ロシア人画家と外国人画家の眼を通したニコライ2世

 ロシア最後の皇帝は写真好きであったため、彼を撮影した、また彼が撮影した写真はたくさん残されている。しかし、絵画に描かれたニコライ2世はどうであろうか?

『ツァールスコエ・セローのセルゲイ・アレクサンドロヴィチ大公、ニコライ・アレクサンドロヴィチ皇太子、パーヴェル・アレクサンドロヴィチ大公』、1880年、ニコライ・ドミトリエフ=オレンブルグスキー作

 将来のロシア皇帝、ニコライと弟たちが描かれている。彼らは皇帝アレクサンドル3世の皇子たちである。画家は露土戦争を描いた戦争画で知られており、皇帝アレクサンドル2世も描いた。 

皇帝ニコライ2世と皇后アレクサンドラ・フョードロヴナ、1894年

 このカラー・リトグラフはメシコフという者が成婚を記念した一連の祝賀の一部としてモスクワで印刷した。 

『皇帝ニコライ2世の結婚』、1895年、ラウリツ・トゥクセン作

 このデンマーク人画家は、デンマーク王クリスチャン9世、ヴィクトリア女王、ギリシャ王ゲオルギオス1世やロマノフ家など何人かのヨーロッパの君主を描いた。

彼はまた、2人の表情をアップにした「ズーム」版も描いた 

『ニコライ2世の肖像画』と、『ポーチ上のニコライ2世』、1896年、イリヤ・レーピン作

 レーピンは「ヴォルガの舟曳き」や他の歴史的作品だけでなく、肖像画家としてもとても有名である。彼が描く肖像の表情は信じられないほど活き活きとしている。戴冠式後、レーピンは新皇帝の肖像画をいくつか描くように命じられた。もっとも儀式ばったものは冬宮の大玉座の間で描かれた。また、別のものは、同じ軍服、同じポーズであるがよりカジュアルに描かれている。

『皇帝ニコライ2世(近衛連隊の軍服姿)』 、1896年、イリヤ・ガルキン作

 この肖像画のもっとも興味深い事実は、この絵が90年にもわたって1917年革命の指導者の肖像画の下に隠されていたことである。この2重肖像画に描かれたニコライ2世は2016年の修復時に発見された。この発見についてもっと知りたいならこちらからどうぞ。 

『ニコライ2世』、1896年、イリヤ・ガルキン作

 このニコライ2世の肖像画は1896年にI.V.ツヴェトコフ出版が制作した「ロシアのロマノフ王朝」という挿画集に掲載されている。 

『肩章をつけた白い軍服を着たニコライ2世』、1898年、イリヤ・ガルキン作
『ニコライ2世』、1900年頃、エルンスト・リプガルト作

 この肖像画はモスクワのクレムリンの広間のひとつで描かれた。

『ニコライ2世』、1900年頃、ワレンチン・セロフ作

 「桃を持った少女」で有名なワレンチン・セロフは宮廷肖像画家のひとりで、アレクサンドル3世や皇子たちを描いた。この未完成の肖像画のニコライ2世はプレオブラジェンスキー近衛連隊の将校服を着ている。 

ニコライ2世の肖像画、1900年頃、ジョージズ・ベッケル作

 皇帝が微笑している珍しい肖像画である。

『ロシア皇帝ニコライ2世の肖像画』、1903年、フリードリヒ・アウグスト・フォン・カウルバッハ作

 このドイツ人画家は珍しい肖像画を制作した。皇帝を軍服姿ではなく、平服姿の皇帝を描いた。 

皇帝ニコライ2世の肖像画、1900年代、ミハイル・ルンダルツォフ作

 彫刻家アカデミー会員であるルンダルツォフはニコライ2世とアレクセイ皇子の肖像画をいくつか描いた。この肖像画の皇帝は信じられないほど思慮深い表情をしている。 

『皇帝と皇帝一家』、1902年、エレナ・サモキッシュ=シュドコフスカヤ作

 フランスをルーツに持つこの画家、エレナ・サモキッシュ=シュドコフスカヤは本の挿画で知られており、特にアレクサンドル・プーシキンの韻文小説「エフゲニー・オネーギン」は有名だ。彼女はまた、ニコライ2世と皇后アレクサンドラの戴冠式を描いた画集でいくつかのスケッチを描いている。この絵は、皇子女たち―オリガ、タチヤナ、マリヤそしてアナスタシヤとともに描かれている。 

『皇帝ニコライ2世と皇子』、1905年、ボリス・クストーディエフ作

 4人の皇子女に恵まれた後、ニコライと皇后は皇子が生れるのを待ち望んでいた。そして数年待っても懐妊の兆候はあらわれなかったものの、ついに1904年、待望の王位継承者が誕生した。それがロマノフ王朝最後の皇太子である。 

『聖ウラジーミル勲章をつけたニコライ2世』、1905年、ヘンリッヒ・マニザー作

 ドイツをルーツに持つロシア人画家は、ロマノフ家お気に入りの画家であった。ニコライの父、アレクサンドル3世はこの画家が描いた露土戦争の絵を何枚か購入した。この肖像画はニコライ2世自ら制作を依頼したものだった。 

皇帝ニコライ2世の肖像画とその習作、1907年、アレクサンドル・マコフスキー作

 芸術家一族であるマコフスキー家の一員であるこの画家は、近衛騎兵連隊の軍服姿のニコライ2世を描いた。 

『宮廷舞踏会、舞踏会場で皇后をエスコートする皇帝』、1913年頃、フレデリック・デ・エネン作

 オランダをルーツに持つフランス人画家、挿絵画家であるフレデリック・デ・エネンはパリのイリュストラシオン誌を主宰していた。彼は1913年にロシア中を大旅行し、ロシアと名付けた挿絵本を発行し、普通の人々、教会、クレムリン、シベリア横断鉄道そしてもちろん皇帝を描いた。 

『古式衣装を着た皇帝ニコライ2世と皇后アレクサンドラ・フョードロヴナ』、1913年、フレデリック・デ・エネン作

 ニコライ2世と皇后は1903年のロマノフ家即位記念仮装舞踏会で古代のロシア皇帝の衣裳を着た。 

『閲兵式の皇帝ニコライ2世』、1913年、フレデリック・デ・エネン作

 このフランス人画家が皇帝を描いた別の作品。ニコライ2世は大規模軍事演習時に度々年次閲兵式を行った。

『皇帝ニコライ2世』、1915年、ボリス・クストーディエフ作

 ボリス・クストーディエフは多彩な色彩を用いる独特の様式でロシアの民衆や商人を描いたことで知られている。この皇帝の肖像画も彼の特徴的な手法で描かれ、背景にはおとぎ話風のモスクワのクレムリンが見られる。

皇室の化粧箱、1916年、ファベルジェ社作

 ファベルジェの首席宝飾職人であるヘンリック・ウィグストロームによって製作されたこの箱には、宮廷細密絵師ワシリー・ズイエフの手になる皇帝の肖像画が描かれた。ニコライ2世は1915年10月25日に受けた聖ゲオルギ―勲章をつけた第4代近衛ライフル隊の軍服を着ている。この箱は1894年から1898年までフランスの外務大臣を務めたガブリエル・アノトーに皇帝から贈られたもの。

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