのは9月。

「ラブレス(無愛)」 =Kinopoisk.ru「ラブレス(無愛)」 =Kinopoisk.ru

 

2.     見事な心理学的アプローチ

 この新作は、表向きは普通のホームドラマだが、とても深い。離婚寸前の若い夫婦のどちらにも、将来性のある愛人がいる。夫婦は息子を孤児院に入れることを決めたものの、自分たちの生活で忙しく、次の日にはそのことを忘れてしまう。そして息子は行方不明になる。以降の話の流れは捜索映画のようだが(アメリカ映画「ゴーン・ガール」や「捜索者」に似た側面も)、映画評論家アントン・ドリン氏によれば、哲学的レベルでは、ただ外で探すのではなく、自分たち自身の心の中で何かを探している。また、対話や演技がとても自然で、難しいベッドシーンもよくできているという。

 

3.     政治的な意味合いを感じるか

 映画評論家らは、この映画がロシアとウクライナの問題をほのめかしていると考えている。「裁かれるは善人のみ」では、汚職、ロシア正教会の影響力の強まり、国内の辺境の地の問題を指摘していたため、この映画で現在の政治情勢を示しているのかとズヴャギンツェフ監督に聞いている。本人によれば、ウクライナ情勢との類似性を除くことは難しかったという。「この隠喩はバックグラウンドのように機能している。だが、物語は人間、人の気持ちを理解できないこと、変わらぬ身勝手さ、自分のことにばかりとらわれていることについてであって、政治宣言に変わってほしくはなかった」とズヴャギンツェフ監督。

 関心を持っていた主な点は、一人の人間がいかに他の人と暮らせるかというところだったという。「主人公はほぼ戦場にいる。12~13年一緒に暮らした後、何もないことに気づく」とズヴャギンツェフ監督はカンヌで記者団に話した。