クレムリン料理長に聞く舞台裏

コンスタンチン・マクリジン氏=写真提供:restorate.ru

コンスタンチン・マクリジン氏=写真提供:restorate.ru

クレムリンの料理長であるコンスタンチン・マクリジン氏が、大統領を筆頭とするロシア政府関係者や外国の賓客にふるまっている料理などについて語った。

-ロシアにはもう政府の試食係(毒味役)がいないようですが、それでも安全管理のレベルは高いのですよね。

 映画「パリのキッチン(Kuhnya v Parije)」(2014年、ロシア)のワンシーンでは、大統領がカフェに行くことになり、到着前に安全担当が店内を隅々まで入念にチェックしていますね。あれはかなり現実的です。コメディー映画なので、おもしろおかしく描かれていますが、実際の現場は緊張に満ちています。

 

-安全管理はどのように行われているのですか。

 厳格です。使ってはいけない食材のカテゴリーがあります。例えばナッツ、蜂蜜。理由はわかりませんが、恐らく、強いアレルゲンだからでしょう。門前払いになる食材もあります。例えば、白いキノコ。私は大好きですが、発がん性物質、放射能などがあるかもしれないので、いかなる饗宴のメニューにもそれを含めることはできません。

 公式レセプション用だと各食材が調べられます。レセプションの2日前に魚、肉を、1日前に野菜、果物を提示します。つまり、各レセプションの前に、ロシア連邦警護庁の医師が来て、分析のために各食品のサンプルを取るのです。何かが不合格になったら、可及的速やかに変更しなければなりません。私が料理している間も、医師はキッチンに座ってずっと監視しています。

 

-調理の基準はどのようなものですか。ヨーロッパではロシアよりも低い温度で肉を調理しても良いようですが。

 牛肉の最低調理温度は大まかに言うと70~75度です。このような温度で普通の肉を焼くと、かみきれなくなってしまいます。それはもはや靴底です。ヨーロッパのどのホテルでも、ステーキの調理温度はミディアムレアで50~55度、ミディアムで60度です。ロシアの基準ではこれは不合格になります。上の世代の医師が、肉から血が滴っていて焼き足りないと言う可能性があるためです。ですが本物のステーキはこうやって食べるものです。ウェルダンよりもこういう肉の方がおいしいのです。

 魚についても同様です。フランス人は、例えば、十分に焼かれていない鮭を食べますし、これは正常なことです。もし私がこのような料理をつくったら、「食中毒にさせる気か」と怒られるでしょう。1000人分の料理をつくる場合、それは確かに危険な可能性があります。ですから念には念を入れなければなりません。

 

-例えば、生卵を使う料理はつくりますか。

 チョコレート・ムースなどですか。つくりません。例えば朝食にエッグベネディクトやポーチドエッグなど、なにかおもしろい料理をつくれないかと何度も考えましたが、それは厳密に禁止されています。

 

-でもエッグベネディクトやポーチドエッグはゆでられていますよね。

 ゆでられていますが、半熟ですから。黄身は生です。エッグベネディクトの中からは黄身がソースのように流れ出します。ロシアの医師はそれを許容しません。リスクを完全かつ最大に排除しなければいけないのです。国際的なスキャンダルなど起ころうものなら。レストランなどならまだしも、私には全責任がありますからね。

 

-賓客を驚かせるために、古代ルーシのレシピを探したりしますか。

 もちろん探しますが、実際につくることはまれです。すべての料理を現代式にアレンジすることになりますから。ロシア国内をよく移動します。ここ1年でカザンに行き、ソチに行きました。9月にはアストラハンでジャーナリストに料理をつくりました。大統領が出席する公式晩餐会が2回あったのです。メニューを考える前に、アストラハンの味を学ばなければなりませんでした。例えば、地元ではカワリチョウザメが人気なので、これは欠かせません。または人気のチーズや地元野菜。でも料理は独特なものでなければなりません。アストラハンに関しては、アフガニスタン、カザフスタン、アゼルバイジャンの代表団への敬意の印として、メニューから豚肉を完全に除外しました(イスラム教で豚肉は禁止されているため)。

 

-例えば、ウォッカの肴には何を提案しますか。

 塩漬けニシンをのせた黒パン「ボロジンスキー」のオープンサンド、キュウリ、キャビア添えクレープ以上の肴はまだ考案されていません。フランスのマスタークラスにいた時は、うす塩のキュウリにしていたので、スグリの葉、ディルを持っていかなければなりませんでした。パリでは見つけることができませんから。

 

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-近い将来、国際的な調理イベントに参加する予定はありますか。

 あります。いくつか誘いを受けています。最近では例えば、「クラブ・デ・シェフ・デ・シェフ(首脳の料理人クラブ)」の会合に招待されました。各国の首脳の料理人が集まり、経験やレシピを共有するクラブです。クラブにはプーチン大統領の料理人として呼ばれましたが、私は大統領の個人的な料理人ではありません。別にいます。私は大きな晩餐会がある時にのみ、大統領のためにつくります。

 

記事全文(露語)