ペトロフは1989年にペレスラヴリ・ザレスキーで、電気技師の父と看護婦の母の元に生まれた。幼年時代はサッカー選手になるのを夢見ていたが、怪我のため、スポーツを断念せざるを得なくなり、経済学部に入学した。
大学ではコメディコンテスト「KVN」に参加し、2年生のときにモスクワの演劇指導者と出会う。そこですべてを捨て、モスクワの演劇大学に進んだ。
学生時代に映画に出演するようになったペトロフの最初の作品はファンタジー・ドラマ「シダが咲く間に」(2012)である。「わたしは自分の過ちを細かく分析したりしません。撮影され、上映されたものはもうやり直せません」とペトロフは話す。
アレクサンドルは今も俳優としてのキャリアを続けており、ロマンティック・コメディやアクション映画などに出演している。突破口的な作品となったのが「メソッド」で、ヒロインの恋人役を演じた。この推理スリラー映画の放映権をNetflixが購入し、「メソッド」はペトロフが出演した作品の中で初めて、世界的に放映される作品となった。
ペトロフ自身が転換期となった作品として挙げているのがフョードル・ボンダルチューク監督の「アトラクション 制圧」である。モスクワのチェルタノヴォに墜落した巨大宇宙船をテーマにしたこの作品は10億ルーブル以上の興行収入を上げた。この作品で主役を演じたアレクサンドル・ペトロフは、共演した女優のイリーナ・スタルシェンバウムと恋に落ちたが、結婚には至らなかった。
「アトラクション 制圧」の1シーン
Fyodor Bondarchuk, 2017/Vodorod Film Companyアレクサンドルは伝記映画や歴史映画で好演している。たとえば、神経質で不安症のニコライ・ゴーゴリになりきり(アメリカのアコレード映画祭では賞を受賞)、サッカー選手のエドゥアルド・ストレリツォフ役も演じた。「これまでにわたしが演じたすべての役は、わたし自身を重なっているように思います。自分とまったく共通点のない人物を演じることなどできるでしょうか?」とアレクサンドルは打ち明けている。
「魔界探偵ゴーゴリ 暗黒の騎士と生け贄の美女たち」の1シーン
Egor Baranov, 2017/Lenfilmペトロフはヨーロッパ映画にも出演している。リュック・ベッソン監督のスパイ・アクション映画「アナ」では、ヘレン・ミレン、ルーク・エヴァンス、キリアン・マーフィーと共演した。アレクサンドルの役どころは、ヒロインの運命に影響を与える1990年代の不良役。
「アナ」の1シーン
Luc Besson, 2019/Canal+ [fr]ロマン・ポランスキ監督の最新作「The Palace」でも、変革の時代がアレクサンドルについてまわる。この作品も1999年から2000年にかけてを舞台にしている。ペトロフ演じる主人公(残忍なスキンヘッドのロシア人青年アントン)はミッキー・ローク、ファニー・アルダン、オリヴァー・マスッチとともに数々の奇妙な出来事に巻き込まれていく・・・。
「ロマン・ポランスキ監督の作品に出演できたことは、神からの贈り物だと思います。ある意味でわたしたちは『同じ血』を持っていると感じました。なぜなら彼もまた映画を奇跡と捉えているからです。ポランスキ監督は、信じられないようなプロフェショナリズムを持って映画を撮影し、神から与えられた才能を持っているだけでなく、映画のディーテールの一つ一つに、おそらく映画にとってもっとも重要であろう、奇跡というものを吹き込んでいるのです。奇跡というものがなければ、映画にはなりません」とアレクサンドルは話す。
演劇公演「桜の園」、プーシキン記念劇場
Vyacheslav Prokofiev/TASSブロックバスター映画「ICE ふたりのプログラム」、「Text」への出演のほか、ペトロフは詩を書き、自ら制作するショー「もう一度生まれ変わって」、「マクシムス惑星」などに出演し、モスクワのエルモロワ記念劇場の舞台にも出演している。多くの俳優たちがハムレット役を演じるのを夢見るものだが、ペトロフはすでに24歳でこの夢を実現させた。
「映画はわたしの人生において大きな意味を持つものですが、一方で劇場のない人生など想像できません。『ハムレット』を演じることで、完全に浄化され、リセットされると感じます」とペトロフは語っている。
ペトロフが今後、どのような作品に登場するかは分からないが、ペトロフ自身はまだまだ走り続けるつもりであることだけは間違いない。というのも、彼は映画の仕事での細田の目標は「アカデミー賞」だと何度も口にしているからである。
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