ゾリクト・ドルジエフが描くブリャートのおとぎ話と伝説(写真特集)

Gallery Khankhalaevの提供
 この芸術家のキャンバスと彫刻には東洋のおとぎ話とブリャートの国民的な伝説が描かれている。

 遊牧民族ブリャートの色彩豊かな民族の伝統と仏教の雰囲気を漂わせる神秘的なフォークロアは、幾世代もの芸術家に大きな創作意欲を与えた。ザバイカル地方にあるブリャートの村出身であるダーシ・ナムダコフもそんな一人であり、またゾリクト・ドルジエフの作品もまた世界のあちこちで展示されている。 

アカデミズムと自由な飛行

雷雨

 ドルジエフは1976年、ブリャート共和国の首都ウラン・ウデに生まれた。ウラン・ウデでは、ロシア正教会の教会でさえも仏塔を思い起こさせる。またウラン・ウデから36㌔離れた地点には、ロシアの仏教の中心地であるイヴォルギンスキー・ダツァンがある。また近くには、バイカル湖があり、反対側はモンゴルである。ここはシャーマンの地であり、東洋の信仰の場であり、ステップ地帯に囲まれ、遊牧民族である先祖の記憶が残されている。

「夢のリセット」

 最初は故郷で、後にクラスノヤルスクで、ゾリクトは芸術の教育を受けた。そこで、彼独特のエスニックな色彩が、コンポジション、フォルム、色に関する古典的なイメージと融合されている。彼の作品はブリャートの遊牧民の遺産と地元の伝説に捧げられている。

「ノイオンとハタン」、2004年

 2004年、ゾリクトはブリャート歴史博物館で行われた展覧会に作品を出展したところ、その作品が当時すでに有名だったダーシ・ナムダコフとプロデューサーのコンスタンチン・ハンハラエフの目に留まることとなった。ハンハラエフのギャラリーには今もゾリクトの作品が展示されている。

ステップと遊牧民

 ゾリクトの作品の主な登場人物はステップの遊牧民である。ゾリクト自身、「これは芸術家であり、詩人であり、哲学者である。そして概して、彼は孤独である」と述べている。

 ゾリクトは絵画からデジタルアート、NFT、映画の衣装まで、実にさまざまなジャンル、さまざまなテクニックを用いて作品を生み出している。たとえば、ゾリクトが衣装を担当したセルゲイ・ボドロフの映画「モンゴル」(2007)は、オスカーの最優秀外国語映画賞にノミネートされたほか、衣装で、ロシアの国家賞である「ニカ賞」を受賞している。

映画「モンゴル」の衣装のデッサン

 ゾリクトはこのほか、ソ連時代のヒッピーについて描いたガーリク・スカチョフ監督の「太陽の家」(2010)、アレクセイ・フェドルチェンコ監督の「神聖なる一族24人の娘たち」(2012)にも参加した。この作品で、ゾリクトはロシア映画批評家連盟から最優秀芸術賞を受賞している。

アレクセイ・フェドルチェンコ監督の「神聖なる一族24人の娘たち」、デッサンと映画のワンシーン

世界中で展示される

 批評家たちは、ゾリクトの作品にアンディ・ウォーホルやポップアート、ヨーロッパのコスモポリティズムの影響を指摘している。またゾリクトは、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ヨハネス・フェルメール、ヤン・ファン・エイクなどの斬新で独特なリメイク作品で、ヨーロッパの古い巨匠たちへの敬意を表している。

「オコジョを抱く女性」(ダ・ヴィンチのリメイク)、ジョコンダ
「ヤン・ファン・エイクここにありき」(左)、「耳飾りの少女」

 2013年、ユマ・サーマンの父親が主催するニューヨークのチベットの家で、ゾリクトの「ステップのニルヴァーナ」シリーズが紹介された。そしてクリスティーズの共同オークションで、ユマ・サーマン自身がゾリクトの作品の一つを出品した。 

アプリコット畑のおとぎ話、2015年

 2015年、モスクワのトレチャコフ美術館で個展が開かれた。「想像の現実」と名付けられた展覧会で、ゾリクトはすでに彼の作風として知られていた遊牧民、東洋の王女、おとぎ話の登場人物などのイメージを展示した。

「画家とダンギナ」

 2019年、ゾリクトの作品「新たなステップ」がヴェネツィアのビエンナーレで展示された。「ステップ・ポップアート」と名付けられた作品は、聖ジョージ教会に飾られ、街には「遊牧民」の彫刻が設置された。

「婦人 2.1」
「シルクロード」

 故郷のウラン・ウデにおいて、ゾリクトはアートシーンを超えた絶対的なスターである。2019年、ゾリクトは街の壁画の制作を依頼される。街への「贈り物」は、地元の詩人ナムジル・ニムブエフの作品「朝の礼拝」をテーマにしている。

 2020年、展覧会「スクラップマン」は、パンデミックと自主隔離の影響を受けている。この中でゾリクトは、世界の外的および内的境界線について、またいかにして現実の生活がフラグメントでできたカオスに取って代わられたのかについて思いを巡らせている。

「パッチワークマン」

 2022年、ゾリクトは新たな展覧会「時間との争い」を開催した。

「亡霊の騎士」

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