刊行:2016年1月
加賀乙彦 編
集英社文庫(ポケットマスターピースシリーズ04)
古典作家の魅力を一冊に凝集するシリーズの第4弾はトルストイ。文豪を「人生の座右の本」としてきた加賀乙彦氏が編集し、氏による『戦争と平和』ダイジェストをはじめ、気鋭のロシア文学者達による中、短編の新訳を収める。ダイジェストは、あの巨作の主要登場人物の人間関係に焦点を当て、三百頁に圧縮。他の作品も、怪物的作家の様々な顔を鮮やかに示す傑作揃いだ。トルストイは読んでみたいがどこから手を付ければという方はもちろん、愛読者にもお薦め。特に『ハジ・ムラート』は、迫力と完成度において三大長編をも凌ぎ、文豪の生涯と思想を読み解く最大の鍵の一つでもある。その多元的、多言語的世界の翻訳は至難だが、中村唯史氏はけれんみのない訳文で見事に再現した。
(佐藤雄亮・モスクワ大学講師)
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