怖かった「山村貞子」展

アナトリイ・メドヴェーディ撮影

アナトリイ・メドヴェーディ撮影

映画「リング」(1998)の主人公である山村貞子を通じて日本の怪談を紹介し、7日間を体感させる企画展を、ロシアNOWの記者が取材した。

 サンクトペテルブルクの国立彫刻美術館でハロウィンの10月31日、フェスティバル「日本の秋」の一環として、2時間限定の「山村貞子」展が行われた。

 美術館入り口には「入場するべからず、とても恐ろしい」と書かれている。だがハロウィンで吸血鬼や魔女の衣装を身にまとっている訪問者は、これに動じない。むしろ自分たちも他の人を怖がらせたいのだ。入場者の誰もがお守りを受け取る。首には白いサテンのリボンを、手首には黒いリボンを結ぶ。だが中にいる幽霊の攻撃から守られるわけではなかった。幽霊は首のスカーフをとったり、肩に頭をのせたりして入場者を怖がらせる。

 白装束の貞子もゆっくりと浮遊している。顔は真黒な長い髪で覆われ、手の取れた犬を連れている。誰もが貞子を避け、道を空けるが、貞子に背を向けて道を阻み、おしゃべりに夢中になっている人もいる。映画の恐ろしい音楽は、驚いた入場者の叫び声でさえぎられる。

 展示会では貞子にまつわる日本文化を見ることができる。会場の一部では「怖い書道」のマスター・クラス(教室)が開催され、入場者は筆で紙に「リング」と書いている。日本語を学ぶロシアの学生は、ふざけて「酒」などと書いている。

 

貞子になった気分で

サンクトペテルブルクの国立彫刻美術館で

ハロウィンの10月31日、フェスティバル

「日本の秋」の一環として、2時間限定の

「山村貞子」展が行われた。

 濡れた貞子が井戸から這い出て、テレビの画面から飛び出す映画の場面は、世界中の人によく知られている。今回の展示会には井戸もある。井戸の模型の中には誰もが入ることができて、あの場面を再現できる。在サンクトペテルブルク日本領事館の職員も貞子になっていた。

 日本領事館広報文化部の中村氏のお気に入りの映画も「リング」だという。「日本の幽霊の貞子は吸血鬼などの他の国の亡霊とは異なる。映画を見た時にじっとりとした感覚を覚えるが、吸血鬼の感覚はよりカラッとしている。貞子はすでに死亡しているため、生きた人間への妬みがある。そのため、どの日本人もじっとりとした感覚を覚える」

 

可哀想な女の子の幽霊

 展示会主催者で「露日友好会」の幹部であるエレーナ・カバチンスカヤ氏は、この「じっとり」感がロシア人にはなじみがあると話す。「これを怖い女の子とは考えておらず、同情を覚える。貞子は日本の怪談の幽霊で、罪もないのに殺され、復讐するためにこの世に来る。残念ながら、恨んでいる相手を見つけることはできずに、人間すべてに復讐をしてしまう。また貞子は物の怪で、たたりたくなくても、たたらざるを得ない。小さな少女を皆が苦しめるのだから、仕返しをするための悪い力を貯えずにはいられない」

 

霊を落ち着かせるために

 カバチンスカヤ氏は今回の貞子展について、霊を落ち着かせる試みだと説明する。貞子には現実世界にモデルがいる。霊能者の高橋貞子だ。ある公の場でその能力を発揮することができず、見ている人の信頼を失い、火山口に投身する。展示会では高橋貞子の着物、風呂敷、装飾品も展示されていた。

 これで貞子の霊を落ち着かせ、この世で人を驚かせるようなことがなくなれば、と主催側は考えている。カバチンスカヤ氏によると、多くの日本人が映画「リング」のような運命になるかもしれないという恐怖心から、映画を見ることを警戒しているという。

 ロシアでも昔、そのように信じられていた。曽祖父や曽祖母は、「チョルト(悪魔、畜生)」という言葉をはくと、地獄の悪魔が近寄ってくると言って、警戒していた。

 

日本とロシアの恐怖

 今回の展示会は「露日友好会」の折り紙クラブ「折形」のメンバー数人によって実行された。他のメンバーは怖がって参加しなかったという。メンバーは自分たちの名前を掲載しないよう、厳しく注意してきた。何かが起こってはいけないと。

 貞子の展示会で霊を落ち着かせることはできたのだろうか。7日後にそれは判明する。展示会では、山村貞子の電話帳に誰でも自分の電話番号を書くことができた。その電話は貞子からかもしれない。