真の英雄と呼べる7人のロシア人

カルチャー
ゲオルギー・マナエフ
 戦士、歌手、宇宙飛行士、あるいは危険や恐れを顧みずにやるべきことを成し遂げた人々。これが現在のロシア人に知られ、尊敬される英雄たちだ。

1. ユーリー・ガガーリン 

 人類最初の宇宙飛行士であるガガーリンは、模範的なソヴィエト市民でもあった。勤勉で教養があり、結婚して子供もいた彼は、ソヴィエトの多くの人々が親近感を持ち得る人物だった。労働階級の真の英雄として、彼は一般市民が星になるというソヴィエトの夢を体現していた。素朴だが紳士的で、仲間の市民とも英国女王とも気さくに話せるというその人物像こそが、彼が今日まで記憶され尊敬され続ける理由だ。

 

2. ヴラジーミル・ヴィソツキー

 しばしば“世代の声”と称されるシンガーソングライター、ヴラジーミル・ヴィソツキーが生きたソヴィエトの停滞期は、ソヴィエトの人々の問題や感情にきちんと注意が向けれない時代だった。ヴィソツキーは自身の詩と歌で人々の声を代弁したため、その多くは公式に禁止された。彼は労働者にも知識層にも尊敬された。彼のレコードは部分的に禁止されていたが、彼は怒涛のようなコンサート・スケジュールをこなし、当時の人々の英雄の一人となった。1980年にモスクワで行われた彼の葬儀には世を去った天才を追憶しようと大勢の人々が集まった。

 

3. ヴァレンチナ・テレシコヴァ

 宇宙へ行った初の女性であるヴァレンチナ・テレシコヴァは、独力で宇宙飛行を完遂した唯一の女性でもある。彼女は当初5人の女性の中から選ばれたが、それは彼女の雄弁さと、ソヴィエトの生き方・イデオロギーを広める才能のためだった。テレシコヴァは宇宙で3日間過ごした。

 「打ち上げの際の正確さと調整能力はガガーリンの打ち上げを想起させた。ヴァレンチナを選んで間違いはなかったと分かり嬉しくなった。」テレシコヴァの宇宙への打ち上げ準備を担当したカマニン将軍はそう話した。後年彼女は科学者になり、ロシアの宇宙部隊の未来の世代を育成した。

 

4. スタニスラフ・ペトロフ

 彼の名はほとんど知られていないが、ペトロフは核衝突を未然に防いだ人物である。1983年9月26日、米ソの関係が緊張する中で、ソヴィエト連邦の核攻撃早期警告システムがアメリカからの複数の弾道ミサイル発射を知らせた。

 しかしペトロフは警告が誤報だと正しく特定した。直ちに反撃して報復せよとの指示が出ており、核戦争に繋がりかねなかった。結局ペトロフはその行動で罰せられも表彰されもしなかった。

 

5. ユリヤ・コロリ 

 2016年6月18日、カレリア地方のシャモゼロ湖でボートに乗っていた小学生の集団が嵐に遭った。ボートが転覆し、子供たちが溺れ始めたとき、14歳のユリヤ・コロリは何人かの下級生を助け出し、それから近くの村まで走って非常事態省に水難事故のことを通報した。彼女の偉業がより多くの子供たちの命を救った。彼女の“極限状況で人命を救助するという勇敢で決断力のある行動”により、ユリヤはヴラジーミル・プーチン大統領から“人命救助の功績”を表彰する国家メダルを授与された。

 

6. ゲオルギー・ジュコフ

 第一次世界大戦で軍に入隊した職業軍人の将校ゲオルギー・ジュコフは、将軍として第二次世界大戦を戦い、赤軍参謀本部で軍務を行った。彼の最大の功績には、レニングラード包囲の打開作戦を指揮したこと、ナチスに対する数々の攻撃作戦を成し遂げたこと、そして1945年5月8日にドイツの降伏を受け入れたことが挙げられる。ジュコフは第二次世界大戦でナチスを下してソ連を勝利に導いた軍事的指導者として広く認識されている。

 

7. イヴァン・スサーニン

 動乱時代の1613年、ポーランド軍がモスクワを侵略したとき、イヴァン・スサーニンはドムニノ村の農奴だった。この田舎の隠れ家に、後にツァーリとなるミハイル・ロマノフが母親とともに隠れていた。ポーランド人はこのことを知り、ミハイルを捕らえるため部隊を差し向けた。彼らはスサーニンに会い、ロマノフの隠れ家への道を教えなければ拷問すると脅した。イヴァンは道を教えることを約束してポーランド人を違う方向の森の中へと導き、義理の息子を遣ってロマノフ親子に危険を知らせた。スサーニンはポーランド人に惨殺された。19世紀後半にミハイル・グリンカのオペラ『皇帝に捧げた命』で中心的な人物になったスサーニンは、愛国主義および祖国への献身の国民的な象徴となった。