『トルストイと生きる』

刊行:2013年11月

藤沼貴 著

春風社

 本書は、一昨年急逝したロシア文学者、藤沼貴のトルストイ論をほぼすべて執筆順にまとめたものだ。氏は『戦争と平和』等の翻訳と研究で知られ、ロシアでも高く評価されていた。その長年の研究は、評伝『トルストイの生涯』と最晩年の大著『トルストイ』におおよそ網羅されているが、初出の論文にはまた別の魅力がある。とりわけ卒業論文、修士論文、「トルストイ―その個性―」の最初の三作は、文学研究というものの原点を鮮やかに見せてくれる。若き藤沼氏と巨人トルストイの個性と個性がぶつかりあい、氏の心が揺れ動き、自分を掴んでいくさまが眼前に見えるようだ。C.G.ユングの用語を借りれば、この論文集がそのまま、トルストイのみならず藤沼貴の「個性化の道」を開示する。(佐藤雄亮・モスクワ大学講師)

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