ロシア男の装い

ダンディズムがあらわれたのはソ連時代の1950年代=タス通信撮影

ダンディズムがあらわれたのはソ連時代の1950年代=タス通信撮影

ロシア男はきっと謎めいている。ソ連時代のコートに身を包んだスパイや制服姿のクレムリン連隊から、1990年代のレザージャケットを着たギャングや金のアクセサリーをつけた黒いワイシャツ姿のマフィアまで、独特なファッションと近寄りがたい雰囲気の印象が強い。またロシア男は夏でも冬でもシープスキンのコートを着て、ウォッカを飲み、バラライカを奏でながらノスタルジーにひたっている、なんてコミカルで不思議なイメージもある。

最近のドレス・ダウン傾向 

 実際にはさまざまな男性がいる。行動が異なるように、服装も異なる。それでも多くのロシア人男性はスポーツウェアやカジュアルウェアを好む。ある市場調査によると、昨年ロシアで販売された紳士服の半分以上を、このスポーツウェアとカジュアルウェアが占めていたんだとか。そしてそれは納得できる。最近はドレス・ダウンの傾向が見られ、オフィスではネクタイなしのYシャツ姿やジャケットの代わりのセーター姿を見ることもしばしば。フォーマルな装いを好む人でも、ジーンズで出社して、会社に留め置きしているスーツに着替えるなんて人もいる。

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ワルのファッション

 スポーティーないでたちを変えないカテゴリーの男性も存在する。そのほとんどが35歳以下の男性で、スウェットパンツ、ティンバーランドのブーツ、クロップド・ダウンというスタイルを、大学の授業やデートから仲間との遊びや買い物まで、どんな時でも貫いている。

 今日の大都市の通りでは、アディダスのトラックスーツ、トルコのジーンズ、レザー・キャップ、コート、デザイナー・レザー・シューズ、男性用パースという、1990年代風の男性をほとんど見ない。靴下とサンダルというスタイルの男性も少なくなったし(以前は国民的な流行だった)、外側のパッチポケットや内側のスリップポケットのたくさんついたカーゴベストを買う男性も少なくなった。

 

おしゃれではないが… 

今日の大都市の通りでは、トルコのジーンズ、コート、デザイナー・レザー・シューズ、男性用パースという、1990年代風の男性をほとんど見ない=ロシア通信撮影

 それでもロシア人男性の多くは、おしゃれとは言いがたい。本物のロシア男は外見なんて気にしないというのが、昔からの伝統だからというのもある。プーシキンは「まじめな人で、おのれの爪の美しさを、気にする者もいるだろう」と書いていたが、いまだに多くのロシア人男性がこれに賛同できないようだ。ここで触れておかなければならないのは、この意識的な無頓着はだらしなさではないということ。愛着のある古いセーターは洗いたてで清潔、ダサくて履き心地の良いズボンはしっかりとアイロンがけされ、ロシアの冬を乗り越えてきたブーツは新品同様にみがかれている。

 それでも小さく、勢いのある、しゃれ男のカテゴリーも存在している。ダンディズムがあらわれたのはソ連時代の1950年代。若者がアメリカン・スタイルなどの西側の要素を生活に持ち込んでいる、と言われていたものだ。この西側化愛好者は、目立ちたがり屋の「スチリャーガ」と皮肉的に呼ばれていた。スチリャーガたちは鮮やかな色のシャツ、セモリナのブーツ(ブーツ工房では実際にセモリナ粉が使われていた)、スキニーなパンツ、見せるカラーソックスといういでたちで街を闊歩。マスメディアはしばしば冷笑し、のらくら者だと批判した。多くのスチリャーガは確かに滑稽だったが、それはセンスがないからではなく、これが反抗的精神からきているものだったからだ。当時のような格好のスチリャーガは今はいないが、独特なファッション、ジャズ、クリエイティブな仕事を好む若者は残っている。

ロシアの若者がミニマリストなデザインを好み=タス通信撮影

 ロシアのヒップスターについては、ミニマリストなデザインを好み、高品質でおしゃれなカジュアル・シューズをはき、アクセサリーを愛し、大きめなスカーフを巻き、奇抜な角縁のメガネをかけ、ボウタイをしている。

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