英国王室コレクションにあるロシアの傑作芸術作品10点(写真特集)

Royal Collection Trust/His Majesty King Charles III, 2022
 英国王室コレクションには、貴重なファベルジェの卵から天然の孔雀石でできた巨大な花瓶に至るまで600点以上ものロシア由来の芸術作品が収蔵されている。

 わたしたちは過去に、ウインザー家の宝石箱に納められたロマノフ王朝の宝物類について、またエリザベス2世がいかにこの壮麗なティアラを得たのかについてお伝えした。しかし、この王朝の一族が公式な場で身に着ける宝飾類以外に、英国中の博物館や王室の居住地の王室コレクションにもロシアの宝物は収められている。 

1. ファベルジェ作「列柱の時計」、1910年

 英国王室コレクションにはファベルジェ作のインペリアル・イースター・エッグが3点収められており、他にロシア人事業家アレクサンドル・ケルヒのためにつくられたもののひとつある。この列柱の時計は、1904年に皇太子アレクセイが誕生したのを祝ってつくられた宝飾時計である。飾られている天使は最後の皇帝の子どもたちを象徴している。皇帝ニコライ2世は、1910年のイースターにこの時計を妻に贈った。そして1917年の革命後は、ボリシェヴィキ政権が没収し数年後にロンドンのエマヌエル・スノーマンに売却した。1931年、英国王ジョージ5世とメアリー王妃は彼からこれを購入した。

2. ファベルジェ作の12のパネルのイースターエッグ、1899年

 ファベルジェの卵は今日では数百万ドル(数億円)にもなっているが、昔もひと財産の価値があった。最大の卵のコレクション(50個以上)はロマノフ家が所蔵していた。しかし、次に多く持っていたのは、シベリアの実業家アレクサンドル・ケルヒの妻ワルワラ・ケルヒのコレクションの7個であった。1898年から1904年の間、彼は、妻に毎年イースターに卵を注文した。1904年、ワルワラは「パネルの卵」をパリに持っていき、1920年に競売にかけた。そして1933年、英国王ジョージ5世は当時の所有者から購入し、メアリー王妃にクリスマスプレゼントとして贈ったのである。

3. オフチンニコフ作のエナメルとトパーズの小箱

 この素晴らしい作品は、王室宝飾作家パヴェル・オフチンニコフ(彼についてもっと知りたければこちらから)によってつくられた。この小箱の製作年代はよく分かっていない(おそらく19世紀終わりか20世紀初め)が、1928年5月26日のメアリー王妃の誕生日に夫である国王から贈られたものだ。

 この小箱はエナメル製で大きな青いトパーズがつけられサファイアが周りを飾っている。

4. 孔雀石の花瓶、1827年及び1850年

 この碧玉の台に載せられた孔雀石の装飾花瓶はウインザー城内のジョージ4世の部屋を飾っている。この花瓶は1827年に皇后アレクサンドラ・フョードロヴナが英国王に贈ったものだ。この贈り物は真に素晴らしいもので、ウラル山地で採石された孔雀石は宮殿を飾るのに最高の石のひとつだと考えられていた。もうひとつのロシアの孔雀石製の花瓶は、ヴィクトリア女王とアルバート皇配が1851年に購入したものである。

5. ニコライ・ボグダノフ=ベリスキー作のニコライ2世の肖像、1908年

 王室コレクションには海外の有名画家の手になるロマノフ一族の肖像画も含まれている。その中には、ジョージ・ドー作アレクサンドル1世(1826年)、フランツ・クリューガー作ニコライ1世(1847年)などがある。このニコライ2世の肖像画は、ロシアの巨匠ニコライ・ボグダノフ=ベリスキーが描いたものだ。実際、彼は郊外での生活の様子を描くことが多いが、また、ロシア皇族の肖像画もいくつか描いている。ロシア最後の皇帝は1908年6月にエドワード6世と会ったのち自身の肖像画を贈っている。この絵はバッキンガム宮殿の中央の間に掲げられていた。

6. 大公女エレナ・パヴロヴナの肖像画、1796年

 この肖像画は皇帝パヴェル1世の次女エレナを描いている。実際にはこれはパヴェルの4人の娘をそれぞれ描いた大判画のひとつの縮小版である。この絵の作者は不明だが、サンクトペテルブルク近郊のパヴロフスクに今でも飾られているよく似た作品の作者であるピョートル・ジャルコフでないかと考えられている。この縮小版は1870年代より王室コレクションに加えられている。

7. ソロヴェツ修道院のイコン(聖像画)、17世紀前半

 この古代のイコンは、ロシアでもっとも有名な修道院の一つである白海沿岸のソロヴェツ修道院(1436年開基)を描いたものである。このイコンは400年前のものであるにもかかわらず、そのディーテールのレベルの高さと保存状態の良さには驚かされる。ロイヤル・コレクション・トラストのウェブサイトによれば、こうした古いイコンは20ほどあり、このイコンは「修道院の聖職者の1人」のものであった。イコンは、アルバート王子から譲り受けたドイツのルートヴィヒ・クラフト・エルンスト・フォン・エッティンゲン=ヴァラーシュタイン(1791〜1870)のコレクションに含まれていた。

8. セルゲイ・レヴィツキー撮影のロマノフ家の写真(1860〜1890年代)

 セルゲイ・レヴィツキー(1819〜1898)はロマノフ家の宮廷写真家であった。想像してみてほしい、実に4世代にわたる皇帝たちが彼の前でポーズを撮ったのである。さらにレヴィツキーは、ニコライ・ゴーゴリ、レフ・トルストイ、アレクサンドル・オストロフスキー、イワン・ツルゲーネフなど、ロシアの有名な作家たちの写真も撮影した。英国のコレクションには、130年以上前の数十の作品が含まれているが、そのほとんどがロマノフ家の写真である。

9. ニコライ2世の金のシガレットケース、1896〜1908年

 ロマノフ家が所有していたいくつかの宝石のついたシガレットケースは博物館に展示されている。たとえば、ダイアモンドとサファイアのついたこの金のシガレットケースはファベルジェによって作られ、ニコライ2世のお気に入りの品だったと言われている。ロマノフ家は同じようなシガレットケースを英国の親戚であるエドワード7世とメアリー女王にも作らせた。それらの品もコレクションとして残されている。

10. 皇室献上花瓶、1844年

 1844年のロシアのニコライ1世の英国訪問は、1814年に両王室がナポレオンの戦いでの勝利を祝って以来、実に30年ぶりのものであった。ニコライ1世はロシアに戻ってから、サンクトペテルブルクの陶器工場で作られたこの花瓶をヴィクトリア女王に贈った。この花瓶は今もウィンザー城に保管されている。

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