マリインスキー・バレエ団公演中

マリインスキー劇場バレエ団のユーリー・ファテエフ団長代行=

マリインスキー劇場バレエ団のユーリー・ファテエフ団長代行=

バレーリイ・シャリフーリン/タス通信
 マリインスキー劇場は3年ごとに日本公演を行っている。今年は日本のファンに初めて、「ジュエルズ」と「愛の伝説」を披露する。ロシアNOW記者は東京で、マリインスキー劇場バレエ団のユーリー・ファテエフ団長代行にインタビュー。ファテエフ氏は、日本への愛や、新たな才能、そしてロシア・バレエが海外で人気を博している理由などについて語った。

マリインスキー・バレエ団は日本へ行くのが好きですか?

 その点では皆同じ意見でして、日本は最も好きな国の一つです!私も大好きです。私が最初に来日したのは1986年のことで、すぐにほれ込んでしまいました。以来、その気持ちは変わっていません。日本は特別な国で、メロディアスで柔らか味のある言葉からしてそうですよね。しかも、空港から列車に至るまで、劇場もサービスも最大限に快適な国です。

 マリインスキー劇場バレエ団の初来日は50年以上も前に遡り、まだソ連時代でした。その時公演に参加した指導者、教官たちがまだ働いてますよ。例えば、ゲンナジー・セリュツキーです。ちょっとした秘密をお話しましょう。我々が公演する東京文化会館には、伝統がありまして、楽屋裏の壁に落書きをするんです。1961年の「セリュツキー」という落書きが残ってますよ。3年前にここにやって来た時、彼は私にそれを見せてくれました。

「ジュエルズ」バレエ=写真提供:www.mariinsky.ru

日本でロシア・バレエがすごく人気があるのはなぜだと思いますか?なぜバレエなんでしょう?

 日本人には、舞踏芸術に対する鋭い感性があります。とても音楽的な国民ですね。ですから、音楽と舞踏の総合芸術であるバレエは、日本人に大きな印象を与えるのです。

 私には、熱狂的なバレエ・ファンである日本人の友達がいますが、彼らはある時バレエに惚れ込み、その愛が一生続いているんです。しかも、こういうファンは一大ネットワークを形作っています。日本人自身が、ロシアのアーティストは、バレエにぴったりだと言っています。これはロシア人の独壇場の芸術だと自負しています。

 

日本で上演するレパートリーには何か特徴がありますか?

 日本人には「白鳥の湖」が欠かせません!概して、日本人はチャイコフスキーが大好きですね。彼らにとっては作曲家№1です。だから、「白鳥の湖」と「くるみ割り人形」は演目に入れなければなりません。

 

マリインスキー・バレエ団には、日本人バレリーナの石井久美子がいますね。彼女も公演に参加しますか?

 ええ、日本女性を連れてこないわけにはいかないじゃないですか。日本公演に日本女性を連れてくるというのは、今風に言うと、「フィシュカ(仕掛け)」ですよ。久美子はロシア語が話せますし、サンクトペテルブルクのワガノワ・バレエ・アカデミーを卒業しています。姿が美しく、コール・ド・バレエに入っていますが、いくつかのソロも踊ります。

 ちなみに昨年夏、ロンドン公演の時のこと、我々はイギリス人の団員、ザンダー・パリッシュ(Xander Parish)を連れていったのですが、彼は以前は、イギリスの王立バレエ団(ロイヤル・バレエ)で踊っていました。これが大変なブームになったのです!すべてのマスコミが彼に釘付けになりました。ロイヤル・バレエにいた時は、大した役は踊っていなかったのですがね。舞台の袖で、槍を持ちながら、他のダンサーたちが踊るのを眺めていただけでした。ところが、マリインスキーでは、「白鳥の湖」も「ロミオとジュリエット」も「ジゼル」も踊っています。我々が彼を伸ばしたんです。我々はサッカーみたいに、高いギャラをもらっているスターを引き抜くようなことはしません。我々は、いわば「粘土の半製品」を集め、年月をかけてそれを捏ねて、スターを育て上げていくんです。これがマリインスキーの原則ですよ。

ザンダー・パリッシュ=バレンチン・バラノーフスキイ撮影/タス通信

 

「粘土捏ね」が終わった後で、新星たちは故国に帰りたがりませんか?

 ケース・バイ・ケースですね。パリッシュの場合は、ロシアに住んでマリインスキーで働きたいといつも言っています。彼はいろんな国に招かれていて、そういう可能性があるときは、ゲストとして出かけて踊っています。考えてみていただきたいのですが、 イギリス人ザンダー・パリッシュがマリインスキー劇場のお墨付きで公演しているわけで、これもまた、この劇場と国のイメージの向上に一定の役割を果たしているんです。

 今日では、わがバレエ団のダンサーたちは、多くの舞台で引っ張りダコです。例えば、今春、やはりマリインスキーで育ったキム・キミンは、アメリカン・バレエ・シアターで「バヤデルカ(ラ・バヤデール)」を踊り、評論家とバレエ界全体から最高の評価を得ました。キムは韓国人です。韓国芸術総合学校舞踊院で、やはりロシア出身のマルガリータ・クリークとウラジーミル・キムに8年間師事しています。彼は、マリインスキー初のアジア出身プリンシパルですね。

「愛の伝説」バレエ=写真提供:www.mariinsky.ru

才能ある日本人ダンサーはいますか?

 日本にバレエ教室、バレエ学校がいくつあるか、ご存知ですか?1万5千ですよ。私は最近、YAGP (ユース アメリカ グランプリ)で審査員を務め、その準決勝は大阪で開催されましたけど、参加者が実に740人にのぼりました!ただ、主催者が私に話してくれたところでは、以前は参加者こそ少なかったものの、才能あるアーティストの数はもっと多かったとか。今は才能は払底しているそうで、これは世界的な傾向でもあります。バレエ界でも才能はごく一握りです。

 でも、例えば、私が夏季セミナーで発見した才能豊かな少女がいます。彼女は日本人とアメリカ人のハーフで、現在、モナコ王立グレースバレエ学校で学んでいます。まだ15歳ですが、私はもう彼女に、マリインスキーで自分の力を試してみないかと提案しました。彼女は「天の賜物」と受けとったようで、泣き出してしまいました。

 

彼女の名前は?

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 メイ・ナガヒシです。彼女はスターに育つかもしれません。身体的素質と内面から発散するもので分かるんです。比類のないエネルギーと身体的美を兼ね備えていますから。あと、1年半も勉強すれば、彼女をめぐり争奪戦が始まると思います。でも、我々は、何を彼女にオファーすべきかはっきり知っています!

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