書を求めナウカへ

ヴァレーリイ・メルニコフ撮影/ロシア通信

ヴァレーリイ・メルニコフ撮影/ロシア通信

 私は東京に行く度に、神保町の書店街の一角、「ナウカ」店にかけこむ。ナウカとはロシア語で「学術、科学」という意味だ。

 真ん中の棚には聖書、ボリス・アクーニンの新書、分厚い「コミンテルン史」が並び、定期刊行物コーナーにはモスクワの最新の新聞や雑誌が置かれている。

 「なぜモスクワから来たロシア人が、ロシアの書籍を販売している東京の店にわざわざ行くのか」と不思議に思うだろう。

 それは、ロシアよりもナウカの書籍の方が値段は高いが、この店の店員が客のために重要な仕事をしてくれているからだ。

 ロシアの出版社が出版する多くの本の中から、一番面白い本を選んでいるのだ。日本研究のコーナーはロシア最高の専門店でさえ及ばない。

 ある時は、ロシアで全く販売されていない本をナウカで買えた。日本に暮らしたロシア人哲学者、アレクサンドル・ワンノフスキーの生涯の研究書である。

 ナウカのさらにすごいところは、書籍だけでなく、人文科学分野の日露関係史に関する問題について、プロの助言を受けられることだ。店員はこの分野の真の専門家である。

 この源はかなり前にさかのぼる。ロシア文学とロシア語の需要の高まりに最初に対応したのは有名なジャーナリストでソ連・ロシア専門家の大竹博吉。1920年代のソ連で働き、31年に書籍販売会社ナウカを開業した。

 経営難で2006年に閉店したが、翌年に現在の書籍販売会社ナウカ・ジャパンが神保町の同じ場所で開業した。

 主な顧客は大学、言語サークル、研究所などでロシア語を学ぶ日本人と、日本が第二の故郷の数千人のロシア人。

 この店には優れた日本語の教材と辞書もそろっている。子供を日本語とロシア語のバイリンガルに育てたい親にとって、児童向けのロシア語教材は貴重だ。

 ロシア芸術関連の書籍を探す日本人の愛好家は確実に存在しているし、ソチ五輪などでロシアに関心を持った新しい参入者もいる。多くの日本人はいまだによく分からない国ロシアについて知ろうとしている。

 ナウカの訪問者が現在、特に関心を持っているものは何か。また関心が消えているものは何か。村上直隆店長に聞いてみた。

 「ドストエフスキー、トルストイ、チェーホフ、ブルガーコフの作品は常に人気がある。現代ロシアの文学作品はアクーニンやマリーニナなどがよく知られ、 ウリツカヤも売れる。近年、あまり売れなくなったのは、辞書類。インターネットで間に合わす人が増えているからかも。最近は音楽CDや映画DVDを探しにくる人も多い」

 ナウカで販売されている本はネットで購入することも可能だが、やはり神保町で買うのは何とも言えない喜びである。ロシア語愛好家のクラブの雰囲気があるのだから。愛読家ならわかるに違いない。