日本刀をモスクワで鍛錬

2014年「日露武道交流年」の一環として、モスクワでフェスティバル「侍の魂・日本刀古式鍛錬実演」(15~18日)が行われ、日本から訪れた刀工が特別に設けられた鍛刀場で、日本刀づくりを披露した。鍛錬後に粘土や汚れが除去された刀身は、仕上げおよび象嵌のためにロシア側に引き渡された。実演プロジェクトの責任者で刀工の嶋田伸夫さんに、日本刀およびその鍛錬の特徴やロシアでの人気についてインタビューした。

―今実演中の日本刀について教えてください。

 これは刃を下側に向けて短刀とともに帯に差す太刀になります。ロシアの地に祈りをささげながら鍛錬されています。

 

日本刀の長所は?

 日本刀の製作は砂鉄から始まります。炉に砂鉄と木炭を入れて3日間火を焚き続けると、鉧ができます。ヨーロッパの剣の製作は鉱石から始まるそうですから、第一段階から技術の違いがあり、鋼の化学成分も異なってくるというわけです。

 日本刀の研磨工程も独特で、石の加工と比較することができます。石工は未加工の石を見て、その美しさを完全に引き出すためにどうすべきかを最初に把握します。日本刀の研磨も同様で、素材を見た時に、いかにして刀身の自然の美しさを表に引き出すかを理解します。研磨師の作業は極めて重要です。

 ヨーロッパではまだ、日本ほどの水準に達していない気がします。日本人はあらゆることで完璧を目指しながら、細かいところまで注意を払ってきました。このおかげで、現在も日本刀を楽しむことができます。研磨によって日本刀は芸術品のレベルまで高まりました。研磨には多くの時間がかかります。

 戦争は作業の迅速性を求めるため、鑑賞用というより殺傷用の武器が増え、研磨や美が重視されなくなりました。それでも日本には美しさを求める部分も残っており、そこが日本刀の特徴とも言えます。

 

―現在も残っている伝統は?

 日本刀には3つの機能があります。単なる殺傷の武器にとどまりません。第二次世界大戦後に武器の部分は低下したので、今日までしっかりと残っているのは2つの部分です。

 まず、これは芸術作品です。博物館に行って日本刀を見ると、その美しさに感嘆し、リラックスします。また、これは独自のお守りです。日本の土地、国、宗教を守るものです。そのため日本刀は男児が誕生した時などの優れた贈り物となります。日本刀は代々受け継がれ、子孫を不幸や侵略から守ります。

 

―刀工の仕事の工程を教えてください。

 日本刀を最初から最後まで自分でつくるという人は日本にいません。研磨師なら研磨しかしませんし、選んだ工程で完璧を目指します。柄巻師なら柄巻だけで、他の工程には携わりません。鉧から鍛刀する鍛冶師も同様です。

 ロシアでは状況が異なり、誰もが全工程に携わるようです。日本では自分の仕事を一生学ぶべきだと考えられています。一工程覚えたからといって、その道の職人になったとは言えません。一生かけて一つのことを極めるのです。どのような狭い専門性においても、学ぶ範囲は広大です。

 日本では、すべてに手を出して、何でもできるという人はあまり評価されません。日本刀で柄巻も研磨も自分でやるということは、それらの工程を極めていないという意味です。そのような人は日本であまり尊敬されません。

 

―ロシアでも日本刀が人気ですが。

 ロシア領域内や日本でつくられた偽物の日本刀が、ロシアでは最近まで大人気でした。コピーではなく、本物を知ってもらえるよう、この傾向を変えたいです。

 たくさんのロシア人が私に鑑定を依頼してきます。日本刀を買った人が、それほどの価値があったのかと尋ねてきたこともありました。現代につくられた日本刀であれば、それなりの値打ちはあるものの、純粋な刀代となります。だまされているケースですと、例えば、500年前の有名な刀匠の名前が彫刻されている刀があります。このような日本刀の値打ちはゼロです。日本刀のことをよく知っている人は、単なるコピー品には1円も払いません。