刊行:2015年2月
大野斉子 著
群像社
人間の五感のなかで嗅覚ほど本能に近いものはない。かぐわしい香水の匂いはふと甘い夢を掻き立てる。そんな香水のなかで伝説的な知名度を誇るのは、いうまでもなくシャネル№5だ。とはいえ、この名香を創りあげた者が、亡命ロシア人の天才的調香師、エルネスト・ボーであることはほとんど知られていない。本書は、筆者もちまえの才気と博覧強記に導かれるまま、ヨーロッパの匂いの文化が、ロシア宮廷という環境とその余韻のなかで、近代的な香水シャネル№5として蘇る経緯を明らかにする。雑踏の種々な匂いが渦巻くロシアの帝都、サンクト・ペテルブルグ。引用されるロシア文学の名作の数々から、香水の香りが都市の文化の華として立ち上る必然性があったことがよくわかる。
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