フィーリン氏「日本の魅力は人」

植田正也氏とセルゲイ・フィーリン氏=スタニスラーブ・ザレーソフ撮影

植田正也氏とセルゲイ・フィーリン氏=スタニスラーブ・ザレーソフ撮影

第2回日本・ロシアフォーラム(モスクワ、9月8~10日)の一環として、文化の多様性および日本とロシアの文化的なつながりをテーマとした円卓会議が行われた。

すでにロシアの文化コードの一部 

 円卓会議の議長を務めた作家のパーヴェル・バシンスキー氏は、ロシアから遠く離れていると感じる日本、そしてエキゾチックに見える日本文化だが、すでにロシアの文化コードの一部になっていると話した。「ロシア人女性の誰もが着物とは何かを知っているし、我々は皆寿司を食べているし、空手や柔道をやっている人も多いし、知識人にとって芥川と黒沢という姓はなじみ深い」

 日本の植田正也氏は、「日本とロシアの文化関係が経済関係に劣らない」ことの必要性を強調。文化関係を血管を流れる血液と比較して、協力がなければ生命力なしと述べた。

 モスクワのボリショイ劇場の舞台に立ち続け、現在もロシアに暮らすバレエ・ダンサー岩田守弘氏は、両国の文化の近さを体現してきた。現在はブリヤート共和国の首都ウランウデのバレエ団で芸術監督を務めている。岩田氏によると、バレエは倫理、道徳を具現化し、国民を一つにするものだという。自身を「ボリショイ劇場の卒業生」と呼びながら、ロシアの先生への感謝の気持ちを述べた。数年前にメドベージェフ大統領(当時)から友好勲章を授与されたが、岩田氏はこれを個人への授与ではなく、「日本への授与」だと考えている。

 アニメ制作会社「手塚プロダクション」の松谷孝征社長は、岩田氏に続いて演説を行った。日本の漫画とアニメの歴史について熱く語り、鉄腕アトムの話をしながら、主題歌を大きな声でうたった。漫画は長きにわたり、限界芸術と考えられてきたが、現在は日本だけでなく、世界でも認められたという。松谷社長によると、漫画を最初につくった人は高等教育を受けた教養のある人ばかりで、ロシアの古典文学などにインスピレーションを受けていた。チャイコフスキーやプロコフィエフなどのロシアのクラシック音楽は、現在でもアニメの中で奏でられている。

 続いて、東京おもちゃ美術館の多田千尋館長が話を行った。ディムコヴォ人形などのロシアのおもちゃへの愛を語りながら、マトリョーシカの人気が衰えてきていることを残念だと述べた。ロシア人参加者には、駒を回し、会場の床に沖縄のヘビを放ちながら、日本のおもちゃを紹介した。「おもちゃは交流」だという。日本人は子どもの頃から妙技を学ぶため(日本の駒をまわすのはそれほど簡単ではない)、経済で大成功しているのだという。

 着物デザイナーの大久保玄才氏は続いて、着物をつくる時に何からインスピレーションを得るかを話した。「美しい絵画、風景画を思い浮かべながら、布にその印象を描いていく」。ロシアの風景画からもインスピレーションを受けているという。

 

文化交流の拡大と深化 

 次にロシア側が話をした。ボリショイ劇場のセルゲイ・フィーリン芸術監督は、日本人についての印象を長く、美しく描写した。「日本でもっとも素晴らしいものは経済でもなく、高層ビルでもなく、また自然でもなく、人である」。日本人には思いやりがあり、敏感で、高潔で、ロシア人を魅了するという。「日本に行ってしばらくすると、そこが我々の故郷になる」。すでに20回ほど公演で日本を訪問している。

 ボリショイ劇場広報部のエカチェリーナ・ノヴィコワ部長は、ロシア・バレエと日本の関係について話した。ロシアのバレリーナ、アンナ・パヴロワは1922年、日本ツアーを行い、バレエ・ファンを獲得した。日本人のそのバレエ愛は現在でも続いている。

 バレエは日本で受け入れられている唯一のロシア文化ではない。文化交流は続き、毎年たくさんのイベントが行われている。これについては、エルミタージュ美術館のウラジーミル・マトヴェエフ展示会部副部長と(日本各地で1964年からエルミタージュ美術展が40回以上行われている)、サハリン州文化省のイリーナ・ゴニュコワ大臣も話した(サハリンは地理的にも歴史的にも日本に近く、日本関連のフェスティバルがひんぱんに開催され、劇団も日本から訪れている)。

 日本で愛されているロシア文化には、文学がある。ドストエフスキー研究者のリュドミラ・サラスキナ氏は、日本人読者との交流の経験について話した。「日本ほどドストエフスキーが読まれている国はない。日本のドストエフスキーのとらえ方は独特」。日本人がロシアの古典文学を深く解釈していることに驚かされたという。芥川龍之介は「日本のドストエフスキー」と呼ばれることもあるが、これは最高の質を意味する、この上ない称賛なのだという。

 ロシア側で最後に演説を行ったのは、SF作家のドミトリー・グルホフスキー氏。冒頭で述べられた内容に似たアイデアを示した。日本をどれほど遠く感じたとしても、ロシアの全世代が日本文化の影響を、三島由紀夫から村上春樹と村上龍まで、北野武から深作欣二までの偉大なる人物の影響を、受けている。日本とロシアの文化的なつながりは客観的な事実であり、今後も2つの深層文化の相互作用は必ず続いていくだろう。