「へき地」、エレーナ・アノソワ作=
報道写真ロトチェンコ記念モスクワ・フォトグラフィー・マルチメディア・スクールは瞬く間にロシア現代芸術を代表する有名ブランドとなった。2016年、スクールは創立10周年を迎える。創立者であるモスクワ・マルチメディア・アート・ミュージアムのオリガ・スヴィブロワ館長は、世界各地でロシアの写真展を開催しつつ、自ら教壇にも立ち、また卒業生たちの作品を紹介する展覧会を企画している。
スクール卒業生の中から、ロシア内外で注目されつつあるもっとも才能あふれる6人をロシアNOWが選んだ。
「Mad Mimes」 、 ドミトリー・ヴェンコフ、 ビデオ提供: Vimeo
ビデオ・アート作家。芸術集団を主なテーマとしている。作品はドキュメンタリー・フィルム形式をとっているが、ストーリーは完全に虚構の物語に基づいて作られているものもあれば(モキュメンタリー)、フェイスブック上での哲学者、芸術家、評論家らのコメントのやり取りなど、実際の出来事をベースにしたものもある。
受賞歴に、映画「Mad Mimes(狂ったマイム)」に対しカンディンスキー賞(2012)、ベルゲン・ビエンナーレ、モスクワ・ビエンナーレ(2013)入賞などがある。また今年、映画「Crisis(クライシス)」がオーバーハウゼン国際短編映画祭で初公開された。
ポリーナ・カニス、 filmflakes、ビデオ提供:Vimeo
ポリーナ・カニスの初期のビデオアート作品は公共での実験的動画を基に構成されている。カニス自ら主役となり、道行く人々の足を洗ったり、テレホンセックスのサービス会社とやり取りしたり、投げられた生卵を手でつかんだりと、人々の好奇心をかきたてるシチュエーションを作り出す。しかし後に作品は哲学的概念に訴えかける寓意芸術の形式をもつようになった。
現代芸術の分野におけるロシア国内賞、カンディンスキー賞(2011)とイノヴェーション賞(2014)を受賞。
エヴゲーニー・グラニリシコフ、ビデオ提供:Vimeo.
グラニリシコフの作品の構造はソーシャル・ネットワークの動画を思わせる。生活のさまざまな場面の出来事をつなぎ合わせ、印象派を思わせるひとつの流れを作り出している。前衛音楽、写真、動画、切り取られた言葉を用いて脈動的な詩的現実を描く。その作品は彼自身、そして同世代の人々の運命をテーマにしたヴィジュアル・エッセイである。
グラニリシコフは2014年に長編映画「To Follow Her Advice」でデビュー。2016年にはマルチメディア・アート・ミュージアムに於いて、個展「Untitled(After Destruction)無題(破壊の後)」を開催。また今年、オーバーハウゼン国際短編映画フェスティヴァルで映画「Unfinished Film」を公開した。
「黒海でのバケーション」、写真提供:マルチメディア・アート・ミュージアム
ニキータ・ショホフの写真でフォーカスされているのは世界との直接的な結びつきで人々を驚かせる類まれなる人々。ショホフは文化のお祭り騒ぎ的ないわゆる卑俗な側面を詩的に表現しながら、哲学者らやヨーロッパ文化思想家ミハイル・バフチンの研究を基に現実を見つめる。グロテスクの手法を用いることで、カメラに捉えられた人物たちの個性を余すところなく表現している。最近の作品では、個人ではなく集団心理にテーマを求めている。
2014年、世界報道写真展(ワールド・プレス・フォト・コンテスト)ステージド・ポートレイト(演出肖像)部門で3位入賞。またロシア国内コンクール「銀のカメラ」の「顔」部門でグランプリ受賞。
「へき地」=報道写真
ドキュメンタリー写真家。複雑な境遇に置かれた女性の運命を追う。とりわけ刑務所、兵営、修道院など閉鎖された女性の施設などを得意テーマとしている。代表作「Section」はシベリアの矯正施設を舞台に撮影されたもので、収監されている女性たちが自分にとってもっとも大切なもの―クロスワード、編み物、花などとともに映っている。この作品に対しては2016年、ヘレラウ写真賞を授与された。新たな作品ではHIVに感染した妊婦にレンズを向けている。
「閉鎖都市」=報道写真
文明から隔離された地に被写体を求める旅行写真家。写真を通して、環境に目を向け、それと触れ合う。作品「Escape(隠遁)」はロシアとウクライナの僻地に暮らす隠者がテーマとなっている。またシリーズ「Restricted Areas(閉鎖地区)」ではソ連時代のかつての閉鎖都市にある廃墟と化した秘密施設を撮影した。
2014年に世界報道写真展(ワールド・プレス・フォト・コンテスト)1位入賞。2015年には、ヨーロピアン・パブリッシャーズ写真賞を含む8つの国際コンクールで入賞。トカチェンコの写真はナショナルジオグラフィック誌、ガーディアン紙、ワシントン・ポスト紙、シュピーゲル誌などに掲載されている。
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