チェブラーシカ公開に「待った」

写真提供:kinopoisk.ru

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ロシアのアニメ・スタジオ「ソユーズムリトフィルム」の要請によって、予定されていた中村誠監督の日本版「チェブラーシカ」のロシア公開が中止となった。

 スタジオ側は、ロシアでの公開が、ソ連版「チェブラーシカ」の排他的権利を侵害すると主張。一方で、日本の「テレビ東京ブロードバンド」株式会社からロシアでの公開権を得ている、ロシアの有限責任会社「チェブラーシカ」は、スタジオの主張を論拠薄弱と考えている。

 作家のエドゥアルド・ウスペンスキー氏は、スタジオ側の行動を批判。「権利侵害と言っている人たちは、自分たちで何もしていない。日本人は立派な集団を集め、優れた映画を制作した」

 ウラジーミル・メディンスキー文化相は、すでにウスペンスキー氏に連絡をとり、自ら状況を管理下に置くと約束。「現在、文化省の法律家が調べており、法的に微妙なところを整理しようとしている」と文化省は伝えた。

 「ソユーズムリトフィルム」のアンドレイ・ドブルノフ社長は5月19日、チェブラーシカ社に4月24日に与えられた公開承認を取りさげるよう求める書簡を、メディンスキー文化相に送付した。

 ドブルノフ社長によると、この日本の劇場版に、「ワニのゲーナ」(1969)、「チェブラーシカ」(1971)、「シャパクリャク」(1974)、「チェブラーシカ学校へ行く」(1983)など、「スタジオでつくられたアニメが広く使われている」ことが原因だという。テレビ東京ブロードバンド社は、2005年のライセンス契約にもとづき、ソユーズムリトフィルムから、これらの映画の権利を入手した。だがその条件によると、入手された権利は旧ソ連圏では無効だという。ドブルノフ社長はこの条件から、ロシアでの公開にはソユーズムリトフィルム(ソ連のコレクションの権利を現在保有)の合意が必要との結論に達した。合意は得られていない。

 チェブラーシカ社はこれを否定し、日本版が「新しい脚本にもとづいて(『チェブラーシカとサーカス』、『チェブラーシカ動物園に行く』、『シャパクリャクの相談所』)、新しい監督のもと、新しいスタジオでつくられている」と強調している。

 ウスペンスキー氏は、古い映画の利用に対するいかなる支払いも求めておらず、自分のキャラクターを使用して新しい映画を制作することを許可したという。「キャラクターの役柄、性格、対話、行動の権利は私が保有し、肖像権はチェブラーシカを描いたさまざまな芸術家が保有している。その中にはソユーズムリトフィルムの芸術・演出家のレオニド・シュワルツマンもいる。どちらの局面も制作者との契約で調整されていた」と「イズベスチャ」紙に語った。

 チェブラーシカ社の弁護士は、公開承認の撤回手順に違反があったと主張する。「2012年7月20日づけ文化省令第787号『行政規則の承認について』によると、公開承認を受けるためには、権利保有者との契約を提示するだけで十分であり、『特段の証明のない限り、権利保有者としてこれらの書類に記される者はそのように認識される』。ソユーズムリトフィルムが権利を侵害されたと考えたのであれば、それは裁判所で証明されていなければならない」

 書簡の一文を読む限り、誤解が生じていると推測できる。テレビ東京ブロードバンドが映画を作成する際、ウスペンスキー氏とロマン・カチャノフ監督が共同で執筆した「ワニのゲーナ」の脚本を使用したが、契約は一方の執筆者としか行われていないと、ドブルノフ社長は言っている。この結果、日本側がソユーズムリトフィルム、またカチャノフ監督(1993年没)の脚本の権利を保有するロシア連邦映画基金との合意を得られるまで、ロシアでの公開は不可能になった。

 実際に、日本版のプロローグは「ワニのゲーナ」のリメイクだ。中村監督は「動きと雰囲気をとらえ、カチャノフ監督のアニメの原則を理解するために」詳細に人形を復元し、一コマごとに撮影したと、ロシアのアニメ批評家であるマリヤ・テレシチェンコ氏は説明する。テレシチェンコ氏は昨年11月、モスクワで行われた第7回アニメ大祭のプログラム責任者を務め、日本版を公開した。

 だがロシアで6月5日に公開予定だった日本版には、プロローグは含まれていなかった。ソユーズムリトフィルムはそれを知らなかったのではないか。

 日本版アニメの予算はユーロに換算して500万。2010年に完成していたが、ロシアに到達するまでには時間がかかった。

 

元記事(露語)

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