なぜこんなにたくさんの風変わりなお茶が要るの? 紅茶があれば十分でしょ?」 ロシア人のお茶に対するこだわりを理解できない私のオーストラリア人の友人は、こう問いかけた。
ロシアではこれまで長期間にわたってお茶が愛飲されてきた。その習慣の起源はスビテン (ハーブと蜂蜜を用いた飲み物) だったが、次第にそれはお茶へと変遷していった。それと共に、お茶を淹れたり絵画の素敵な背景として、有名なサモワールが使用されるようになった。
今日、ロシアのレストラン、カフェや家庭で出されるお茶には実に様々な種類のものがある。紅茶、緑茶、レッドティー (ルイボス)、ハーブティーや、おしゃれなバーのカクテルと同じくらい洗練されたブレンドなどである。
私たち (あるいは少なくとも自分の場合) はお茶が大好きだ。寒い時は体を温めてくれるし、物事を後回しにする格好の言い訳になるし、社交的な機会にぴったりで、甘物を楽しむのにも最適だからだ。
自分が子供の頃のお茶というと、選択肢が限られていた。いつも紅茶で、ハーブやベリーを加えたのはそれらが手に入った時だけだった。当時の紅茶は (今でもそうだが) レモンと砂糖を足して飲んだ。それはカップの中で溶かすか、「ヴプリクスクス」と言ってお茶を飲みながら砂糖をかじる方法があった。様々な種類のジャムも同時に出された。私の弟はとりわけ甘い紅茶が好きで、子供の頃は「おじいちゃんの紅茶が一番だよ!」と言ったものだ。「おじいちゃんの紅茶」についてよく考えてみると、最高の紅茶を作る秘密は、カップあたり砂糖を大盛りで3さじ入れることにあったようだ。
この本でお茶を淹れる方法のレシピは、当然ながら紅茶を使用するものだ。それは、お茶がグルジア、アゼルバイジャンやクラスノダールから伝わったこと、そしてソ連の紅茶は「いつも、とても自然」であることを説明している。また、ソ連には緑茶があったが、それが飲まれていたのは極東ロシアと現在の中央アジアにあたる共和国諸国に限られていたという、私には考えつかなかったことも説明している。
「戦争中、私たちは『お茶』を作るのに乾燥ニンジンやベリーの葉を使っていました」とおばあちゃんは言っていた。「戦後はたくさんお茶を飲みました。お茶1杯とサラミのサンドイッチだけでも立派な食事でした。一番人気のお茶はインド産だったけれど、簡単には入手できませんでした。お茶は、特別な機会に職場で支給される配給パッケージに必ず入っていましたが、それがいつもインド産の『3頭のゾウ』ブランドだったわけではありません。農村では、サモワールから出すお茶を飲んでいました。何時間もかけて、一家で10リットルは飲んだでしょう。ティーカップや受け皿を使って、お茶を受け皿に注いでそこから直接飲むのです」
私が子供の頃、「ティー・マッシュルーム」と呼んでいた別の種類の飲み物があった。これはイーストとバクテリアを甘いお茶で混ぜたものだ。その外見は、お茶が入った大きな瓶の中に浮かぶペシャンコになったクラゲのようなものだった。その液体は黄色っぽくなり、ほのかに発泡性になり、ちょっと酸っぱい味がした。瓶の口の部分には輪ゴムでガーゼが留めてあり、「お茶」を濾す役割を果たしていた。それはとても健康的であると考えられており、自分の子供の頃は1日がコップ1杯の「マッシュルーム」で始まることがよくあり、痛くなることがよくあった喉にヒリヒリとする刺激の感覚をもたらしたものだ。
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家に遊びに来た友だちの中にはその正体を知らない子もいたが、おばあちゃんは気前がよかったので、その使い方の説明と共に必ずマッシュルーム1個が与えられた。こうして他の子の家で瓶の中に入れられ、誰かの喉を刺激することになった。
「私が知っている家庭にはかならずティー・マッシュルームがありました。私たちはそれでありとあらゆる病気が治ると思っていました。ところがある日突然、瓶がなくなったのです。それがいつのことかも、その理由も覚えていません!」 おばあちゃんはこう嘆いた。
私たちロシア人がティー・マッシュルームを飲んだりサモワールを使うことはなくなったかもしれないが、お茶に対する愛着だけは決してなくなることはない。この原稿を書いている最中だけでも、私はもう5杯のお茶を飲んだ。体を温めてくれたが、書き終えるのに2時間も余分にかかってしまった!
近頃、ソ連はグルジアだけでなくアゼルバイジャンやクラスノダール地方の黒海の沿岸でもお茶を栽培し始めた。
ソ連のお茶は味覚、香味や煎じ液という点で優れている。
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お茶は密閉された容器に入れて乾燥した場所に保管し、強い臭いのする場所は避ける必要がある。お茶を淹れる前に、熱いお茶が出せるように熱湯をお茶の葉にかけて1煎目を捨てる必要がある。次に、お茶に新鮮な湯冷まし水を注ぐ。当初はやかんの容積の2/3以下しか注がないこと。
お茶を煎じたら、やかんに布かタオルをかけて5分ほどそのままにしておく。次に熱湯を加えて、お茶をグラスに注ぐ。
お茶の葉が入ったやかんを火にかけてはいけない。そうするとお茶の味が台無しになってしまう。熱湯でお茶を淹れると、やはりよい味にはならない。
* この記事はアンナ・ハルゼエワさんの「ソビエト時代の食生活」と題したブログからとられたものです。もっと詳しく読みたい方はこちらへどうぞ。
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