ロシア革命といえば、まっさきに指導者レーニンの名前があがるものだが、『ロシア革命』というタイトルをもつ本書の主人公は、しかしながら、レーニンではない。ロマノフ家帝政を打倒した2月革命と、世界史上はじめてプロレタリア政権を樹立した10月革命のあいだに、穏健な着地点を求めて改革に取り組んだ、自由主義的な知識人たちこそが本書の真の主人公である。
知的エリート層に属する彼らは、言論の自由、人身の不可侵、私的所有権といった西欧的モデルにしたがって、漸進的な社会改革を目指したが、「現在ある秩序は、こつこつと修正していくべきものというよりは、いつか、夢のような真実の瞬間に、一挙に転覆すべきもの」と捉えていた民衆の支持を得ることができず挫折した。今から数えてちょうど100年前の今ごろのことだ。その8か月間を主導した知識人たちの群像が、豊かな知識の蓄積に支えられた簡潔で克明な筆致で魅力的に描かれている。
ボリシェヴィキは大衆に迎合して政権を握るが、いったん政権の座につくと容赦なく民衆に銃口を向けた。ポピュリズムに翻弄される現代社会を、鏡にかけて見るがごとし、だ。
(三浦清美・電気通信大学教授)
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