出演者はロシアバレエを代表するファルフ・ルジマトフ、日本舞踊の名家を継ぐ藤間蘭黄(ふじま・らんこう)、ロシアのボリショイ・バレエで長年活躍した岩田守弘の各氏。
「規模が大きくない劇場の方が観客を身近に感じられる」というルジマトフ氏がこの劇場で踊ることを望む一方で、2010年に氏の舞台を鑑賞した藤間氏が「即座に織田信長が思い浮かんだ」ことが、創作と公演のきっかけとなった。藤間氏は岩田氏に振り付けのロシア語訳だけを頼むつもりだったが、彼と接した後は筋書きを変えて、出演を依頼した。
演目ではルジマトフ氏が信長を主演。若き日の豊臣秀吉(岩田氏)や明智光秀(藤間氏)らとの出会いや衝突を通しながら、激しい生涯を描いている。演出は藤間氏。
舞台では琴が演奏され、鼓や太鼓、笛などのおはやしも入った。古典バレエとはリズムが異なる邦楽だったが、ルジマトフ氏は「エネルギーに満ちて、きれいな音で、違和感なく踊れた」と満足感を表す。
公演直後には古典芸能の殿堂である国立劇場が異例の盛り上がりを見せた。鳴りやまぬ拍手に応えたルジマトフと岩田両氏が本編の一部を再現したり、跳躍や回転の技を繰り出したりした。
藤間氏は「面白いですね。予定調和的に喜んでもらえるとは思っていたが、これほどまでにウワーッというのは意外。ありがたいです」と興奮を隠さない。この劇場で初めて踊った岩田氏は「場内の『気』がすばらしい。生きている劇場にほれました」と絶賛。「観客の目を見つめ返すことができた」とルジマトフ氏も語る。
出演者同士も褒め合った。演出も担った藤間氏は2人のダンサーについて「(意図を)ちゃんと受け止めてくれたので、私は大きな懐で好き勝手にやらせてもらえた」と話す。ルジマトフ氏も「藤間さんのエネルギーは無限大」とたたえる。52歳に達しながらも激しく踊ったルジマトフ氏について、岩田氏は「やはり達人。尊敬しています」と古くからの友人に脱帽してみせた。
今回は3回の公演だったが、藤間氏は「余計な部分や足りない部分もある。最低でも10回はやらないと自分のものにならない」と同じメンバーによる再演に意欲を示している。
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