ロシアの奇妙奇天烈な像15選

カルチャー
ゲオルギー・マナエフ
 この不思議の国には何でもある。四輪で移動する鉄道レーニン、浣腸器を抱えるキューピッドたち、そして日ごとに違う窓の外にぶら下がるぽっちゃりした恋人のブロンズ像。この国で最も奇妙奇天烈な像の裏側にある素敵な物語をご紹介しよう。

 1. 透明人間

 H. G. ウェルズの小説に登場する透明人間に捧げられた初の記念碑は、エカテリンブルグに1999年に建てられた。「青い鼻」グループの2人のアーティスト、エヴゲーニー・カシモフとアレクサンドル・シャブロフは、これを「インターネットでしかコミュニケーションを取らない世界での孤独と誤解の悲劇に捧げた記念碑」と称した。冬にこの記念碑が雪に埋まって“見えなくなる”のは何とも愉快だ。

2. スイカ

 この巨大なスイカはシベリアのアバカン(モスクワから3376㌖)に“生えて”いる。ここでは冬の気温が摂氏マイナス50度に達することもある。ここでスイカが栽培されていることはまさに驚異だ。「シベリアのイタリア」と呼ばれるミヌシンスク盆地は、サクランボやスイカの栽培が可能な微気候を特徴としている。地元の人々は、この街の果物が「有名なアストラハンのスイカに引けを取らないほどおいしい」と胸を張る。

3. サッカーファン

 このサッカーファン像はスタジアムを土台にしている。本当に!トムスク(モスクワから2878)にある像はブロンズの客席に座している。このサッカーファンは試合に完全に没頭しており、靴紐は解け、タバコが口元から落ちかけている。この像は、地元サッカークラブのアーカイブで見つかった1950年代の写真に写っているファンをモデルにしている。

4. 水道管

 モスクワ郊外のムイチシチにある一見奇妙なこの記念碑は、モスクワの水道建設200周年を記念したものだ。モスクワの水道事業は、ムイチシチから市の中心部へ水道を引いたことから始まった。

5. サイクリング家族

 この像はモスクワ随一の奇抜な彫刻家アンドレイ・アセリャンツによって作られた。モスクワには、彼が手掛けたスチームパンク様式のモニュメントやランドマークが10基以上存在する。いずれも金属片でできた頑丈な作りが特徴だ。これはモスクワの某公園にあるもので、地元のサイクリストの間で非常に人気がある。

6. 二面像

 この像はモスクワで最も見つけにくいものの一つだと言われる。作者不詳で、裕福なパトロンの個人的な注文で作られたと見られるこの「二面像」は、市の中心から南西にある市内有数の高級住宅地「ゴールデン・マイル」に鎮座している。同様の像が3体あり、2体はモロチヌイ横町とブチコフスキー横町との交差点にある庭園に、1体はモロチヌイ横町5番の庭にある。

7. 四輪レーニン

 世界でただ一つの可動式ウラジーミル・レーニン像は、モスクワの3つの主要な駅が集まるコムソモリスカヤ広場の近くの線路脇にたたずんでいる。1925年に鉄道労働者らが建てたこの像は、革命の指導者の像をまだ持っていなかった町や村で共産党の大きな集会が開かれる際に使用する目的で作られたものだ。なおレーニン像は台座の上で360度回転可能。

8. チーズ・スプレッド

 「ドルジバ」はソ連時代の伝説的なチーズ・スプレッドで、安価であるがゆえにソ連の人々の間で大変な人気を博したことで有名だ。2005年に記念碑が建てられた。チーズを抱えているカラスとキツネは、ロシアの作家イワン・クルィロフがイソップ童話を基にして著した有名な童話『カラスとキツネ』のキャラクターだ。童話の中で彼らは一切れのチーズをめぐって争うが、記念碑は彼らがチーズを味わって喜んでいる様子を表現している。

9. 愛し合うカタツムリ

 この像はモスクワのクルキノ地区に2006年に建てられた。見るからに奇妙。

10. 「見ず知らずの人と話すこと禁止」の標識

 この標識は本物のように偽装してあるが、実際はユーモア溢れる飾り物だ。モスクワの総主教池にあるこの標識は、ミハイル・ブルガーコフの小説『巨匠とマルガリータ』を意図して作られている。この物語は総主教池での見知らぬ人との遭遇で幕を開ける。近くには、小説をテーマにした博物館になっている、有名な「良からぬアパート」がある。我々のガイドで他に小説と関わりのある場所9ヶ所をチェックしよう。

11. 浣腸

 この像の不条理さはあなたの背筋を凍らせるかもしれないが、ロシア人は平気だ。世界で唯一の浣腸像は、保養施設とサナトリウムで有名なジェレズノヴォツク(モスクワから1347)にある。制作者によれば、キューピッドたちはサナトリウムの看護師を象徴している。

12. キーボード

 エカテリンブルグのもう一つの「傑作」であるこの巨大なキーボードは、2005年に作られた。記念碑としての公的なステータスは得ていないのだが、特に104あるキーのそれぞれに腰掛けられる場所として、このキーボードは地元の人々に大変人気がある。コンピューターのマウスやモデムの記念碑を作ろうという計画もある。

13. コヴァリョフ少佐の鼻

 この「コヴァリョフ少佐の鼻」像は、ニコライ・ゴーゴリの不条理な短篇の主人公に捧げられたものだ。文官のコヴァリョフは、朝起きると自分の鼻がないことに気付く。さらには彼の鼻が一人前の人間と化して活動していることを知る。この鼻の像はピンク色の大理石でできているが、これはゴーゴリの故郷であるウクライナで採れた石だ。

14. ぶら下がる恋人

 こちらがトムスクのもう一つの「宝石」。この像は可動式だが、もっとユーモアに富んでいる。地元の彫刻家オレグ・キスリツキーが作ったこのブロンズ像は、大きなパンツを穿いており、どうやら不倫相手の夫が思いがけず帰宅したらしく、恋人の家の窓にぶら下がっている。トムスクのすべての家がこの奇天烈な飾りを歓迎したわけではなく、アーティストはさまざまな家に順次これをぶら下げることにしたが、ついには地元の博物館にたどり着いた。2001年の除幕式でメンデルスゾーンの「結婚行進曲」が演奏されたが、多くの人がそれをユーモラスだと評価したようだ。

15. おろし金

 エカテリンブルグは明らかに創造精神に満ち満ちている。この調理用おろし金の像は、台所や食べ物、家政婦に捧げられたものではない。むしろ、碑文にあるように、ここは「議論の場」なのである。裏側には擦り下ろされる脳がある。気持ち悪い? そうかもしれない。だがロシア人はこのジョークを解する。ロシアの現代の俗語では、「チョルカ」(「おろし金」)という言葉は、「議論」(白熱した議論)をも指すのだ。したがって、制作者らは多分、この像が激しいディベートを記念したものだということを仄めかしているのだろう。